6月13日 インシュリン分泌刺激剤GLPが、パーキンソン病の進行を遅らせる(Nature Medicineオンライン版掲載論文)
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6月13日 インシュリン分泌刺激剤GLPが、パーキンソン病の進行を遅らせる(Nature Medicineオンライン版掲載論文)

2018年6月13日
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最近、神経変性疾患を誘導する一つのメカニズムとして、刺激されたミクログリアが神経端末にあるアストロサイトをA1と呼ばれる活性型に転換し、その結果神経が障害されるというプロセスの重要性が指摘されるようになっている。即ち、一種の脳内炎症が、神経変性を促進しているとする考えだ。この考えが魅力的なのは、なんとか炎症を抑えることで、神経変性を遅らせることができる可能性が出てくる点だ。

今日紹介する米国ジョンズ・ホプキンス大学からの論文は、この炎症サイクルを膵臓β細胞のインシュリン分泌を促進させるGLP1受容体への刺激が抑えることができることを示した研究でNature Medicineオンライン版に掲載された。タイトルは「Block of A1 astrocyte conversion by microglia is neuroprotective in models of Parkinson`s disease(ミクログリアによるA1アストロサイトへの転換を阻害することでパーキンソン病モデルで神経を変性から守ることができる)」だ。

この研究は、GLP1受容体(GLP1R)の刺激がアルツハイマー病やパーキンソン病で、神経を変性から守るというこれまでの報告を前提に行われている。この考えを確認するため、まずドーパミン神経の細胞死を誘導できるαシヌクレインを線条体に投与して1ヶ月後から、脳内に移行し長期間働き続けるポリエチレングリコール化したGLP1RアゴニストNLY01を投与しその効果を調べると、NLY101投与により脳内でのシヌクレンの蓄積が抑えられ、ドーパミン神経の変性が抑えられ、マウスの運動障害も改善できることが確認された。

また、急速にシヌクレンが蓄積して1年で死亡するパーキンソンモデル・トランスジェニックマウスにも投与実験を行い、NLY101では治癒にはいたらないが、死亡を5ヶ月程度延長できることを示している。用いられたモデルマウスがどこまで人間のパーキンソン病に近いかどうかは確認が必要だが、この結果を見ると、GLP1Rアゴニストがパーキンソン病の進行を抑える治療法になると希望が持てる。治験の登録サイトClinical Trial Govを検索すると、GLP1RアゴニストのExenatideの第1相試験が始まっており、今後このNLY101も加わって、効果が示されることを期待してしまう。

この研究はこれで終わりではなく、なぜNLY101が神経細胞死を抑えることができるのかについて解析を続けている。多くの実験が行われているが、長い話を短くすると次のようにまとめられるだろう。

1) αシヌクレンはミクログリアを刺激し、さまざまな炎症分子を誘導する。
2) ミクログリアから分泌される炎症分子によりアストロサイトがA1アストロサイトに転換する。
3) この転換により、神経細胞死が誘導される。
4) GLP1Rは脳内のほとんどの細胞で発現しているが、シヌクレンで刺激されたミクログリアでの発現が最も高い。
5) シヌクレンによるミクログリア活性化をNLY101が抑制する。その結果A1アストロサイトへの転換が抑制され、神経細胞死が防がれる。
細胞レベルのメカニズムとしては十分納得できる。残念ながら、なぜGLP1R刺激がミクログリアの活性化を抑えるかについては明らかになっていないが、この点も明らかになるとさらに新しい治療標的も見つかるかもしれない。シヌクレンによるパーキンソン病モデルは、おそらく人間にも拡大できると思う。現在の治験が次のステージへと進むことを祈る。
カテゴリ:論文ウォッチ

6月12日:肺の内分泌システムが喘息を悪化させる(6月8日号Science掲載論文)

2018年6月12日
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喘息の一義的な原因はもちろんアレルゲンに対する免疫反応で、マクロファージなどの抗原提示細胞、 Th2型のT 細胞、B細胞などの相互作用を通して起こるIgE産生、そしてこTh2細胞から分泌されるIL5を介して起こる好酸球の遊走などが病態の主役だと考えられている。ただ、雷によりその時だけ誘発される喘息が報告されるように、免疫系だけでは説明のつかない喘息も多く、神経系や間質細胞などが喘息の様々なステージに関わると考えられている。

今日紹介するカリフォルニア大学サンディエゴ校からの論文は、肺上皮細胞の中に少数含まれている、様々なホルモンを分泌する神経内分泌細胞が喘息を悪化させている事を示した研究で6月8日号のScienceに掲載された。タイトルは「Pulmonary neuroendocrine cells amplify allergic asthma response(肺内に存在する神経内分泌細胞はアレルギー性喘息反応を増幅する)だ。

おそらくこの研究は肺の神経内分泌細胞(PNEC)の機能を調べることが主目的だったと思う。事実、PNECの機能についてはよくわかっていないことが多かった。そこで、PNEC分化に必要なAscl1分子を肺の臓器形成特異的にノックアウトし、PNECの存在しないマウスを作る事を試み、成功した。これまでPNECは出産時息をして肺を膨らませる過程に必要と考えられており、著者らも出生時に様々な異常が見られると期待したと思うが、PNECが欠損してもマウスは正常に生まれ、組織学的にもほとんど正常マウスと違いが見られなかった。

様々な実験系で何か異常が出ないか調べたのだと想像するが、最終的に見つかったのが、アレルゲンに対する喘息を誘発したとき、普通なら粘液を分泌するゴブレット細胞が増殖するのに、PNECが欠損するとこの反応が強く抑えられることを見出した。なんとか違いを見つけることができれば、あとは喘息のどの段階でPNECが働いているのか、粛々と調べていけばいい。

この研究ではもっぱら感作が成立し、喘息発作が起こるときの肺の組織変化に注目して研究が進められている。結果、喘息時に見られるTh2細胞の浸潤、それによるIL5分泌、そしてそれに誘導される好酸球の浸潤の全てが抑えられていることを発見する。これらはTh2による2型の免疫反応と呼ばれており、上皮由来のIL25,33, TSLPが関わるとされてきたが、PNEC欠損でもこれらの分泌には異常なく、この2型免疫反応の低下は、PNEC由来のペプチドやGABAの低下によると考えざるを得ない。そこで、PNECと2型免疫反応の接点を探した結果、ILC2と呼ばれる自然免疫に関わるリンパ球がPNECの近くに存在し、CGRPを介して刺激され、IL33やIL5の分泌を誘導することを明らかにしている。次にPNECのGABA産生を特異的にノックアウトする実験を行い、GABAは主にゴブレット細胞の増殖に関わることを示している。逆に、PNEC欠損マウスでも、GABAとCGRPを気管内に投与すると、Th2型の反応が正常に戻ることも示している。

最後に喘息患者さんの組織を調べて、喘息ではCGRPを分泌するタイプのPNECの数が増加していることを示し、マウスで見られた現象はヒトでも起こっていると結論している。色々苦労して、喘息が免疫系の細胞だけでなく、肺に存在する多数の細胞が関与する病気であることを示した研究で、今後の病態解析や治療法開発に重要な発見だと思う。ステロイドとβ2ブロッカー合剤スプレーのおかげで、喘息のコントロールは、私が医者をしていた頃と比べると格段に向上している。しかし、いまだにステロイドホルモンが何をしているのか完全に説明できていないことを考えると、この研究は新しい方向性に繋がるのではと期待している。
カテゴリ:論文ウォッチ

6月11日 サルからヒトへの進化に関わる遺伝子(5月31日号Cell掲載論文)

2018年6月11日
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類人猿、古代人類、現代人類のゲノム解析が進んだおかげで、ヒト特異的遺伝子の探索が加速している。最初の論文は2015年ドレスデン・マックスプランク研究所から発表されたARHGAP11B 遺伝子で、神経前駆細胞の分化を抑制して、増殖を高める。その結果、皮質の大きさが変化し、マウスに導入すると脳にシワができるという面白い研究だった(http://aasj.jp/news/watch/3151)。 

今日紹介する新しいヒト特異的遺伝子はその複雑性で、サルからヒトへのスイッチだけでなく、人間の脳構造を考える上でもおもしろい可能性を秘めている気がする。アムステルダム大学と、カリフォルニア大学サンタクルズ校から発表された論文で、5月31日号のCellに掲載された。タイトルは「Human specific NOTCH2NL genes affect Notch signaling and cortical neurogenesis (ヒト特異的NOTCH2NL遺伝子はNotchシグナルに影響して皮質の神経発生を変化させる)」だ。

ゲノム研究に慣れていないと読みにくいと思うが、一般の人にも知ってもらいたい面白い発見なので、かなり内容を簡素化して紹介することにする。

この研究では、脳の発生異常や、統合失調症、自閉症などと関わる染色体領域1q21.1に着目している。この領域の遺伝子が脳発生に関わることは明らかなのに、この領域の変異と病気とがこれまでうまく結びついていなかった。その原因が、これまでのゲノム解析が不正確だっためと考え、新しくアップデートされたこの領域の解析結果から、これまで全く見落とされてきたNOTCH2NLを選び出し、研究を始めている。

名前の通りNOTCH2NLはNotch2に由来する新しい遺伝子で、1q21領域に全部で3種類の遺伝子重複で発生した遺伝子が並んでいることを明らかにする。この配列のため、現在でもNOTCH2NLAとNOTCH2NLB遺伝子の間で組み換えが起こり、様ざまな分子が生まれる構造が出来上がっている。すなわち、遺伝子としては同じでも、免疫グロブリンのようにさまざまな遺伝子ができてしまう。事実、ヒトES細胞でゲノムと発現を調べると、同じヒト由来の細胞であるのに、NOTCH2NLの様々なタイプが混在している。遺伝子構成は複雑だが、この複雑さがポテンシャルを示唆する。しかも、NOTCH2NLA/Bのコピー数は厳密に決められており、少しでも外れると選択されることから、重要なセットだと分かる。

面白いのはここからで、進化を調べるとこの遺伝子がオラウータンとゴリラが分離するとき、Notch2から重複して、PDE4DIP遺伝子と結合した偽遺伝子として生まれる。その後400万年前、Notch2とNOTCH2NL間の組み換えが起こり、偽遺伝子から機能的NOTCH2NLがヒトで発生し、その後2回の遺伝子重複でNOTCH2NLBとNOTCH2NLCが生まれることで、組み替えによる遺伝子変異が起こりやすい遺伝子座が出来上がったというシナリオになる。

あとは、この分子の様々な形がヒトでどう働いているかの検証だが、これについてはもっぱらES細胞から誘導される脳のオルガノイドを用いて研究している。まず正常の発現だが、さまざまな脳細胞で発現しているが、最も発現が高いのが前駆細胞Radial Glia Cell (RGC)で、脳の発生に最も重要な細胞だ。

この分子を強制発現させると前駆細胞の分化が遅れ、その分細胞の増殖回数が増える。逆に、この遺伝子を除いたES細胞では分化に関わる遺伝子の発現が上昇する。以上のことから、分化を遅らせるのがこの分子の機能と結論している。実際、同じ機能はNotch2に存在する。このことから、NOTCH2NLはNotch2の機能を促進する働きがあると考えられるが、そのことをレポーターシステムで証明している。

面白いのは、遺伝子組み換えで生まれる様々なタイプのNOTCH2NLそれぞれに、Notch2を補助する機能の活性が異なることで、これにより脳の微妙な多様性が生まれるのではと思ってしまう。

最後に1q21欠失、重複の患者さんについて配列を詳しく調べ、欠失、重複が、NOTCH2NLA/Bの間での組み替えにより起こっていることを明らかにしている。

読んでみて、これは始まったばかりで、今後もっと面白いことが出てきそうな予感がする研究だ。おそらくiPSは大活躍するだろう。また、他の動物への導入実験も行われると思う。人間の脳皮質の拡大をどれほど説明できるのか楽しみだが、ちょっと気になるのがNotchは他にも多くの幹細胞システムで重要な役割を演じている点で、NOTCH2NLが本当に脳で止まるのか、そこについて何も語られていないのはちょっと解せない。
カテゴリ:論文ウォッチ

6月10日:出産日を血液で診断する(6月8日号Science掲載論文)

2018年6月10日
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妊婦さんにとって、出産予定日と、早産リスクの判定は最も重要な情報だ。ウェッブにはこれを計算するツールが数多く提供されているが、基本的には最終生理や排卵日から計算する方法で、特に妊婦さんの状態に合わせて決めるわけではない。

我が国ではほとんどの妊婦さんが超音波診断を受け、胎児の一種の座高を測定し、予定日が計算されるが、これはかなり正確だと言っていい。ただ、早産リスクになると、胎児の大きさとは異なるさまざまなファクターが関与するため、内診や経腟超音波検査など、さまざまな検査を合わせて調べられる。検査自体は安全だが、妊婦さんの精神的負担は大きいと思う。

ところが今日紹介する論文を読んで、出産予定日や早産リスクを血液検査だけから診断しようとする試みがあることを初めて知った。既に異なるマーカーを用いる方法が開発されているらしいが、今日紹介するスタンフォード大学にFacebookのザッカーバーグ夫妻が寄付した講座からの論文は、血中に流れる胎児組織由来RNAを用いて診断する方法の開発を目指した研究だ。タイトルは「Noninvasive blood tests for fetal development predict gestationa age and preterm delivery(胎児の発生を調べる非侵襲的血液検査により胎児の週令と早産リスクを予測する)」だ。

研究では、母親の血中に、胎盤、胎児肝臓、免疫系各組織から流れ出てきた42種類のRNAの量を、毎週出産まで測定し、胎児の成長と最も相関するRNAを選び出している。ほとんどのRNAは胎児成長と概ね相関していたが、最も信頼が置けるRNAは全て胎盤由来で、最終的に9種類のRNAを出産予定日の算定のために選んでいる。まず二十一人の妊婦さんについてデータを集め、それをもとに予測のためのモデルを作り、このモデルの予測精度を超音波による予測と比べている。

予想されたことだが、超音波と比べると予測から大きく外れる妊婦さんの数は多い。しかし、誤差が前後1週間で予測された例でみると、ともに半数程度で超音波診断に匹敵するところまで来ており、他の方法と比べるとまずまずというところだと思う。おそらくもっと多くのデータをもとに推計モデルを作れば、さらに精度が上がると思われる。

出産予定日を予測するのも重要だが、妊婦さんにとってもっと重要なのが早産リスクを予測することで、この研究もこれを主目的としている。これは、成長に伴う正常出産日を予測することとは質的に異なる。この研究では、まず早産研究に関するコホート研究に参加した妊婦さんで、実際早産してしまった8人、満期で出産した7人の血液中に流れているRNAの配列を調べ、両者で差のある38種類のRNAを特定している。 この中で最も差が大きかった7種類のRNAをマーカーにして、子宮が早期に収縮するなどの早産リスクが高いお母さんについて、実際に早産を予測できるか調べ、なんと80%の予測率があることを明らかにしている。

組織から血中に流れる核酸を用いて、ガンの大きさをモニターしたり、あるいは胎児の遺伝子診断を行う試みが続いているが、当然胎児の成長状況や早産リスクを調べるかなり信頼できる方法になる事は、言われてみれば納得する。ここでは比較的単純な推計学モデルを用いているが、インプットとアウトプットは明確に定義できるので、今後AIを用いたもっと診断率が高い方法に発展すること間違いない。
カテゴリ:論文ウォッチ

6月9日:紫外線に当たると記憶力が上がる?(=風が吹けば桶屋が儲かる?)(6月14日号Cell掲載論文)

2018年6月9日
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私もそうだったが、論文を書くときなんとか一つのシナリオに仕上げようという気持ちになると思う。ただ、無理にこの気持ちを追求しすぎると、誰が見ても、データとシナリオのこじつけが強い論文が出来てしまう。わかりやすくいうと、風が吹けば桶屋が儲かるという話になる。

今日紹介する中国合肥にあるNational Laboratory for Physical Sciences at the Microscaleというこれも訳すのが難しい名前の研究所からの論文を読んだときも、シナリオに向かって一直線という印象を強く持った。一方、中国の研究のレベルの高さについてもよくわかる論文だった。6月14日号のCellに掲載され、タイトルは「Moderate UV exposure enhances learning and memory by promoting a novel glutamate biosynthetic pathway in the brain(適度な紫外線照射は脳の新しいグルタミン酸合成経路を促進して学習と記憶を高める)」だ。

まず「紫外線照射が学習と記憶を高める」というタイトルを見れば誰でも驚いてしまう。「なになに」と読み始めると、このグループは記憶の研究より、パッチクランプで活動を記録した一個の神経細胞内成分を質量分析する大掛かりな研究を進めていることがわかる。ただ、いくら高い感度になったとはいえ、一個の細胞の成分分析はまだまだハードルが高いと想像する。その中で、このグループはこれまで脳内で検出されたことがないウロカニン酸(UCA)が海馬の神経細胞で高いレベルで検出できることに注目した。

UCAはヒスチジンから合成されるアミノ酸代謝物で、なんと1967年前に紫外線照射により合成が上がることが知られていた。そこで、脳内のUCAと紫外線照射の関連を調べ、UCAが脳内で合成されるのではなく、紫外線照射を受けた皮膚で合成され、これが脳内に脳血管関門を超えて入ってくることを示している。これも炭素13をラベルした詳しい実験で、代謝研究がきちっと行われているのがわかる。

前半の話はここまでで、次は脳細胞に入ったUCAの運命を調べ、肝臓と同じで、UCAが脳細胞の中でも中間体を経てグルタミン酸へと代謝されることを示している。はっきり言って、グルタミン酸というゴールがあって、これを得意の単一細胞の質量分析や、代謝研究で確認している。結果、UV照射を受けると、海馬のグルタミン酸合成が高まるという話が成立する。

ここまでくると、グルタミン酸が増えて、海馬のシナプス活性が高まり、記憶が良くなるというシナリオが見えてくる。これを光遺伝学的にCA3ニューロンを刺激し、CA1ニューロンでの興奮が上がるかという系で確かめ、UV照射で海馬のシナプス伝達性が高まることを確認している。

そして最後のゴールとして、2種類の記憶テストを行い、紫外線照射によりいずれのテストも結果が高まることを示している。まさに紫外線に当たると記憶力が高まる、風が吹けば桶屋が儲かるという話を読んだ気になる論文だ。なんとなく、本当かなと思ってしまうが、もしレフリーでまわってきたら、結局はアクセプトせざるを得ないしっかりした仕事だと思う。
カテゴリ:論文ウォッチ

6月8日:末期ガンは手を尽くせば治すことができるようになるか?(Nature Medicineオンライン版掲載論文)

2018年6月8日
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個人のガンを対象にしたプレシジョンメディシンも、ガンのゲノム検査が可能になった時代の興奮は覚め、現在は反省期に入っている。すなわち、さまざまな標的薬は間違いなくガンを抑える効果があっても、最初からガンの方があまりに多様で、薬剤耐性のガンが新たに進出するという、まさにダーウィンが予測した通りの話が癌の完全制圧を阻んでいる。ただ、ゲノム解読の精度を上げて、最初からガンの多様性を想定した治療も考えられるだろう。私自身は、プレシジョンメディシンに対してまだまだオプティミスティックだ。

これと並行して、プレシジョンメディシンの新しい方向性が、ガン特異的免疫反応を高める方法で、いわば自然に成立した免疫力を高めるオプジーボなどに対して、ガン特異的抗原を見つけ個人用ワクチンを作る、あるいはガン特異的キラーT細胞を取り出して注射するなどの新しい方法が開発されて、成果を上げだしてきている。このブログでも2015年4月にScienceに掲載されたメラノーマの個人用ワクチンの成功例を紹介してから(http://aasj.jp/news/watch/3176)、すくなくとも10回以上はこのラインの研究を紹介してきた。 今日紹介する米国NIHからの論文も結局は同じ話しなのだが、それでも紹介する価値がある研究だと思った。Nature Medicineオンライン版に掲載され、タイトルは「Immune recognition of somatic mutations leading to complete durable regression in metastatic breast cancer(ガンの突然変異に対する免疫反応により転移性乳ガンを完全かつ長期に退縮させられる)」だ。

この研究もこれまでなら末期と診断された乳がんの患者さんの治療についての症例報告だ。患者さんは乳がんの根治手術の後10年後に再発し、現存の治療方法ではガンが全く制御できなくなったケースで、実際乳がんで亡くなる患者さんの多くはこのタイプだ。

著者らのこれまでの研究で、ガン組織に浸潤しているT細胞には多くのガンに対するT細胞が存在することがわかっている(TIL)。これにもとづき、組織片から試験管内で大量のTILを調整する方法を開発している。治療は、免疫抑制剤を前もって投与したあと、患者さんに80億個のTILを投与、その後IL-2を注射するプロトコルで行われた。多くの実験が行われており、もっと複雑な方法で細胞を調整したのではと思ったが、治療としてはこれだけだ。すなわち、どの施設でもやる気になれば可能な方法だ。その結果、1年目には腫瘍が完全に消失し、現在2年目をすぎて再発がないという驚くべき効果だ。

おそらく、あまりの効果に保存していたTILや末梢血のT細胞について徹底的な調査を行ったのだと思う。その結果、ガンと周辺の組織をそのまま培養して調整したTILの実に23%が、この方の腫瘍のゲノム解析から特定出来た2種類の腫瘍特異的抗原を認識し、この細胞は移植後6週間目でも患者さんの末梢血に存在することを明らかにしている。

さらに、治療後17ヶ月目に、特定出来た3種類の抗原に対して11種類のT細胞が体内に存在し高いレベルで維持されている事も明らかにしている。

ある意味で、単純な一例報告だが、いくつか注目できる点がある。一つは、もともと突然変異の少ない乳ガンでも免疫反応が起こっていることを示せたことだ。実際エクソーム解析から60種類程度のアミノ酸が変わる変異が見つかっており、この数は肺ガンやメラノーマと比べても圧倒的に低い。従って、エクソーム解析によるネオ抗原の特定と反応性を丹念に調べれば、乳ガンに対しても免疫療法が可能な患者さんを見つけることができる。

もう一つは末梢血でなく、TILを集めることの重要性だ。組織片さえ手術で手にはいれば、TILを調整してその後に治療に備えておくことができる。今後、この方法で転移性乳ガンの何割が直せるのか、大規模な研究が必要だ。

最後に、がんの治療を行なっている間に、抗原と反応するT細胞側の特定もできることだ。個人用ワクチンは言うに及ばず、これにより、ガンに対する受容体を用いた遺伝子治療も可能になる。

ただこのような研究は希望ではあっても、安心ではない。それでも医学ができる事を手を尽くして行い、一人でも根治の患者さんを増やしていくことを、医学は地道に進める必要がある。
カテゴリ:論文ウォッチ

6月7日:アストロサイトの興奮が記憶を増強する(6月28日号Cell掲載論文)

2018年6月7日
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誤解を恐れず単純化して考えると、組織は機能を担う細胞、新陳代謝に必要な血管、機能細胞を支える間質細胞、そしてマクロファージを中心とする血液系の細胞から出来ていると言っていいだろう。ただ、脳には間質の中心となる細胞、線維芽細胞が存在しないため、神経から分化してきたアストロサイトがこれに当たる。ただ線維芽細胞と違って、神経と同じ前駆細胞由来である点がアストロサイトの特長で、ある意味で間質でありながら神経と同じような機能を持つことが出来ると理解してきた。

今日紹介するエルサレム大学からの論文はアストロサイトを興奮させるだけでシナプス結合を変化させ記憶が高まることを示した研究で6月28日号のCellに掲載される。タイトルは、「Astrocytic activation generates de novo neuronal potentiation and memory enhancement(アストロサイトの活性化が神経細胞の新たな増強と記憶促進を誘導する)」だ。

これまでも、アストロサイトが神経のシナプス維持や剪定に重要な役割を果たしていることは知られているが、その興奮が直接シナプス結合を変化させているのか、あるいは線維芽細胞と同じ様なストローマ細胞として2次的に作用しているだけなのかよく分かっていなかった。この研究では、アストロサイトだけを興奮させた時の記憶への影響を調べるため、海馬のアストロサイトだけを、好きなときにリガンドを注射して興奮させられる(Caが上昇するメタボトロピック受容体導入)マウスを作成している。

まず本当に導入した受容体でアストロサイトだけ特異的に活性化できるのか、様々な実験をおこなった後、マウスの脳を切り出したスライス培養を用いて、アストロサイトを興奮させるだけで、神経の興奮が、回数、大きさ共に高まることを発見している。そしてこの変化が、CA3からCA1への神経が結合するシナプスの結合が高まることによることを明らかにしている。

このような試験管内実験の後、いよいよ生きたマウスでアストロサイトの興奮が記憶を増強するのかどうか、記憶実験の定番と言える迷路を覚える実験系と、条件づけによる文脈記憶の実験系で調べている。

結果は期待通りで、記憶成立過程でアストロサイトを刺激すると記憶が高まる。また、同じ実験で電気ショックを加えてマウスの立ちすくみを誘導する条件づけを行う時、アストロサイトを刺激すると、1日立った後でも同じ場所で立ちすくむ確率が高まる。以上のような実験から、アストロサイトの興奮が記憶誘導とそれに続く記憶の固定化過程に関わると結論している。不思議なことに、CA1ニューロン自体を繰り返し興奮させると、記憶には逆効果になる。

アストロサイトを活性化してから文脈記憶を誘導し、海馬の神経細胞の刺激状態をFos 染色で調べると、電気ショックで記憶を誘導する操作とアストロサイトを活性化する操作を組み合わせた時だけFosの発現(神経が刺激されたことの指標)が神経細胞で上昇していることが確認された。すなわち、記憶過程が進行している神経細胞でだけに、アストロサイトの興奮が作用する。逆に、記憶誘導刺激がない状態では、アストロサイトの興奮は何の役にもたたない。以上のことから、この記憶増強は、まず神経活動があって、活動している神経回路だけのシナプスを、アストロサイトが増強するというシナリオが提案されている。最後に、この結果が比較的長期に続く化学的刺激のせいであることを否定するために、光でアストロサイトを興奮させる実験も行い、記憶形成過程に短期間アストロサイトを興奮させるだけで記憶が増強することを明らかにしている。

話はこれだけで、脳科学に馴染みがないと、なぜ面白いのか不思議だと思うが、これまで議論が続いてきた、アストロサイトの興奮が活動している神経のシナプスにだけに働いて伝達性を変化させることが証明されたことで、今後細胞レベルの記憶研究がもう少し変わるような気がする。この研究では、アストロサイトの刺激スィッチは人間が入れているが、脳では何がその刺激になるのかも含め、今後研究が進むと思う。
カテゴリ:論文ウォッチ

6月6日 統合失調症発症に関わる主役の細胞(5月21日号Nature Genetics掲載論文)

2018年6月6日
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一人の人間には多くの情報が集まっている。ゲノムは言うに及ばず、エピゲノム、神経ネットワーク、そして言語、文字、さらにはバーチャルメディア等、様々な媒体により記録された情報が集まっている。勿論生命進化の過程で開発された情報媒体は他にもあると思うが、記録として残せる媒体はそう多くない。そして重要なことは、異なる媒体に記録されていても、内容は同じ事もある(例えば飢えの経験がエピゲノム、脳ネットワーク、言語により記録されること)。そしてこれは一人の個人に集まることで初めて統合される。

最近講義する機会があれば、21世紀の生命科学の重要な課題は、一つの個体に表現された、様々な媒体により担われた情報同士を統合する方法の開発だと教えている。この考えでいくと、発生学ではゲノムとエピゲノムの統合することが課題になる。幸いエピゲノムはDNA媒体と密着しており、ゲノムの解読なしにエピゲノムの解読がありえない関係だ。このおかげで、私達が現役の頃には考えられなかった新しい発生学が現在急速に展開している。ところが、神経ネットを媒体とする情報は、ゲノムからの距離は遠く、ゲノムとの相関を考えることは簡単ではなく、今も様々な試行錯誤がおこなわれている。

すこし前置きが長くなったが、今日紹介するカロリンスカ研究所からの論文は、ゲノム解析の結果急速にリストが拡大した統合失調症関連遺伝子を、統合失調症の細胞機能と関連づけられるか細胞レベルで統合を試みた研究で5月21日号のNature Geneticsに掲載された。タイトルは「Genetic identification of brain cell types underlying schizophrenia(統合失調症の背景にある脳細胞を遺伝学的に特定する)」だ。

研究のストラテジーはシンプルだ。脳のさまざまな場所から得られた単一細胞の発現遺伝子データを、ゲノム解析から得られた統合失調症と相関する遺伝子と比べ、統合失調症に関わる遺伝子が濃縮している細胞を探している。すると驚くことに、濃縮が見られた細胞は24種類の脳細胞のうちたった4種類、しかも成人の細胞に限られていた。即ち、海馬CA1の錐体細胞、線条体のスパイニー神経、新皮質体性感覚野の酔態神経、そして皮質の介在神経の4種類だ。

この結果が投合失調症に特異的であることを示すため、他の疾患、例えばうつ病のSNPとも比べ、うつ病ではGABA作動性神経をはじめとするちがった細胞に濃縮されることを示している。また、すでに蓄積されているパブリックなデータセットを用いて、同じ結果が得られるかも調べ、今回の結果を他のデータベースの結果からも導けることを明らかにしてている。

最後に、それぞれ4種類の細胞が同じような統合失調症に関連する遺伝子を発現しているのか、異なる種類の統合失調症と関連する遺伝子を発現しているのかも検証し、かなりの遺伝子がそれぞれの細胞特異的に発現している事も確認している。

単一細胞の遺伝子発現を調べることが可能になり初めて実現した研究だが、なんとかゲノム研究の結果を、統合失調症に関わる遺伝子の発現が高い細胞として、細胞レベルに落とし込んだ事は重要だ。今後iPSを用いて各細胞を誘導することが可能になると考えると、今回の結果を機能的に調べることも可能になる。実際、統合失調症の患者さんから生きた細胞を誘導できたとしても、それぞれで発現する分子の多型がどの様に統合失調症を引き起こすのかを理解するにはまだまだ先は長い。それでも大きな進展だと思う。
カテゴリ:論文ウォッチ

6月5日:記憶のいい高齢者の秘密(Frontiers in Aging Neuroscience5月号掲載論文)

2018年6月5日
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先日70歳になったが、確かに老化を感じる。なかでも記憶力の減退には悩まされる。最も大きな問題は、人の名前が覚えられないことで、記憶力減退のせいで、多くの人に不快な思いをさせているのではないかと心配している。そんな私の琴線に触れる論文がたまたま目に留まった。フロリダ大学からの論文で、オープンアクセスのFrontiers in Aging Neuroscience5月号に掲載された。タイトルは「Associations of MAP2K3 Gene Variants With Superior Memory in SuperAgers (優れた記憶力を持つスーパー高齢者はMAP2K3変異と関連している)」だ。

早速期待を持って読んで見た。研究はシンプルだ。80歳以上の高齢者を集め、RAVLTと呼ばれる方法で経験した出来事についての記憶(=エピソード記憶)を評価し、50ー65歳までの中年の平均値に匹敵するスコアを示す人たちをスーパー高齢者として56人選び出している。この方達からDNAを提供してもらい、タンパク質へ翻訳される全遺伝子の配列(=エクソーム)を解読している。一方、対照群としては、全ゲノム解析がすんでいるいる高齢者を追跡しているコホート研究データベースから、年相応に記憶が低下した高齢者22人を抽出し、両者を比べてエピソード記憶が高いレベルで維持されているスーパー高齢者に特異的な遺伝子変異がないか調べている。

翻訳される遺伝子レベルに絞ったところがミソだが、一塩基多型(SNP)は約15万種類程度検出できるが、その中でスーパー高齢者と明確に関連が認められるのは3種類だけで (頻度の低い多型は除いている)、しかもこれらのSNPは全て細胞内のシグナル分子MAP2K3をコードする遺伝子上にマップされた。

データはこれだけだが、スーパー高齢者と一般高齢者の差の全てがMAP2K3に集中したことは少し驚く結果だ。確かに対象の数が少ない気がするので、この結果を確認するためにもっと大規模な調査が必要だと思う。しかし、3種類のSNPとも、一般高齢者では6割程度存在するタイプが、スーパー高齢者では3種類とも2割以下で、差ははっきりしている。ゲノム解析をエクソームに絞ったことが、このような明快な結果に繋がったのかもしれない。

もう一つ驚くのが、MAP2K3がほとんどの細胞で発現し、さまざまなシグナルに関わっている分子である点だ。もしSNPのタイプが活性化型なら、ガンの危険性すら考えられる。従って、80歳まで健やかに生きてこられたということは、活性化型の多型ではなく、機能が低下するタイプの多型だと推察される。いずれにせよ、この現象を理解するためには、これら3種類のSNPがMAP2K3の分子の機能にどう関わるかを知る必要がある。現段階では想像でしかないと思うが、著者らはミクログリア細胞内でこのSNPが分子機能を低下させることで、脳での炎症が起きにくくなっているのではないかと想像している。おそらくこれを確かめる実験自体はそれほど困難でないと思うので、ぜひ調べて欲しいと思う。他にも、この分子はストレスにも反応するし、ブドウ糖の代謝にも関わっている点も、脳の老化との接点があるように思う。これほど明確な相関が見られ、その原因がMAP2K3分子の機能低下だとすると、ひょっとするとこの正常型の分子を持っている人も、これを少し抑えることで、記憶の減退を止めることができるかもしれない。

とは言っても、本当はそう単純なはずがないと思うのは、もう一つの老化、僻み根性のせいかもしれない。
カテゴリ:論文ウォッチ

6月4日:隔離によるストレスのメカニズム(5月17日号Cell掲載論文)

2018年6月4日
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昨日紹介したシモンズ財団の自閉症研究助成のページには、助成金を受けた研究から生まれた論文リストが掲載されている。2018年はすでに88論文が掲載されており、分子生物学から臨床まで、様々な自閉症研究分野にわたっている。このサイトの論文を眺めておれば、米国の自閉症研究のトレンドは間違いなくつかめると思う。また、英語だが一部の論文については、一般にもわかりやすい解説が行われている。

今日はこのリストの中から、最も新しい論文をピックアップして紹介することにした。拾ってみると、カリフォルニア工科大学の神経科学の大御所Andersonの研究室からの論文で、個体が隔離したストレスによる攻撃性についての研究で5月17日号のCellに掲載されている。タイトルは「The Neuropeptide Tac2 controls a distributed brain state induced by chronic social isolation stress(Tac2神経ペプチドは慢性的隔離によるストレスにより誘導される様々な状態を調節している)」だ。

すでに著者らはショウジョウバエを用いた研究で、社会から隔離されるストレスによるハエの攻撃行動にタキキニンと呼ばれる神経ペプチドが関与していることを報告しており、この研究はショウジョウバエで見られたこの現象がマウスまで保存されているのかを調べた研究と言える。

他のマウスと一緒に飼育していたマウスを2週間、他の個体から隔離して飼育、このストレスで起こる行動変化を詳しく調べ、マウスではこのストレスが少なくとも6種類以上の行動変化につながることを明らかにしている。この研究で調べられたのは、ケージに入ってきたおとなしいマウスに対する攻撃性、未知の物体や音、電気ショックなどに対する過剰反応などで、それぞれの行動は脳の異なる領域でコントロールされていることがわかっている。

次に、この変化を誘導するのがショウジョウバエと同じタキキニン(Tac)によるかどうか、マウスのTac1,Tac2を遺伝的標識法を用いて調べている。結果は、Tac2のみが長期間の隔離によってさまざまな場所で新たに発現することが明らかになった。そこで、Tac2受容体機能を抑制する薬剤を投与して同じ実験を行うと、ほぼ全てのストレス反応を取り除くことができた。

この抑制剤がそれぞれの行動変化に関わる場所で局所的に効いているのか、あるいはより高いレベルで効いているのか調べる目的で、各領域に局所的に投与する実験を行い、それぞれの場所で個別にTac2がストレス反応を誘導していることが明らかになった。

あとは遺伝学的に、それぞれの場所でのTac2の作用を抑制したり、高めたりする実験を行い、Tac2の発現が上がるとストレスが高まるのと同じ効果があり、抑制するとストレス反応を抑えられることを示し、局所で完結するTac2産生がストレス反応の主役であることを示している。

他にも、この分野の深い知識に基づく流石と思われる様々な可能性の検討が行われているが、詳細は省く。しかし、研究には詳細な知識の裏ずけが必要であることがよくわかる論文なので、ぜひ若い人達には読んで欲しいと思う。さらに、図の示し方が門外漢でもよくわかるようにできている。

さて、この論文を読んで、犯罪者を懲罰的に独居房に隔離するすることがいかに問題が多いかよく分かった。マウスと人間が同じなら、独房は攻撃性を高めるだけになる。一方、これまでさまざまな精神的疾患に試されて効果がないと捨てられていたTac2阻害剤が、社会からの分離ストレスを軽減できるという発見も、臨床的には重要だ。大御所ならではの納得の論文だと思う。また、このような高いレベルの研究が集まってくるシモンズ財団の力にも感心する。
カテゴリ:論文ウォッチ