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6月2日 カビの一種メタリジウムを用いた蚊の撲滅(5月31日号Science掲載論文)

2019年6月2日

実は今年、チンパンジーやゴリラの見られるウガンダと、ルワンダ旅行を計画している。9月なので充分時間はあるのだが、一つ心配が出てきたのが黄熱病のワクチン接種だ。受けていないと入国が許されないようで、当然受けるつもりだが、新しいタイプのワクチンに変わったらしく、品不足でギリギリになるまで接種してもらえるかわからないらしく、少しイライラしている。このようにアフリカでは、蚊が媒介する様々な感染症が蔓延しており、病原菌に対するワクチンだけでなく、それを媒介する昆虫の撲滅も重要な課題になっている。

蚊が媒介する感染症に対する最初の対策は殺虫剤で、これは先進国も同じだが、多くの耐性昆虫が発生しており、殺虫剤の効果が失われるのと蚊が減るのがいたちごっこになっている。この問題にたいしては、より生物学的な方法で撲滅する方法、例えば繁殖性を失わせた同じ種の蚊を野生に放出して、野生の蚊も繁殖できないようにする方法などが試みられている。

今日紹介するメリーランド大学とブルキナファソの衛生研究所からの論文は、昆虫に取り付いて殺してしまうメタリジウムを用いる方法の開発だ。タイトルは「Transgenic Metarhizium rapidly kills mosquitoes in a malaria-endemic region of Burkina Faso(マラリアが蔓延しているブルキナファソ地域で蚊を急速に殺す遺伝子組み換えメタリジウムの開発)だ。

メタリジウムにとりつかれると、全身がカビに覆われたミイラのようになって蚊が死ぬことから、メタリジウムを蚊の撲滅に使う試みは以前から進んでいたようだ。しかし殺すまでに時間がかかり、野生の蚊を撲滅するには毒性が低かった。この研究ではカルシウムチャンネル阻害剤ヘキサトキシンとよばれる毒素を導入して、蚊を殺す能力を高めたメタリジウムを創出している。

この研究は、こうして設計した組み換えメタリジウムの活性を、ブルキナファソの野外に設けたネットで区切ったコンパートメント内に、殺虫剤耐性の蚊を一定数導入して、これらに組み換え型メタリジウムを感染させて、蚊や幼虫の数の変化を調べ、撲滅に効果があるかを調べている。

論文を読んで、なるほどともっとも感心したのが、用いられた感染方法で、地元産のごま油にメタリジウムを浮かべそれを蚊が止まりやすい黒い脱脂綿に染み込ませ、蚊が休む場所に置いて感染させている。この記述だけで、そのままハエ取り紙のような簡単な駆除のための製品が念頭にあるのがわかる。

結果は明確で、40日でメタリジウムのコンパートメントからはほとんど蚊が消える。もちろん何もしないと蚊の数は増える。また、組み換え隊でないメタリジウムを感染させても、何もしないよりはましだが、根絶はできていない。

他にも様々なクライテリアを用いて、効果を確かめているが、詳細は省く。ブルキナファソにとっては、マラリアの撲滅に一歩近づいたといえるだろう。特に、これまで遺伝子組み換え蚊を用いる方法と異なり、様々な種類の蚊に対応できるので、マラリアにとどまらず他の感染症にも利用可能な点が大きい。

他の昆虫に対する脅威などについては、胞子が風で拡散しないことや、紫外線に弱い点などを示して、安全性は高いと主張しているが、これを実際のフィールドでの確認するには少し時間がかかるかもしれない。

このような論文を読むと、現代の科学技術の多様性を改めて実感する。

カテゴリ:論文ウォッチ
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