8月15日:変わる蛍光抗体染色:見るから読むへ(8月9日号Cell掲載論文)
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8月15日:変わる蛍光抗体染色:見るから読むへ(8月9日号Cell掲載論文)

2018年8月15日
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7月31日、アイソトープ、酵素反応、蛍光などを標識した遺伝子プローブを用いて遺伝子発現を「見て」いたこれまでのin situ hybridization法を、バーコードでラベルしたプローブを用いて、発現遺伝子を「見る」代わりに、塩基配列を「読む」ことで検出するという、今年京都賞を受賞したDeisserothtたちが開発した画期的な論文を紹介した(http://aasj.jp/news/watch/8740)。

同じように塩基配列をバーコードとして用いる方法は、抗体による組織染色にも用いることができることを示したのが今日紹介するスタンフォード大学からの論文で8月9日号のCellに掲載された。タイトルは「Deep Profiling of Mouse Splenic Architecture with CODEX Multiplexed Imaging (CODEX多重イメージングによるマウス脾臓の構築の詳細な解析)」だ。

この研究を行ったのはCyTofと呼ばれる単一細胞の発現するタンパク質を、さまざまな金属イオンでラベルした抗体を用いて、フローサイトメトリーと連結させたTOFで検出するという離れ業を開発したGary Nolanらのグループだ。光遺伝学や新しいin situ hybridizationを開発したDeisserothもスタンフォード大学で、この大学にはHerzenbergによって開発されたFACSの伝統が今も息づいているのを感じる。

さて、タイトルにあるCODEXと呼ばれる方法だが、Co-detecting by indexing(インデックスを用いて同時に検出する)の略で、抗体を蛍光物質でラベルする代わりに、異なる塩基配列を持つ核酸で標識して、その核酸の配列をインデックスとして用いて組織上で読み取ることで、抗体が結合する分子の組織局在を調べる方法の開発だ。Deisserothと同じように、組織中でインデックスの配列を読みとる方法も用いることができるとは思うが、抗体染色の場合利用可能な抗体の種類も限られており、1000種類もの異なる分子を調べることはまずないことから、数十種類の異なる抗体を別々にインデックスするのに適した方法を新たに開発している。

具体的には5‘端が2、3、4、5merと異なる長さの一本鎖オーバーハングを持つDNAでそれぞれの抗体をラベル、2merづつオーバーハング末端を埋める(endfilling反応)時に蛍光標識核酸を取り込ませ、反応が終わったところで顕微鏡で写真をとる。写真撮影後蛍光分子だけを組織から切り離して洗い流した後、次に残った3mer(実際には最初の反応で一つ塩基が埋まってこのラウンドでは2merのオーバーハングになっている)を埋める時に、同じように蛍光分子を末端に取り込ませる。このサイクルを繰り返せば、一回に2色、うまくインデックスを設計すれば、原理的には幾つでも異なる抗体を用いた組織抗体染色ができるというわけだ。

蛍光物質を用いそれを顕微鏡で撮影する点では従来の螢光抗体法と同じだが、endfilling反応を行う各ラウンドで同じ蛍光物質を用いても、前のラウンドで使った蛍光標識は洗い流しているので、ラウンド毎の蛍光撮影結果を重ねていくことで、多重染色と同じ結果が得られる。「見る」のではなくインデックスを「読む」ことで、何十種類もの抗体による組織染色に成功している。ただ、シークエンス反応とは異なり、反応時間は短いため、30の異なる抗体による染色はだいたい3.5時間で終了する。逆に、時間をかければ、組織が反応の繰り返しに耐える限り、そして抗体が手に入る限り、ほぼ無限の種類のタンパク質を組織上で検出できることになる。

この方法の有効性を示すために、自己免疫反応が自然に起こるMRLマウスの脾臓での組織細胞構築の変化を30種類の抗体で追跡して、これまでの組織染色法では不可能だった様々な情報を一挙に得ることができることを示している。例えば、組織内で起こる細胞相互作用の動態(i-nichと呼んでいる)を単一細胞レベルで調べることができ、これまで調べることが難しかった、環境ニッチにより発現が変化しやすい細胞表面シグナル分子を特定するなど極めて詳細な解析が可能になっているが、詳細の紹介はいいだろう。この方法のポテンシャルがお分かりいただければ十分だ。

私が大学に入るより少し前に、蛍光抗体染色法がクーンズらにより開発されたが、それから半世紀を経て、今全く新しい方法に生まれ変わろうとしているのがよくわかる。現役を退いて5年になるが、生命科学分野の革新の速度に本当に圧倒される。
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8月14日 グリオブラストーマの起源を探る(Natureオンライン版掲載論文)

2018年8月14日
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グリオブラストーマは現在も完治の難しいガンの一つだ。最近のゲノム研究でグリオブラストーマに高い頻度で現れるさまざまな突然変異が特定されているが、このような変化が蓄積するガン発生前の過程については、今だによくわからない。グリオブラストーマと言うぐらいだから、当然アストロサイトなどのグリア細胞やその幹細胞由来と考えられるが、本当の由来すらわからないというのが現状だと思う。

今日紹介する韓国の先端科学技術研究所KAISTと延世大学医学部からの論文は、最初から脳室のすぐ下にある神経幹細胞のニッチ領域(SVZ:subventricular zone)の神経幹細胞が人間のグリオブラストーマの起源だと仮説を立て、患者さんの手術時に、がんと同時にSVZ細胞も集めて、遺伝子変異を比べた研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Human glioblastoma arises from subventricular zone cells with low-level driver mutations(人間のグリオブラストーマは低いレベルのドライバー変異を持った脳室下帯の細胞から発生する)」だ。

この研究は全て人間の患者さんの脳組織で行われており、その意味で最初からグリオブラストーマの起源をSVZと決めて研究を進めている。そのため、患者さんのグリオブラストーマ細胞と、そこから離れた場所のSVZ、及び全く正常部位の脳皮質あるいは、血液細胞の3種類の細胞の全ゲノムを同時に調べ、正常組織にない変異がすでにSVZ細胞に存在するかどうか調べるところから始めている。

驚くことに(あるいは期待通り)、ガンから遠く離れたところにあるSVZ細胞にも比較的多くの変異が見られる。また多くの患者さんでは、がん細胞で見られる変異がSVZ細胞でも存在する。このようなガンと共通の変異を持つ例を詳しく見ると、グリオブラストーマのドライバーとして最も有名なisocitrate dehydrogenase(IDH)に変異が存在しない場合のみSVZ細胞にも共通の変異が認められ、なんとその8割が、TERT(テロメア合成酵素)のプロモーターやガンのドライバー遺伝子自体の変異を持っている。このことから、IDH変異のないグリオブラストーマではまずTERTのプロモーターなどドライバー遺伝子が変異を起こし、その上でガン化に伴うガン特異的変異が積み重なることでグリオブラストーマが成立すると提案している。TERTプロモーター変異については、PCRで他の病気の脳組織についても調べているが、グリオブラストーマの患者さんのように高い例はなかった。

SVZ自体は幹細胞以外の様々な細胞からできているので、次にSVZからレーザーによる顕微解剖により細胞をとりだしTERTプロモーター変異を調べると、神経幹細胞が存在する層だけにガンと同じ変異を見つけられる事を示している。

ガンから離れたSVZのドライバー変異が既に存在していることは、グリオブラストーマの起源はガン発生場所のグリアではなく、他の場所の神経幹細胞から発生する可能性を示唆している。これを確かめるため、今度はマウスモデルで脳の一部の領域のSVZに存在する細胞だけにがん遺伝子を発現させ、ガンが発生するまでの経過を追いかける実験を行い、まずSVZの幹細胞で変異が起こり、その後増殖しまた移動する過程で他のがん遺伝子が変異を起こしてグリオブラストーマが発生することを、マウスで確認している。

結果をまとめると、グリオブラストーマも白血病や多くのガンと同じで、幹細胞の増殖がほんの少し高まるレベルの変異を基礎として、少し増殖能力が上昇した幹細胞に他の遺伝子変異が蓄積してできるという話で、特に目新しいというわけではない。しかし、人間でそれを確かめるための研究を計画して示した点が重要だ。しかし、幹細胞から変異が始まるとすると、ガンを制圧する困難を再認識させられる。
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8月13日:腸内細菌代謝を標的にした血栓予防薬(Nature Medicine掲載論文)

2018年8月13日
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私たちの身体の中で腸内細菌叢がもう一人の自分として、ポジティブ、ネガティブ両面の作用を発揮していることがわかってきたが、それぞれの作用についてのハッキリとした因果性が明らかにされ、明確な介入方法が構想できるケースはそう多くない。そんな一つの例が、腸内細菌叢の作用で血中の濃度が上昇するTrimethylamine N-Oxide(TMAO)による血小板の活性上昇、それに続く動脈硬化の誘導ではないだろうか。

今日紹介するクリーブランドクリニックからの論文は、腸内細菌叢によるTMAOの血中濃度上昇を抑える薬剤開発についての研究でNature Medicineオンライン版に掲載された。タイトルは「Development of a gut microbe–targeted nonlethal therapeutic to inhibit thrombosis potential (血栓の可能性を抑制する殺細菌性のない腸内細菌叢を標的にした治療法の開発)」だ。

TMAOの合成経路はよくわかっており、コリンやカルニチンなどを多く含む食事をとると、それを原料としてまず細菌によりtrimethylamine(TMA)が合成され、それが私たちの肝臓の中で酸化を受けてTAMAOに変換される。卵やレバーなどに多く含まれるコリンは私たちの体にとっては重要な栄養素だが、これが体に害を及ぼす分子へと細菌により変化させられるのは確かに悩ましい問題だ。そこで、細菌のTMA合成を阻害する化合物の探索が行われジメチル・ブタノール(DMB)が候補として発見されていた。

この研究ではマウスを用いて、DMBが本当にTMAO合成を抑制し、さらに血栓形成を抑えるかを調べ、確かに効果はあるが、血中のTMAO濃度の抑制、及び血栓の抑制効果は完全でないことがわかった。そこで、理論的にこの合成経路を抑制するために必要な条件を列挙し、これを満たす、細菌に対する毒性はないが、TMAO合成に関わるCut/D酵素を非可逆的に不活化し、しかも細菌の中に入って初めて作用を持つコリンアナログの開発に成功している。

この極めて論理的なコリンアナログの開発がこの研究のハイライトで、あとは開発した2つのアナログFMCとIMC の薬剤としての効果の検証をマウスを用いて行っている。

まず期待通り、FMC,IMC投与により、血中のTAMAOは完全に抑制される。そして、これらアナログは盲腸や大腸の細菌内に蓄積して長く維持される。これに対応して、大腸内のコリン濃度は上昇しており、バクテリアのコリン利用を抑制できていることがわかる。

次に高コリン食を取らせたマウスで起こる血栓形成を指標にその効果を調べると、血栓形成までの時間を大幅に抑制することができる。しかも、多くの抗血栓薬が持つ出血という副作用は全く見られない。他にも、動物実験で調べられる副作用は全く見当たらない。すなわち、血栓予防薬としては理想的だと結論している。

さらにこのアナログ自体は殺細菌効果はないが、それでも栄養を介して腸内細菌叢の変化を誘導し、これまで肥満やてんかんを抑える効果がある細菌として知られるAkkermansiaの割合を高める効果があることまで示している。

あとは、人間に対する効果を検証するだけだと思うが、これが成功すると、腸内細菌叢を標的にした治療薬としては最初の成功例になるのではないだろうか。慢性炎症とそれに伴う血栓の予防は、現在多くの研究室が取り組む創薬の重要テーマの一つなので、期待したい。
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8月12日:ホモ・サピエンスと他の人類との違いを考える(Nature Human Behaviour7月号掲載論文)

2018年8月12日
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肉食動物、草食動物と分けるように、人間のような雑食動物はそう多くない。勿論ヒトに近いゴリラ、チンパンジー、ボノボも雑食で、高たんぱく質の肉食が脳の発達を支えてきた。しかし我々現生人類ホモ・サピエンスを考えてみると、文化によって食べ物が大きく多様化し、というより食べ物の違いが文化の核となっている。とはいえ、特殊化した食の魅力は万国共通で、今や日本人もカタツムリを食し、外国人がフグを食べる。このような、何でも食べることと、食を極めることが両立しているのがホモ・サピエンスの特徴で、これが我々をネアンデルタール人や、デニソーワ人から分けたのではという問題提起がドイツ イエナのマックスプランク人類史研究所とミシガン大学考古学博物館の研究者から投げかけられた。タイトルは「Defining the ‘generalist specialist’ niche for Pleistocene Homo sapiens(ホモ・サピエンスのgeneralist-specialistニッチを定義する)」だ。

この研究者に限らず、生物に興味がある人ならなぜ我々ホモ・サピエンスが、ネアンデルタール人など他の人類を差し置いて地球の王者となったのか、その謎を解きたいと思っている。わたし自身は、シナイ半島で10万年もの間、現生人類とネアンデルタール人が互いの領域に踏み込むことなく生きていたのに、4.5万年前後に急にこのバランスが崩れ、現生人類がヨーロッパを制圧したのは、音を使った複雑な言語の誕生ではないかと思ってきた。さらに、この音を使う言語の獲得はどの人類にもチャンスがあったのに、偶然ホモ・サピエンスが先に獲得したのではないかと思っていた。

ところが、この論文の著者らは、ホモ・サピエンスだけがgeneralist-specialist、すなわち何にでもトライし(generalist)、それを極める(specialist)オープンな能力を持っていたことから、世界のあらゆる場所に棲息することができ、必然的に他の人類を凌駕したと提案している。

他の動物と比べたとき、すべての人類はある程度Generalist-Specialist(GS)といえ、その結果直立原人はすでにユーラシア全体に広がることができた。しかしその後に移動したネアンデルタール人やデニソーワ人の先祖がアフリカ脱出を果たしたのは50万年ごろだが、ネアンデルタール人はヨーロッパから西アジア以上に棲息範囲は広がらず、また正確にはわかっていないがデニソーワ人もアルタイを中心にした領域のみに棲息していたと考えられている。それに対し、ホモ・サピエンスで南ルートを通って拡大したグループは、なんと海を渡ってオーストラリアまで6万5千年前には到達している。さらに、4.5万年ほど前にシナイルートを通って北に分布したグループは、その後ベーリング海峡を渡り、南アメリカまで全世界に瞬く間に広がっている。

この背景には棲息地を求めて、あえて困難な場所を選びそれに適応するチャレンジ精神がホモ・サピエンスだけのあったというのがこの論文の主張だ。その証拠としてあげられているのが、数万年前からホモ・サピエンスが生存には厳しい環境を選んで生きていたことを示す遺跡で、それをまとめると次のようになる。

1) ホモ・サピエンスの出アフリカが最初に行われた南ルートには、人類一般の棲息場所としてのサバンナだけではなく、サウジの砂漠、そして熱帯雨林とともに、海が存在しており、これらを乗り越えるだけでなく、それぞれの環境で子孫を残しながら、5万年でオーストラリアにまで広がったのは、GS能力がないと不可能だ。
2) 全大陸で、ほとんど生存に適さない高地に適応した人類が生まれている。
3) 日本への進出を始め、海をこえた移住が行われている。
4) 高地も含め、極端な寒冷地に適応した民族が生まれている。

ナミブ砂漠、カラハリ砂漠、北極圏の遺跡など具体的例が挙げられているが、詳細は良いだろう。要するに、必要があったとはいえ、わざわざ生存に適しそうもない環境を選ぶチャレンジ能力は、決して最近の話ではなく、数万年前からホモ・サピエンスにだけ見られるという結論だ。食に限って、この人間のGS能力の対極にあるのが、笹しか食べないパンダやユーカリしかたべないコアラだろう。

確かに、面白い指摘だが、この可能性をどう証明していくのか、生きたネアンデルタール人がいない以上、このようなチャレンジ精神の背景にある脳回路を明らかにする事が必要になるだろう。ぜひそのような総合的考古学が我が国にも根ずくことを願っている。
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8月11日:皮膚アレルギーは虫垂炎を防ぐ?(JAMA Pediatrics オンライン版掲載論文)

2018年8月11日
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組織学的に見ると、盲腸はリンパ臓器と言っていい。もちろん、パイエル板をはじめとして腸管にはさまざまなリンパ組織が存在するが、盲腸にはハッキリとしたリンパ節の集合がいくつも固まって存在する。では体の免疫機能に必須かといえば、多くの虫垂炎の手術が行われているが、特に免疫機能が低下するといった証拠は見つからない。逆に人によっては、盲腸がそのまま残っている方が有害なことが多い事を示す研究が多い。例えば、少年期に虫垂炎にかかり、切除を受けた子供達は、クローン病など腸の炎症疾患の発症が、正常の子どもと比べると間違いなく低いことが知られている。

今日紹介するスウェーデン ルンドにあるスコーネ大学からの論文は、逆にアレルギーが虫垂炎を防ぐかを調べた研究でJAMA Pediatrics オンライン版に掲載された。タイトルは「Association of IgE-Mediated Allergy With Risk of Complicated Appendicitis in a Pediatric Population(IgEによるアレルギーは小児の虫垂炎のリスクと相関している)」だ。

この研究は605例の虫垂炎の手術による治療を受けた子供達が、抗原に対するIgE反応によるアレルギーを持っていたかどうかをカルテから調べただけの研究だが、結果は面白い。

虫垂炎手術を受けた子供をIgE型アレルギーを持っていた群(16.9%が)と、アレルギーのない群(83.1%)に分けることができるが、この中で腹膜炎を伴うような重症化した虫垂炎に発展したケースはアレルギー群で19.6%と、明らかにアレルギーのない群46.9%より低い。これに相応して、アレルギーがあると、虫垂炎にかかる年齢は高く、症状は軽く、虫垂結石を併発するが低い。

面白いことに、この虫垂炎を防いでいるように見えるアレルギーは、ダニ、花粉、動物の毛に対する、皮膚からの暴露によるアレルギーで、玉子やミルクのような食餌性のアレルギーとは相関がない。

結果は以上で、全て現象論だが、リンパ組織と思える虫垂炎が、皮膚から暴露されたアレルギーで抑えられ、食餌性の曝露によるアレルギーでは抑えられないのは何かありそうだと直感的に思う。研究自体は、ただカルテを見直したという調査研究だが、今後虫垂とは何かを考える上で面白いヒントになるように思う。是非皆さんも、このナゾナゾに対する自分の仮説を立てて見てほしい。
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8月10日:社会性をセロトニンで回復させる(Natureオンライン版掲載論文)

2018年8月10日
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我が国では自閉症の症状改善にオキシトシンが効かないか調べる臨床治験が盛んに行われ、報道によると多くの結果はポジティブなようだ。このオキシトシンは側座核(NAc)と呼ばれる脳の奥の方にある領域のセロトニン分泌神経に働いて作用すると考えられている。ただ、詳しい脳回路の研究は人間で行うわけには行かず、たかだかオキシトシン投与による脳イメージング検査の変化を症状の変化と対応させるしかない。従って、そのギャップをマウスモデルを使って埋める必要がある。

今日紹介するスタンフォード大学からの論文はマウスの脳を操作する光遺伝学を駆使してマウスの社会性とセロトニンの関係を調べた研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「5-HT release in nucleus accumbens rescues social deficits in mouse autism model(則座核でのセロトニン分泌はマウス自閉症モデルの社会性の欠如を回復させる)」だ。

この研究では自閉症の人で見られる16番染色体の一部の欠損に対応するマウスモデルを用いて、このマウスが示す社会性の欠乏を治す回路を明らかにすることが目的になっている。このタイプの自閉症では、社会活動時のNAcへセロトニン神経の端末を送っている縫線核(DR)のセロトニン活性が落ちていることが知られており、これを正常化することで社会性を回復させることがより具体的なこの研究の目標になる。

研究ではまず、NAcとDRをつなぐセロトニン神経回路が社会性を支配しているか調べている。方法は、DRのセロトニン神経に光で興奮させるチャンネルロドプシンを発現させ、この刺激によりセロトニンがNAcで分泌されると社会性が高まるかを調べている。例えば、DR領域に光を当てても、またNAcに来ているDRからのセロトニン神経端末に光を当てても、同じように社会性が高まることから、DRからNAcへ伸びるセロトニンニューロンであることが確認される。もちろん、光遺伝学的にこの神経結合を阻害する実験も行い、社会性が低下することを確認している。

次は16p11欠損を再現した自閉症モデルでこの回路を調べている。この研究では生まれてからこの領域を欠損させるモデルを用いているが、確かに社会性の低下が見られると同時にDRのセロトニン神経細胞の興奮が強く押さえられていることがわかる。そこで、この神経を光遺伝学的に刺激してセロトニンを分泌させた時に症状が改善するか調べ、期待通りNAcに来ているDRの端末を刺激してセロトニン分泌を誘導すると社会性が改善する。同じマウスで他の行動も調べているが、基本的には社会性特異的に回復が見られる。また、同じDRから他の領域に伸びているセロトニン神経を活性化しても、社会性の回復は見られず、この回路特異的に社会性が支配されていることがわかる。

次に、セロトニン分泌刺激が長期的回路形成に関わるかどうかも調べている。もちろん、セロトニン分泌の効果が長く続けば言うことはないが、残念ながら社会性の回復は、神経細胞が刺激されている時だけ見られる一過性のものだ。最後に、セロトニン受容体の刺激剤CP93129を投与してもこのマウスの社会性欠乏を治療できることを示している。

以上が結果で、個人的にはこのような研究がこれまで行われていなかったのかと意外な感じを持ったが、これまでの考えに沿った研究結果で、オキシトシンによる治療も十分期待できると思う。しかし、この研究はセロトニン分泌により、長期的な変化を誘導するのが難しいことを示しており、オキシトシンも常に必要とされるのかもしれない。

しかし、この研究では直接CRのセロトニン神経を刺激する実験が行われているため、その上位にある神経結合に治療可能性がないかを調べることも重要になる。最後に、この研究では16p11が確かにセロトニン神経の興奮低下であることを示しているが、実際の患者さんのように、最初からこの遺伝子異常を持っていた場合、脳回路に変化がないのかも確認する必要があると思う。いずれにせよ、これまで期待した通りの結果になり、ホッとする研究だった。
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8月9日:ポイツ・ジェガース病発症メカニウム:通説は覆る(7月27日号Science掲載論文)

2018年8月9日
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ポイツ・ジェガース症候群(PJ病)は、消化管に多くのポリープができる遺伝病で、過誤腫と考えられているように、良性の腫瘍だが現在のところ治療法は手術しかない。病因については、1998年セリンスレオニンキナーゼのひとつSTK11であることが明らかになり、腫瘍抑制遺伝子として働くこの分子の発現量が低下することで、上皮が異常増殖を起こすという説で納得していた。実際、同じ患者さんは他のガンの発生率も高く、この通説は20年近くあまり疑われることも無かった。

しかしなんでも確かめてみるもので、今日紹介するカナダ マクギル大学からの論文はPJ病がT細胞異常による炎症性に発症するポリープであることをマウスモデルで示した研究で7月27日号のScienceに掲載された。タイトルは「LKB1 deficiency in T cells promotes the development of gastrointestinal polyposis(T細胞でのLKB1 (STK11)欠乏は胃腸のポリープ形成を促進する)」だ。

PJ病についてはSTK11をノックアウトしたモデルマウスも作られていたが、おそらく病巣の炎症細胞の浸潤が強いことから、本当に上皮の増殖異常によるポリープかどうか調べようと思い立った。まず上皮や平滑筋特異的にSTK11をノックアウトしてみると、平滑筋でのノックアウトではポリープが低い確率で発生するが、上皮で欠乏してもポリープはみられない。そこで全血液細胞、及びT細胞、B細胞特異的にSTK11が欠乏するマウスを作成すると、全血液細胞、T細胞特異的欠乏で全例にポリープが形成された。すなわち、PJ病のポリープは上皮細胞の内因性の異常ではなく、T細胞の活性が変化して炎症が起こり、それにより刺激されることがわかった。

これがこの研究のハイライトで、あとはT細胞で何が起こっているのかを解析して、最終的には治療法の開発を目指すことになる。まず、T細胞側でSTK11の発現が半分に減少すると、IL11,IL6,IL17, TNFなど多くの炎症性サイトカインの発現が高まっている。同時に、間質の方でもこのような炎症性サイトカインへの反応性が高まっており、両方が合わさって強い増殖が起こることも明らかにしている。中でも、IL-6―STAT3経路と呼ばれるシグナルが最も重要な役割を果たしていることがわかるが、IL-6だけをノックアウトしてもポリープはできる事から、STAT3を活性化するさまざまなサイトカインの関与が考えられる。そこで、白血病治療に用いられているJAK2阻害剤を投与すると、T細胞の浸潤が消失し、ポリープの大きさが減少する事から、治療薬として用いることができる可能性がある。

かなり省略して紹介したが、要するにPJ病の中心には炎症性T細胞の関与があるという話で、これをコントロールすることで、手術以外の治療も開発できる可能性がある。ただ、ではT細胞だけかと言うとそうではなさそうだ。もしそうなら、T細胞移植を行う実験が行われるはずで、おそらくT細胞活性化だけでは病気にならず、間質や上皮の状態も重要な要因になっているような印象を受ける。JAK2服用が現実的かどうかは別として、他にも治療法が出てくるような気がした。
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8月8日 試験管内でのアルツハイマー病の再現(Nature Neuroscience7月号掲載論文)

2018年8月8日
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アルツハイマー病を試験管内で再現することがどのぐらい真剣に考えられていきたのかあまり気にしたことはなかったが、アミロイドの分泌や重合などの実験系は別として、さすがこの病気だけは試験官内での再現は難しいと思う方が普通だろう。病気の成立には時間がかかるし、単純な神経編成というより、多くの細胞が複雑に絡む上に、神経炎症の関与まで示唆されている。しかし、本当に試験管内で再現できればその効果は計り知れない。ひょっとしたら、この病気への挑戦をあきらめ始めた多くの会社が、もう一度再挑戦するきっかけになるかも知れない。

今日紹介するノースカロライナ大学からの論文はニューロンとグリアが相互作用を行う3次元脳組織を作ることでアルツハイマー病の試験管内再現に挑戦した研究でNature Neuroscience7月号に掲載された。タイトルは「A 3D human triculture system modeling neurodegeneration and neuroinflammation in Alzheimer’s disease(3種類の細胞を3次元に構築した実験系によりアルツハイマー病の神経変性と神経炎症をモデル化する)」だ。

読んでみると、アルツハイマー病再現に必須のアミロイド沈着は2次元の神経細胞培養では、アミロイドタンパク質が培地中に逃げてしまって再現できないという問題があり、これをニューロン、アストロサイト、ミクログリアを集めて3次元組織を作れば再現が可能という至極まっとうな発想だ。ただこの為に特殊な培養シャーレを開発している。この系ではまず多能性の神経幹細胞を培養して、神経細胞とアストロサイトに自然に立体構造を作らせる。この3次元構造に中央のチェンバーから飛び出した傾きのある細いチャンネルを通してミクログリア細胞を自力で移動させ供給することで、活性化されたミクログリアだけが3次元構造に集まるようにしている。実際には、このような特殊なシャーレを用いる必要があるかどうかはわからないが、活性化されたミクログリアだけが集まるようにするには、このシャーレは必須の条件だと著者らは考えている。そして、この3者さえ集まれば基本的なアルツハイマーの病態が再現できるというのが、この論文のメッセージになる。

実際には遺伝的アルツハイマー病の原因になることがわかっている突然変異型βアミロイドを発現させた神経幹細胞を培養して、ニューロンとアストロサイトからなる3次元構造を構築させ、そこにチャンネルを通して活性化ミクログリアが分布する事で、Aβアミロイド分泌が高まり、しかも明確な組織炎症状態から神経細胞編成までミミックできる脳の3次元構造を再現できることを示している。

こうして構築した実験系では、ニューロンとアストロサイトの相互作用、そしてミクログリアの反応を必要ならビデオで追跡することが可能で、βアミロイドの凝集、タウタンパク質のリン酸化による凝集、炎症性サイトカインの分泌による神経炎症過程など、アルツハイマー病の成立に必要な素過程が全て再現され、変性神経細胞のミクログリアによる処理まで再現できることを示している。また変異アミロイド遺伝子導入神経幹細胞だけでなく、アルツハイマー病の神経細胞から樹立したiPS細胞を用いても同じような実験系を作ることが可能であることも示している。

結果は以上で、このような方法は広く使われて初めて意味があるが、この系は本当に役に立つのか、実際に実験を行なっているプロに聞かないとわからない。しかし最近この分野で相次いでいる治療薬開発からの撤退を聞く、と是非役に立ってほしいと願っている。
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8月7日:膵臓癌の意外な治療薬(Oncogeneオンライン版掲載論文)

2018年8月7日
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これまで何ども強調しているように、現在まですい臓がんの治療は限られており、外科手術で切除しきれないステージでは、薬剤の効果も長く続かず、予後は極めて悪い。なら免疫療法はと考えるが、他の癌と比べてチェックポイント治療が効果を示さないケースが多い。いつかこの問題も解決され、ステージの進んだすい臓がんの治療も可能になると確信しているが、今苦しんでいる患者さんに対しては、一つでも治療オプションを増やすしか方法がない。そんないくつかの可能性については、Youtubeで紹介しているので是非参考にして欲しい(https://www.youtube.com/watch?v=tOTvpFBfCc8&t=24s)。

今日紹介するロンドン大学からの論文は、まだマウスの話だが、ひょっとしたらすい臓がんの患者さんの延命に役立つかもしれない情報に思えたので紹介することにした。タイトルは「GPR55 signalling promotes proliferation of pancreatic cancer cells and tumour growth in mice, and its inhibition increases effects of gemcitabine (GPR55シグナルは膵臓癌の増殖とマウスでの腫瘍増殖を促進し、その阻害はジェムシタビンの効果を増強する。)で、Oncogeneのオンライン版に掲載された。

タイトルにあるGPR55はlysophosphatidylinositolの受容体だが、大麻成分であるカンナビノイドにも反応することがわかっている。なんとこの大麻成分に反応するGPR55が多くのガンに発現しており、最も悪性のすい臓がんでも25%がGPR55を発現している。この研究ではすい臓がん発がんモデルを用いて、GPR55をノックアウトしたマウスではすい臓がんの発生が1ヶ月とはいえ遅れることをまず確認している。さらに都合のいいことに、ステージが進むほどGPR55の発現が上昇し、ガンのGPR55への依存性が高くなる。

試験管内で増殖しているすい臓がん細胞を用いて、GPR55がどの過程に関わるか調べると、MAPキナーゼ経路のERKのリン酸化を介して細胞増殖に関わり、p53により誘導されたマイクロRNA、miR34b-3pによりGPR55のmRNAが分解されることで、細胞の増殖が抑えられる。逆に言うと、ガンでp53が喪失すると、GPR55発現が高まり、増殖が上昇することを示している。

最後に、ではこの受容体をGPR55の拮抗剤で、やはり大麻から抽出できる阻害剤カンナビディールで抑制するとガン細胞の増殖が抑えられるか検討し、期待通り試験管内での細胞周期を抑制し、また単独では抑制効果は強くないが、すい臓がん治療に最もよく用いられるジェムシタビンと併用することで、寿命を20日程度延長することが出来ることを示している。

結果は以上で簡単な論文だが、思いがけず大麻成分により抑制できるGPR55シグナルがp53の喪失により発現し、がんの増殖を助けており、この過程を標的にしたカンナビディオールをジェムシタビンを組み合わせることで、マウスの延命を図ることができるというシナリオだ。残念ながら根治を望める治療法ではないが、カンナビディオールは向精神性が低く、安全に使える薬剤の一つなので、もし延命効果があるなら使う価値はあると思う。早く人間での臨床治験を望みたい。
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8月6日:食事により概日リズムが変化する(8月9日号Cell掲載論文)

2018年8月6日
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進化過程で起こる環境による生物の自然選択は、生物側から見ると環境の同化といえると個人的には考えている。例えば亀の甲は、最初はともかく最終的にカメを外敵から守る構造として発達したと思うが、逆に生物が隠れていた洞穴を自己に同化したと考えても悪くない。この環境同化が最も典型的に現れるのが概日リズムで、地球の自転という環境を、生物自体が取り込んだと考えることが出来る。ただ、生物が常に環境を同化して進化するとすると、他の環境ルールを同化するとき常に概日リズムと調整しながら、新しい環境リズムを作らなければならない。当然生物にとって一番大事な食環境も例外でなく、概日リズムと深く関わるはずだ。

今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は、肥満につながる高脂肪食を取り続けた時、肝臓での概日リズムが大きくリプログラムされる事を示した研究で、8月9日号のCellに掲載された。タイトルは「Diet-Induced Circadian Enhancer Remodeling Synchronizes Opposing Hepatic Lipid Metabolic Processes (肥満食による概日周期エンハンサーのリモデリングが肝臓の対立する代謝プロセスを同調する)」だ。

この研究ではマウスに高脂肪食・高カロリー食(DIO)を摂取させ、肝臓での遺伝子発現の概日変化を、転写されたばかりのRNAを網羅的に調べるrun-on sequencing方で調べている。結果は驚くべきもので、正常食のマウスで概日リズムを刻む遺伝子が1722種類存在するが、DIOを摂取すると、なんとそのうちの278種類を除いてほとんどの遺伝子発現から概日性が消える。一方、DIO食マウスでは新しく1343種類の遺伝子が概日性を獲得している。しかも、新しく概日性を獲得した遺伝子の多くは、朝10時にピークを持ち、正常食の逆相になっている。しかも、新たに概日性が生まれる遺伝子の多くは脂肪代謝に関わる遺伝子が濃縮されている。さらに、これに合わせて確かに脂肪酸の合成が高まっている。

遺伝子発現の概日性は、遺伝子発現に関わるエンハンサーの活性が概日リズムを刻むことで生まれると考えられるので、活性化されたエンハンサー領域から低いレベルで転写されるエンハンサーRNA(eRNA)をエンハンサー活性を示す指標として、run-on sequencingを用いて調べ、なんと5000近いエンハンサー活性の概日性が失われ、3500近いエンハンサー活性が新たに概日性を獲得する大きな変化が起こっている。

次に活性化されるエンハンサー配列の共通性から、新しく概日リズムを刻む遺伝子を支配するマスター遺伝子を探索し、コレステロール代謝を調節するSREBPがDIOで概日性を獲得することで、多くの脂肪合成に関わる遺伝子の概日性が生まれることを明らかにしている。また、SERBPはもう一つの重要な脂肪代謝マスター遺伝子PPARの概日リズムを増幅して、その結果脂肪を燃やす酸化経路に関わる遺伝子群がやはり概日リズムを獲得する。

最後にこれらの概日リズムを考慮して、これまで高脂肪血症に使われたPPAR阻害剤はPPARのピークに投与するとその効果が高い事を示している。 昨日に続いて、ダイエットの論文を選んだが、食事に合わせて概日リズムがこれほど大きく再編成されることを知ると、体の適応力とともに、私たちが様々な環境因子を同化して進化したことを改めて実感する。次は、マスター遺伝子の概日性を再編するメカニズムについてもぜひ知りたい。
カテゴリ:論文ウォッチ
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