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FDAで稀少難病薬指定を受けたALS治療薬(候補化合物)

2014年11月6日
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FDAの「稀少病薬リスト (指定と承認)」( http://www.accessdata.fda.gov/scripts/opdlisting/oopd/ )で、ALS治療薬(候補化合物)について検索して、開発の現状をテーブルにしました。

141001_ALS稀少薬リスト(FDA基本情報)

本表に掲載したALS治療薬には、FDAでこれまでに稀少難病薬指定を受けた薬物(化合物)が全て含まれていますので、既に研究開発を中止した化合物や、製造承認を受け現在唯一のALS治療薬として販売中のriluzole (RILUTEK: Sanofi社)も入っています。

当ホームページの「稀少難病ナビ席」に「ALSの進行を心臓薬ジゴキシンで遅らせる」として10月30日に掲載したジゴキシンについては、

古くから狭心症や心房細動など心臓病薬として広く使われており、また子癇(しかん:周産期に妊婦または褥婦が異常な高血圧と共に痙攣または意識喪失、視野障害を起こした状態)の治療薬としてFDAの稀少難病薬の指定を受け臨床試験中ですが、ALS治療薬としては未指定です。

通常プロトコールができIND(治験届)後に稀少難病薬指定の申請がなされるようですので、ALS治療薬としてのジゴキシンの臨床研究は、投与量や投与方法による心臓への副作用回避対策ができてからになると思われます。                                (田中邦大)

11月6日:試験管内でヒトの胃の組織を再現する(Natureオンライン版掲載論文)

2014年11月6日
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ESやiPSなどの多能性幹細胞(PSC)が記事になるとき、「様々な組織の元になる」と枕ことばがつく。もちろんそうだが、この様々な組織を作らせることが実は最も難しい。故笹井さんは様々な神経組織を作るという点では世界をリードしていたし、10月9日紹介したメルトンさんは膵臓のベータ細胞を作ることについては誰もが一目置いていた。これは、様々な組織ができるためには、何段階もの細胞の分化を経る必要があり、これを人為的に調節するためには深い発生学の知識が必要になるからだ。したがって、論文を読めばそのグループの発生学の実力が大体わかる。その意味で、消化管ならこのグループという研究室が登場したようだ。今日紹介するシンシナティ大学からの論文は、ヒトPSCから胃組織を試験管内で作らせることに成功した研究でNatureオンライン版に掲載されている。タイトルは、「Modelling human development and disease in pluripotent stem-cell-derived gastric organoids (多能性幹細胞から胃器官を作成してヒト発生と病気のモデルとする)」だ。おそらく研究の詳細は一般の方にはわかりにくいと思うが、この仕事の本質はそこにある。まずあらゆる内胚葉組織になる未熟内胚葉細胞、次に前腸と呼ばれる胎児腸管の後方部細胞、そして前庭部の上皮細胞、最後に様々な細胞を含む胃組織と、4段階に分けてどのシグナルをどの程度の時間加えるのか、培養のための基質は何がいいのかなどを一つ一つ明らかにしている。このためこの論文では珍しく方法が詳しく書かれている。この結果、長期間試験管内で維持できる胃の幽門から前庭部の組織を作ることができている。まだ、胃の基底部を作るところまではできていないが、おそらく時間の問題だろう。論文を読むと、ゴールにたどり着くための試行錯誤を行うこと自体が発生学になっているのもよくわかる。文献を見ると2011年には腸組織の誘導をNatureに発表しており、ヒト消化管発生のプロとして発展しているのだろう。ヒトの組織ができるということは、様々な病気の解析が可能になるということだ。この研究ではピロリ菌が前庭部の上皮の増殖を誘導し、これにc-MetやCagAが関わることを示している。このような組織は今後クリスパーなどの技術と組み合わさると、ヒトの細胞を使った様々な発ガン実験の可能性を開く。我が国の創薬企業も着目すべきグループだろう。シンシナティ大学は長くDevelopmentの編集長を務めたクリス・ワイリーが率いる幹細胞研究の盛んなところだ。発生学と幹細胞研究が統合されたいい伝統が育っていると感心した。

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