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11月20日:多発性骨髄腫の経口新薬(11月14日号JAMA Oncology掲載論文)

2014年11月20日
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うれしい悲鳴だが、多発性骨髄腫の治療が今めまぐるしく変わろうとしており、数多くの治験が同時進行している。今年9月7日には副作用の強いアルキル化剤を使ずに、レナリドマイドとデキサメサゾンだけを併用する治験について紹介した。その時、プロテアソーム阻害剤という新しい薬剤の治験が進んでいることについても触れた。事実今年8月号のBlood誌 (Blood 124:987,2014)にcoming soonと期待を込めて論評されたixazomibの第I/II相治験の結果がついにJAMA Oncologyに発表された。メイヨークリニックからの論文で、タイトルは「Safety and tolerability of ixazomib, an oral proteasome inhibitor, in combination with lenalidomide and dexamethasone in patients with previously untreated multiple myeloma: an open-label phase 1/2 study(経口プロテアソーム阻害剤のレナリドマイド+デキサメサゾンとの併用療法の未治療患者に使った時の安全性と許容性。非盲検第I/II相治験だ)」。プロテアソーム阻害剤が骨髄腫に高い効果を示すことはすでに知られており、武田薬品の子会社ミレニアム製薬のベルケイドなどの治験が進んでいた。ただこれまでの薬は経口投与ができず、同じミレニアムが開発した経口投与可能なixazomibに期待が集まっていた。Ixazomib単剤の治験、及びデキサメサゾン併用での治験も現在進んでおり、これまでのところ期待が持たれる結果が得られているようだ。今回の治験では、すでに骨髄腫治療のスタンダードの地位を固めたレナリドマイドをさらに加えた三者併用を試みた治験だ。昨年12月8日にここで紹介したようにレナリドマイドはIKFZ1,3と呼ばれる骨髄腫の生存に必須の分子を特異的に分解してしまう薬剤だ。一方、プロテアソーム阻害剤は様々なタンパク質を分解する過程を阻害するのがメカニズムだ。作用機構は特異的ではないが、骨髄腫がこのメカニズムに強く依存していることから、他の細胞より感受性が強い。このため正常細胞と骨髄腫との効果の差がはっきり見られる用量を決めることが重要だ。今回の研究ではその点に重点を置いた第I/II相研究で、I相15人、II相50人の小規模な研究だ。無作為化などの統計的な大規模治験とは全く違い、言ってみればさじ加減を許す研究と言える。副作用とのバランスを見ながら用量を決め、服用時に4mg経口投与を、28日を1サイクルとした時、1、7、15日に3回投与するというプロトコルを決め、副作用、効果などを調べている。さじ加減は自由に行っており、副作用が強い場合は用量を医師の判断で減らしている。まず副作用だが、薬剤の標的は特異的ではなく、したがってほとんどの患者さんに様々な副作用がみられ、一人は副作用で亡くなっている。ただ、これまでのベルケードでの結果と比べるとそれでも副作用は軽く、また用量を減らすことで対応できることが分かった。さらに重要なのは、高齢者と他の年代で副作用の出方にあまり大きな差がないことだ。高齢者の多い病気であることを考えると期待が持てる。今回の治験は効果を調べることが目的ではないが、ほぼ9割の患者さんに治療効果が認められ、35%には完全ではないが高い効果、そして27%には完全寛解が見られ、期待通りの結果になっている。論文の内容をよく見てみると、患者さんに合わせたさじ加減を行えばさらに高い効果が得られる用法も開発できそうだ。また、どのタイプの骨髄腫に最も効くかなど、ゲノム検査も重要だ。時間がかかるが、効果の高い治療法に発展する期待が膨らむ。Ixazomibも武田薬品の子会社ミレニアム製薬の開発品で、我が国でも同じ3剤併用の治験がすでに走ろうとしているはずだが、できるだけ早く使えるようにして欲しいと思う。次から次へと新薬が生まれ、骨髄腫患者さんにとっては素晴らしいことだ。しかし、製薬企業にとっては安心しておられないことも事実だ。プロテアソーム阻害剤が骨髄腫に効く理由としてNFkB分子活性抑制が最も重要な標的経路として理解されているが、10月15日に紹介したように、この経路に特異的な新しい新薬の開発が進んでいる。効果が同じでも、副作用が低ければ新しい薬剤で置きかわる。しかし患者の立場からいうと、このような競争は嬉しい競争だ。どんどん進めてほしい。

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