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5月14日:骨髄異形成症候群発症のメカニズム2(5月11日Cancer Cell掲載論文)

2015年5月14日
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昨日はMDSの発症原因の一つが、スプライシング前のpre-mRNAのエクソン部分に結合してスプライシング箇所を指示するSRSF2の構造異常により、スプライシングの失敗が起こり、これが特にEZH2と呼ばれるヒストンのメチル化酵素の構造異常を引き起こし、MDSに至るというシナリオだった。今日紹介するのは、よく似た話だがエクソンエンハンサーを認識する分子ではなく、スプライシングを受けるエクソンの境界を認識する分子U2AF1の突然変異も同じようにMDSを引き起こすというワシントン大学からの論文で、タイトルは「Mutant U2AF1 expression alters hematopoiesis and pre-mRNA splicing in vivo (変異型U2AF1の発現によりpre-mRNAスプライシングが変化し、その結果造血も変化する)」だ。ただ、正直言ってこの論文は、他の2編の論文がなければ掲載されなかっただろう。というのも、ほとんどの話は京大の小川さんが2011年にすでにNatureに発表しているからだ(Nature 478, 64, 2011)。小川さんと完全にオーバーラップするシナリオをまずまとめると、1)U2AF1の突然変異はMDSで見られる最も頻度の高い遺伝子変異で、2)この変異型が発現すると全般的なスプライシングの異常が起こり、構造変化したmRNAが増える、3)この変異系をマウス造血細胞に発現させるとMDSと同じ血液細胞分化が未熟幹細胞の割合が増え、分化細胞が減ることから、間違いなくMDSの最初の原因になっているというものだった。今日紹介する新しい研究では、1)実際のMDS細胞でRNAスプライシングの全体的異常が起こっていること、2)トランスジェニックマウスモデルでMDS発症を示したこと、3)マウスの造血細胞で実際グローバルなスプライシング異常が起こっていること、4)そしてエクソンが欠失する原因になる認識部位を特定したこと、が加えられている。もちろんこれらの結果は重要だが、シナリオの枠組みは小川さんのものと特に変わることはない。本当なら、昨日紹介した論文のように、スプライシングの失敗による構造変化が直接MDS発症につながった原因遺伝子の特定まで示すべきではなかったかと思う。この論文で特に異常が見られるとしてリストされた分子の中にはEZH2は含まれておらず、他にも直接造血に関わる分子がリストされていないため、MDSの発症機序という点では不満が残る論文だった。とはいえ、今回Cancer Cellに掲載された論文から、小川さんが最初に予想したように、エクソンが欠失するスプライシング異常が、MDSの最初の引き金になることが明らかになってきた。同じ異常は他のガンでも高い頻度で見られる。このプロセスを標的とする薬剤の開発は簡単ではないだろう。だとすると、それぞれの細胞でガン化の直接原因になっている分子の同定が重要だろう。
カテゴリ:論文ウォッチ
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