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8月14日:お盆休みの話題作り

2015年8月14日
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昨日は科学雑誌が掲載した研究論文以外のコメンタリーや声明を紹介したが、今日はお盆休みの話題作りに、最近2週間に私が目にして「エ!こんなことも論文になるの?」と思った研究論文を一挙紹介しよう。最後はまたまたシマウマの縞の話だ。ただ断っておくが、あまり真面目には読んでいないのでそのつもりで。 1)A qualitative investingation of the perceptions of female dog bite victims and implications for the prevention of dog bites (犬に噛まれた女性被害者の定性的調査と噛まれないための示唆):Journal of Veterinary Behavior オンライン版掲載。リバプール大学からの論文で、犬に噛まれるのは犬を理解していないからだという通説について、8人の犬に噛まれた女性のインタビューにより検証している。検証といっても、インタビューの主観的印象を述べているだけで、もちろん統計的数字といったものは一切示されない。結局、噛まれないためのはっきりした方法はないという結論が出てくると、論文といっていいのか不安になる。一番面白かったのは研究者の所属で、「不確実性研究部門」というのは論文の結論を先取りしている。 2)Consumption of spicy foods and total and cause specific mortality: population based cohort study (スパイスの効いた食事と死亡率:集団cohort調査):British Journal of Medicineオンライン版掲載論文:食の国中国のバイオバンクからの論文で、30歳から79歳までの集団45万人近くを約7年追跡し、死亡率とその原因を調べ、スパイシーな食事との関連を調べている。四川料理の国ならでの研究だが、スパイシーな食事をほぼ毎日とっている人の死亡率は低く、この傾向はアルコールを飲まないでスパイシーな食事をしている人ほど顕著だという結果だ。また、ガン、心血管障害、呼吸器疾患と死因別に見てもスパイシーな食事は良さそうだ。ただ、民族差の影響も見て欲しい気もある。中国は広い。 3)Weight perceptions in a population sample of English adolescents: cause for celebration or concern? (英国少年・少女の体重についての意識:喜ぶべきか心配すべきか?)International journal of Obesityオンライン版掲載論文。約5000人の12−15歳の英国少年・少女の体重やBMIを測定するとともに、太り過ぎと思っているか聞いた調査で、太り過ぎと思っているのが正常体重のグループで7%、太っているグループで60%と予想通りだったという結果だ。過度なダイエットに走っているようではないのでいいのだが、太っている40%が正常体重と思っているのは少し心配している。ぜひ我が国のデータも見てみたい。 4)The role of stripe orientation in target capture successs(縞の方向性が捕捉されやすさに及ぼす影響): Frontiers in Zoology オンライン版掲載論文。ケンブリッジ大学からの論文で、このホームページでも恒例のシマウマの縞の機能についての研究だ。昨年4月(http://aasj.jp/news/watch/1345)、及び今年の2月(http://aasj.jp/news/watch/2841)にシマウマの縞が保護色ではなく、最初の論文では虫に刺されて血液を失うのを守るため、2番目の論文は皮膚の温度差による換気のためという結論を示していることを紹介した。ただ、誰もが考える保護色論は完全に否定されたわけではない。縞は保護色としての作用が全くないのか調べた研究がこの論文で、横縞、縦縞、斜め縞の物体が画面上を動くとき捕捉のしやすさを人間で確かめている。ライオンでやれないのが残念だが、結果は一つの物体だけが動くときには横縞が最も目立つ。ただ、縦縞、斜め縞は模様なしとあまり変わらない。一方、6種類のパターンが同時に動いている画面で、特定のパターンを捕捉する実験では、差はなかったというのが結果だ。いずれにせよ、縞は保護色として大きな役割はしていないというのが結論のようだ。ただ、このグループはケンブリッジ大学の生理学の研究者で、動物学はそれほど知らないと思う。実際シマウマは、胴体前方は縦縞、後方は斜め縞、首と足は横縞だ。まあ、ちょっと思いついたことも結果を出して論文にするのは見上げた心意気だ。 5)ただ、シマウマの縞が保護色かどうか、私たちの感覚だけで決められないことを明確に示すカリフォルニア州立大学バークレイ校からの論文を見つけた。Science Advanceオンライン版に掲載された「Why do animal eyes have pupils of different shapes?(なぜ動物の瞳は違った形をしているのか?)」がタイトルだ。この研究は、夜行性肉食獣のほとんどの瞳が縦型(猫型)なのに対し、餌になる昼行性の草食動物の瞳は横長なのかを光学的に調べている。結論は、縦型の瞳は、縦に焦点深度が深く、また立体視がしやすいので、標的との距離を測利やすい。一方、横型は焦点は犠牲にして横の動きを感知しやすくしていると結論している。私自身、これまでシマウマの縞を考えるとき、ライオンや豹の瞳までは考えなかった。シマウマの複雑な縞模様はその意味でやはり保護色かもしれない。   以上、人間の疑問に限りはない。本当に多様な研究が行われているのに感心する。
カテゴリ:論文ウォッチ
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