リベットの実験は、客観的記録として脳電位を測定する間に、被験者に手をあげさせ、手を動かそうと思いついた時にボタンを押してもらい、主観的行動の開始時点を決めるというプロトコルで行われる。行動を起こす決心をしてボタンを押した0.3秒前から脳で準備電位が記録できるという結果から、自由意志より先に脳が動くと大騒ぎになった。その後も、この実験自体は追試されてきたようで、実験自体は正しいと考えられている。
この研究では自分の意思に先行しておこる準備電位が発生すると、もう行動まで後戻りできないのか、あるいは準備電位が発生した後も自分の意志でその行動を止められるかという実験を行っている。実験では、開始のシグナルの後、2−3秒待ってから好きな時にボタンを押してもらう。この時脳波を記録すると、ボタンを押すより0.5秒前から準備電位を記録することができる。次に、この時赤のランプを見るとボタンを押すのをやめるよう訓練する。そして、この赤のランプを、準備電位の記録とシンクロさせて点灯させるようにして、準備電位が始まって彼でもボタンを押す行動を止められるか調べている。準備電位を記録するということは、行動が決断されたことを示しており、もし準備電位が行動を完全に決めるなら赤ランプを見ても行動は止められないはずだ。一方、準備電位とシンクロした赤ランプを見てボタンを押すのを止めることができれば、準備電位は行動を完全に決めてはいないと結論できる。詳細は全て省くが、結果は準備電位が記録されてすぐに赤ランプが点灯すれば行動を止めることができるようだ。
リベットの実験と同じで、様々な解釈ができる結果で、最初の実験から30年以上たった今もドイツでは喧々諤々議論されているのかもしれない。ただ、主観と客観の2元論の克服が21世紀の課題の一つだとすると、この実験系も捨てたものではない。
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