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5月27日 瞳孔反射で自閉症スペクトラムを早期に発見する(5月7日Nature Communicationオンライン掲載論文)

2018年5月27日
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昨日に続いて、自閉症スペクトラム(ASD)についての論文を紹介するが、今日は瞳孔反射という極めてシンプルな検査法で、ASD発症リスクを早期に発見できるという、ある意味では意表をつく論文だ。

目は口ほどに物を言うと言うように、瞳孔を観察することで、対象が興味を持っているかどうか調べることができる。言葉でのコミュニケーションが取れない場合に、瞳孔の大きさを興味を示しているかどうかの科学的指標として使っている研究もある。当然、外界への注意に問題があるASDを瞳孔から調べることは以前から行われ、ASDの児童や成人では瞳孔反射が遅くなっていることが報告されている。

今日紹介する論文を発表したウプサラ大学のグループも同じようにASDリスクと瞳孔反射の関係に興味を持ち研究を続ける中で。家族歴からASDのリスクが高いと推定される10ヶ月令の乳児が、児童や成人とは逆に、瞳孔反射が早いことを見出し、2015年に発表している。しかしこの論文では、ASDリスクが高いというだけで、ASDとは無関係の可能性もある。そこで、瞳孔反射が亢進していた乳児から実際ASDが発症するかを追跡したのがこの論文だ。タイトルは「Enhanced pupillary light reflex in infancy is associated with autism diagnosis in toddlerhood (乳児期の瞳孔反射の亢進は幼児期の自閉症診断と相関する)」だ。

自然の状態で乳児の瞳孔反射を調べるのは簡単ではないが、この研究ではトビー社の視線追跡装置を用いて、自然状態で反射を繰り返し測定し、データを取っている。最初の論文では、先に生まれた兄弟にASDがいる場合をハイリスク群、全く家族歴がない群を通常群として瞳孔反射を測定し、ハイリスク群で反応が早いことを報告しているが、この研究では同じ対象をASDの発症を判断できる3歳児になるまで追跡して、瞳孔反射とASDの発症とが相関するか調べている。

昨日述べたように、兄弟でのASD発祥一致率は高く、追跡できた147人のハイリスク群の中から3歳時で29人(20%)のASDが発症している。一方通常リスク群40人からはASDの発症はなかった。

この研究ではこの追跡結果に基づき、乳児期の瞳孔反射の結果を、ASDを発症した乳児、ハイリスクでも発症しなかった乳児、通常リスクの乳児の3群に分けてプロットし直し、瞳孔反射とASD発症の相関を調べている。結果は極めてシンプルで、ASDを発症した乳児は、ASDを発症しなかったハイリスク群の乳児と比べても瞳孔反射速度が高まっており、通常児と比べるとその差はもっとはっきりし、平均で20%ぐらい上昇する。次に、2種類のASD診断指標を用いて、症状の強さと乳児期の瞳孔反射の相関を調べると、はっきりと相関が見られる。そして、瞳孔反射の年齢による変化はASD発祥群で最も大きい。

もちろん他の臨床検査と同じで、通常児とASDの間でオーバーラップは大きく、傾向は見られても、これだけで診断するとなると、かなりな異常値を示す乳児に限られる。おそらく、個人間の差の原因を取り除いた検査の開発が必要だろう。とはいえ、乳児期のこのような単純な反応がASD発症が関わるという発見は、現在進むMRIなどの脳構造研究と相関させることができると、ASDのメカニズム理解や診断に大きく貢献する予感がする。期待したい。
カテゴリ:論文ウォッチ
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