2月5日 ネアンデルタール人は協力して10トン近い象をハンティングして食料にしていた(2月1日号 Science Advances 掲載論文)
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2月5日 ネアンデルタール人は協力して10トン近い象をハンティングして食料にしていた(2月1日号 Science Advances 掲載論文)

2023年2月5日
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一般的にネアンデルタール人は20人以下の小さなグループで生活していたと考えられ、これが彼らが言語を獲得できなかった一つの原因ではないかと考える人もいる。この HP で紹介した一つの洞窟から出土する骨による血縁関係の研究からも4−20人ぐらいの集団と推定されている。

これに真っ向から反論するのがドイツ Monrepos 考古学研究センターからの論文で、ドイツ中部のハレに近い Neumark で進んでいる更新世最大の動物で、現アフリカゾウの祖先と考えられる P.Antiquus の骨から、ネアンデルタール人がシステミックに巨大動物を狩りの対象にしていた事を示す研究で2月1日号 Science Advances に掲載された。タイトルは「Hunting and processing of straight-tusked elephants 125.000 years ago: Implications for Neanderthal behavior(12万5千年前の象のハンティングと処理:ネアンデルタール人行動の新しい意味)」だ。

Neumark は80万年から12万年に地球が温暖になった間氷期に動植物の生存に適した領域として多くの生物が繁栄し、その中に現アフリカゾウの先祖と考えられる P Antiquus も存在し、骨が多く見つかっている。中でも Nord1 と呼ばれる場所で、多くの象の骨が発見され、それを解析する中で、様々な理由から、当時そこに生存した唯一の人類、ネアンデルタール人が象を食糧としてハンティングの対象にしていた考えざるを得ない事を示している。

その理由だが、

  • この領域では全体で36個体の骨が発見されているが、その年齢を見ると94%が25歳以上で、若い象の骨がほとんど発見されない。これは、自然死した死体をネアンデルタール人が食料にしていたのではなく、食料として適した大きな大人の象を標的に狩をしていた事を意味している。
  • また、骨のほとんどは自然劣化の形跡がなく、迅速に処理され、埋められたことが推定される。すなわち、狩の後、食料になる部分が迅速にプロセッシングされていた可能性が高い。
  • そして何よりも、斧などの石器による骨への傷が、特に筋肉と骨の接合部に見られる、また関節がそれにより切り離された事を示す処理の様子が再現できることから、間違いなく食料としてプロセスされていた事を示している。

実際にはこのプロセスの様子が詳しく調べられているが、結果を上のようにまとめていいだろう。結論としては、この領域に埋まっている象の骨は、ネアンデルタール人がハンティングにより殺し、肉や脂肪を食料として処理していたという結論になる。

と書いてしまうと簡単だが、実際には更新世最大の哺乳動物で、埋まっている骨の中にも10トン近くの象も存在する。とすると、20人ぐらいのグループでこのような巨大象をハンティングできたのか問題になる。また食料としても、100人が1ヶ月食べるだけの量になると推定される大きさの像も含まれる。とすると、少なくともこの領域に住んでいたネアンデルタール人は、

  • 100人以上が、ほぼ同じ領域に定住して、あまり移動しなかった。
  • 多数が協力して、できるだけ大きな獲物を狙って、一度に長期間暮らせる食料を用意していた。

ことが推定される。おそらく間氷期のネアンデルタール人は、最もアクティブだったと思えることから、まだまだ我々が知らない姿がそこにはあった可能性がある。食料からネアンデルタールを考える重要性がよくわかる論文だ。

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