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9月26日 うつ病を診断できる神経活動(9月20日 Nature オンライン掲載論文)

2023年9月26日
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以前はうつ病にはセロトニン再吸収阻害剤と決まっていたが、最近ではケタミンから幻覚剤まで、結構ドラスティックな治療が行われるようになってきた。その中に、脳深部刺激治療がある。これは、脳内帯状回にリードと呼ばれる少し長めの電極を挿入し、早い周波数で刺激することで標的部位の回路を回復させる方法だ。さまざまな調整を行いながら治療部位や刺激強度を決めていくので、刺激だけでなく局所の神経活動を測定することができる。

今日紹介するジョージア工科大学からの論文は、深部刺激治療を受けて回復が見られた患者さんの神経活動を、治療開始4週間(これを病的時期)と治療後の4週間(正常化時期)に分けて調べ、うつ病を神経活動から客観的に診断する可能性を模索した研究で、9月20日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Cingulate dynamics track depression recovery with deep brain stimulation(帯状回の動態で深部脳刺激によるうつ病の回復を追跡する)」だ。

まず治療目的で挿入した電極でうつ状態からの回復を捉えることができるか、治療を始めて4週間と、治療後の4週間の脳波を機械学習させたAIに予測させると、AUC0.87という割と高い確率で、病気と正常を区別することができる。

このとき記録した脳波の各周波数成分をうつ時と正常時で比べると、ベータ波を中心として活動が上昇していることがわかる。面白いことに、刺激直後はベータ波の低下が見られることから、最初はうつ状態からの離脱過程での変化で、その後正常状態が維持されると、新しい神経活動レベルに移行していることになる。

実際、うつ病の診断指標と神経活動はほぼ相関していることから、客観的指標として利用できる可能性が高い。他にも、表情からうつ病を診断する方法があるが、この表情を学習させたAI診断法との相関も明らかにしている。従来のうつ病診断法との相関だけでなく、患者さんの中で治療により正常化した後、再発したケースを調べると、神経活動の異常は、診断基準での異常が認められるより1ヶ月も前に現れることも示している。もし、この結果をMRIや脳磁図などの検査に移行させることができれば、うつ病診断をより客観的なものに変えることができる。

最後に、おそらく局所の伝導度を調べていると思うが、この異常の基本が白質異常、すなわちミエリン化の不全が背景にあることを示している。

以上が結果で、局所であっても神経活動という客観的検査データが得られることで、実際の患者さんの病態解析が進む。もちろん電極挿入は最後の手段で、一般の患者さんの診断には使えないことを考えると、この神経活動を非侵襲的な測定法に移行させることが重要だ。まだまだ現象論だが、人間の脳を直接調べるデータは貴重だ。

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