今日紹介する英国キングスカレッジからの論文は LGBTQ+ の若者の精神を安定させるための一種のペットロボット治療に関する治験で、6月4日 Nature Medicine にオンライン掲載された。タイトルは「A socially assistive robot to support mental wellbeing in LGBTQ+ young people at risk of self-harm: a randomized controlled trial(社会的な支援ロボットは自傷リスクのある LGBTQ+ の若者の精神的安定性をサポートする)」だ。
読んでいてともかく優しさの溢れた論文だと思った。LGBT についてはレスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの略でわが国でも普通に使われているが、Q+ がついているのは、Queer and Questioning のことで、自分の性的指向について迷っている人たちも含めた、性的アイデンティティーが一般とは異なる人たちのことだ。英国のような進んだ社会でも、自己形成期にある LGBTQ+ の若者は疎外感を感じ、自傷リスクが高まるため、精神的ケアが行われている。そのための専門家の面談を中心とした Safety planning 呼ぶプログラムを LGBTQ+ の若者が提供されている。
この研究ではこのプログラムを受ける若者を無作為化して、半分は Safety planning のみ、残りの半分に Safety planning に加えて Purrble と呼ぶ反応型のペットロボットを提供し、精神的な癒やしを加えることが出来るか調べている。
Purrble とはどんなペットロボットかだが、ウェッブでの紹介記事があるので結構よく知られているようだ。最初手に取るとドキドキと鼓動が聞こえ、ゴロゴロと鳴くが、なでてあやしているうちに落ち着いてくるぬいぐるみで、あやすという行為の中で自分も落ち着くことを狙ったかわいいペットロボットだ(https://www.reddit.com/r/plushies/comments/1djqc7v/dae_have_a_purrble/)。
このPurrbleを提供するだけで安全性と効果を調べる治験を行うところも本当に感心する。さて結果だが、Purrbleを提供されたことで悪影響があることはなかった。
次に、対象者全体で見たとき、Purrble を提供されたグループは感情のコントロールに困る頻度が減り、うつ症状や不安症に襲われる確率も有意に低下することがわかった。以上が意図された結果の全てで、ここまで真剣な治験には優しさが満ちているように思えた。
もちろん様々なデータがとられており、LGBTQ+ と言っても多様なので、グループに分けて効果を確かめることが行われている。その中で自分の性についての認識でクラス分けをして効果を調べた調査がおもしろかった。LGBTQ+ の若者は、Cisgender と Transgender にわかれ、Cisgender とは自分が男、あるいは女とわかっているが、自身の指向性が同性に向く、あるいは決めかねているグループで、Transgenderは自分の身体的性と逆の認識を持っているグループを指す。そして、Purrble の効果が最も見られるのは、Cisgender のグループで。Transgender ではほとんど効果がなかった。素人ながらも、この結果はそれぞれのグループの精神性を調べる上でもとてもおもしろいきっかけになる様に思う。
いずれにせよ、LGBTQ+ を決して疎外せず支えたいという優しさに満ちた論文だった。
