9月14日 PD-1によるT細胞シグナル抑制の全く新しいメカニズム(9月10日Science掲載論文)
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9月14日 PD-1によるT細胞シグナル抑制の全く新しいメカニズム(9月10日Science掲載論文)

2026年9月14日
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PD-1についての論文は昨年で34,258編発表されているが、T細胞刺激を抑えるシグナルメカニズムについての論文はほとんど見かけない。と言うのも、PD-1はSHP-1, SHP-2などの脱リン酸化酵素をリクルートして、T細胞刺激に必要なシグナル分子のリン酸化を抑えることで、T細胞の刺激を抑えるという仮説がほぼコンセンサスとして広く受け入れられているからだ。ところが全く知らなかったが、SHIP1,2を両方T細胞からノックアウトしても、PD-1による免疫抑制は正常に動くという論文が発表されていたようだ。

今日紹介する米国ジェネンテック社からの論文はPD-1がT細胞を抑制するメカニズムついて、LATと呼ばれるT細胞シグナル分子と直接結合して、細胞膜上でのLATの動きを制限することで、下流へのシグナル伝達を抑えていることを示した研究で、9月10日Scienceに掲載された。タイトルは「Unphosphorylated tyrosines mediate PD-1 inhibition of T cell signaling condensate formation(PD-1のリン酸化されていないチロシンがT細胞シグナルの相分離体を介して、相分離体形成によるT細胞シグナルを抑制する)」だ。

T細胞抗原受容体(TcR)刺激により活性化される経路の中で、細胞膜に存在する分子LATをリン酸化し、GRB2やSOS1がリクルートされるシグナル経路が知られているが、タイトルにあるように活性化されたLATが相分離体を形成することがシグナル分子のリクルートに重要であることがわかってきた。この研究ではPD-1にも相分離体に酸化するIDR領域があることに着目し、PD-1の標的はLATが形成する相分離体ではないかという仮説に沿って実験を行っている。

LATに蛍光をラベルして刺激後に出来る相分離体が見えるようにし、この細胞にPD-1を抗体で抑制すると期待通り相分離体形成を抑えることができる。そして、この作用は従来考えられていたように、PD-1のITIM,ITSMと呼ばれる領域のリン酸化は全く必要無いことを明らかにした。

後は細胞膜上の過程を試験管内の人工膜上で再現する系を作成し、リン酸化されたLATにGRB2/SOS1がリクルートされ相分離体を形成する過程でのPD-1の作用を調べている。すると、GRB2/SOS1を加える前にLATとPD-1が結合すると、GRB2/SOS1がリクルートされた相分離体が出来なくなることを確認している。即ち、細胞膜上の過程を試験管内に移すことに成功した。さらに、表面プラズモン共鳴法を用いることで、この時の反応をリアルタイムで計測できるようにしている。これにより、4分子のPD-1がLATに結合すると完全にLATの相分離体形成が抑制されることを明らかにしている。

さらに、蛍光標識した分子の蛍光をブリーチして回復を調べ膜上の分子の動きを調べる実験系で、PD-1が結合するとLATの膜上での拡散性が低下することでGRB2/SOS1との結合が阻害されることを示している。

後は詳しく、PD-1分子のどの領域がLATとの結合に関わるかを調べているが割愛していいだろう。最後に、同じメカニズムが他の免疫チェックポイント分子にも当てはまるかを調べている。CTLA4の細胞内ドメインはLAT総分離帯の形成には影響ないが、LG3, FcγRの細胞質は、LATの細胞膜上での拡散を阻害し、相分離体形成を抑えることを明らかにしている。

結果は以上で、これほど臨床で利用されている分子の作用機序でも、刷新されてしまうことがあるのかという驚きだが、この結果PD-1とLAG3を同じシグナル上に位置づけられるのは、今後の免疫治療法開発にとっては重要だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
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