3月17日:超微弱電位を感じるメカニズム(3月16日号Nature掲載論文)
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3月17日:超微弱電位を感じるメカニズム(3月16日号Nature掲載論文)

2017年3月17日
   電流に触れるとビリビリと感じることは誰もが経験している。もともと神経は様々なイオンを媒介として電流を生じており、膜電位依存性のチャンネルにイオンが流れることを知っていると、当たり前のことで不思議に感じない。しかし、たった5nV/mの電位を感じる動物がいると聞くと不思議だ。実際、餌の小さな動きを感知したり、あるいは地磁気を感じて元の場所に戻ったりできるためにはこの驚異の検出力が必要だと言われると、感覚神経細胞の進化の多様性に驚く。
   今日紹介するカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの論文は、まさにこの驚異の電流検出能力の生理学的、生化学的基盤に迫った論文で昨日Natureに発表された(doi:10.1038/nature21401)。タイトルは「Molecular Basis of ancestral vertebrate electroreception(脊椎動物の祖先型電気感受能力の分子基盤)」。
   この研究では脊椎動物としては最も未熟なガンギエイが使われている。というのも、軟骨魚にはロレンツィーニ膨大部と呼ばれる電流を感じるための特別な器官が存在しており、電流を感じる神経が集まっている。
   研究ではまず、ガンギエイのこの器官の単一神経細胞のイオンチャンネルを記録するパッチクランプ法を用いて生理学的研究を行い、電位を感じてカルシウムが流入するとそれによりカリウムチャンネルが開くという仕組みがこの感覚に関わることを確認している。すなわち、電位依存性のカルシウムチャンネルと、カルシウム依存性のカリウムチャンネルが電位を感じる分子メカニズムであることを確認している。
   あとは、カルシウムチャンネルを活性化する電位は予想通り低いこと、一方カルシウムにより活性化されるカリウムチャンネルの電導性が低く、持続時間も短いことなど、チャンネルの組み合わせの生理学的特性を明らかにした上で、それぞれのチャンネル分子のアミノ酸配列を調べ、高い電流感受性の仕組みを探っている。
   詳細は省くが、カルシウムチャンネルは電位を感じる部分に隣接するチャンネル部分に特異的配列があり、これにより小さな電気センサーの動きでチャンネルが開くようになっていることがわかった。一方、カルシウムに反応するカリウムチャンネルは伝導度が低く(すなわち多くのKを通さない)、また開いている時間も短い性質を持っており、これにより膜電位の早い振動が形成されていることがわかった。この早い反応で、小さな電位で興奮しても、すぐに元に戻って次の刺激に反応できるように設計されており、長い過分極を防いでいることがわかった。
   これを確かめるために、様々な遺伝子変異を導入してチャンネルの特性を変えて調べている。生化学的特性と、生理学的特性が見事に説明できた、話としては納得の仕事で、ひとつ物知りになった満足感がある。    その上で改めて見直してみると、このような高感度のチャンネルは間違いなく様々な神経操作に使えると想像できる。実際、将来の神経操作技術開発を目指しているのではとすら思えてくる。今回明らかになったメカニズムは音を感じるヘアー細胞のメカノセンサーに極めて似ている。すでにメカノセンサーが磁場で操作できる神経操作に使われているのを考えると、間違いなく微小電気により感情が高まるマウスが生まれると期待できる。
カテゴリ:論文ウォッチ

3月16日:クラスルームでの活動を音で判断する(米国アカデミー紀要オンライン版掲載論文)

2017年3月16日
   教室内でどのように教育が行われ、学生がどのように反応しているのかを知ることは教育方法を改善するためにも重要だ。
   一般的には今も多くの人が、教育効果は教師の能力にかかっていると思っていると思う。事実、私自身が教育を受け、また教育に携わってきた経験から言うと、確かに教師の能力は重要だと思う。しかし、国全体で高い教育効果を上げるためには、最終的には生徒が選べない教師の資質にだけ頼るのではなく、教材、ビデオやPCなどのメディア、そしてそれを生かすための教育指導要領を作ることが重要だ。しかしこれも言うは易く、行うは難い。
   今日紹介するサンフランシスコ州立大学を中心とするグループの論文は教室で行われている教育手法を、音を使ってモニターできるアプリ開発を目指した研究で米国アカデミー紀要に掲載された(www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1618693114)。タイトルは「Classroom sound can be used to classify reaching practices in college science course(大学の科学教育の実行を教室での音を用いてモニターできる)」だ。
   この研究に参加しているのはほとんどがサンフランシスコ近辺の大学で、おそらく州政府などの強い後押しがあるのだろう。アメリカの大学教育で今問題になっているのが数学・物理・化学・生物学などを教える科学教育で、これをレクチャー方式ではなく、もっと生徒のイニシアチブに基づく、アクティブラーニングに変えるための取り組みが行われているようだ。
   ただ、どの程度の大学でこれが行われているのか、全米規模で調べるためには、熟練した検査官が必要になり、簡単ではない。そこで、これを人工知能でやれないか研究を始め、単純に教室内の音を記録し、それをコンピユータに判断させることで、どのタイプの教育手法が使われているのかモニターできることを示している。
   具体的には教室内での音や映像を全てモニターし、音の強弱のパターンだけをPCにインプットするとともに、その時点時点で何が行われていたか、三人の熟練の検査官に解読してもらって(例えば教師が講義している、生徒が相談している、などなど)、その解釈を同じPCにインプットする。このようなデータを機械に学習させて、最終的にDARTと呼ぶ音のパターンからクラスルームでどのような活動が行われているのか読み解くアルゴリズムを作っている。
   結果は満足できるもので、十五人規模の小クラスから、287人規模の大クラスまで、ほぼ正確に「先生が講義している」、「学生が討論している」「全員が考えている」「議論結果を共有している」といった活動を正確にモニターすることができる。実際には、熟練検査官との一致率は90%を超える。
   最後にDARTを使って様々な大学での科学授業を分析させ、クラスで行われている教育スタイルを図表化し、どのように教育が行われているのか誰もが簡単かつ正確に把握できるようになったことを示している。興味を引くのは、アメリカの大学の科学教養授業で、3割近くが初めからアクティブラーニングを取り入れており、また8割以上が授業のどこかでアクティブラーニングを取り入れているという結果だ。専門教育になるとさらにこの傾向が強い。
   AIと言っても全時間のビデオ記録などは情報量が多すぎて役に立たないことが多く、できるだけ単純な指標を用いることが重要になる。自分の経験から判断しても、音を使うのはクラスルームの活動をモニターするという観点からは理にかなっており、直感的にグッドアイデアで、今後改良を重ねれば実用性の高いツールになると思う。もちろんこのツールにより、実際にはどの大学の誰がどのような方法で教育しているのかが一目瞭然でわかるようになるだろう。評価という視点ではいいが、評価される側にとっては大変だろう。また、これは大学の話だが、このアイデアを進めると、小学校から高校まで全てのクラスルームをモニターすることが可能になる。例えば、全てのクラスで授業がモニターされ、問題を早期に診断することができるようになるだろう。
   このような手法の採用には異論も多いと思うが、私は検討に値すると思う。しかし、まず我が国では問題にならない大学での教え方を問題にするこの取り組みには感心した。結局私は旧来依然たる教育法を使っていると判定が下されることまちがいない。
カテゴリ:論文ウォッチ

3月15日:スマートフォンを用いた疫学調査の可能性(Nature Biotechnologyオンライン版掲載論文)

2017年3月15日
先制医療の重要性を我が国で最初に語り始めたのは元京大総長井村先生で、当時私は神戸市のプロジェクトをお手伝いしていた。ただ、リスク予想のためにゲノムを始めとするバイオマーカーを集め、予防の重要性を声を大にして語っても、人間の行動パターンを変化させることが簡単でないという大きな壁に突き当たっている。
   これに対し米国NIHは、健康のための意識変革には行動学と社会学の研究が必須であると考え、今年からこの分野の研究プロジェクトを立ち上げている。中でも、スマートフォンなどを用いたモバイルヘルスの重要性を認識しており、2011年から始まったMobile Health Training Instituteを増強し、研究者にモバイルツールを使った研究法のトレーニングを行っている。
    マインドコントロールと紙一重という批判があるのは承知だが、私はこの批判が、人間に自由意志があるのかについて行われた終わりのない哲学論議と同じで、結局やるか、やらないか割り切るほかないと思っている。もちろん私は推進すべきだと思っている。
    今日紹介するニューヨーク・マウントサイナイ病院からの論文は喘息患者さん向けのiPhoneアプリを使った喘息の実態調査についての論文でNature Biotechnologyに掲載された。タイトルは「The asthma mobile health study, a large-scale clinical observational study using ResearhKit(喘息のモバイルヘルス研究、ResearchKitを使った大規模臨床観察研究)」だ。
   この論文を読んで初めて知ったのだが、アップルは。1)インフォームドコンセントを確認し、2)様々なアンケートを行い、3)健康や病気に関する様々な情報を集め、4)回答を促し、5)結果を中央に集めることを可能にする、ResearchKitと呼ばれるオープンソースのモバイルヘルスのためのアプリ制作フレームワークを提供している。このフレームワークを用いて、喘息のアプリが作成されiPhoneユーザーに提供し、この研究が始まった(残念ながら私はアンドロイドのスマートフォンなのでその内容を確かめていないことを断っておく)。
   この研究ではこのアプリをダンウンロードした(おそらく)喘息患者さんかその家族を対象に1)実際にこのアプリを喘息の実態調査に使えるか、2)このアプリで可能なコホート研究の特徴、3)参加者の熱心さや、長期的関心、4)データ共有についての意識などを調べている。
  研究は2015年3月アプリを提供した日から続けられており、最初の6ヶ月で4万以上のダウンロードがあり、この中でなんと8千人近くがプロジェクトに同意し、参加している。
   結論的には、予想以上に多くの人が熱心に参加し、喘息の季節別、地域別の情報がリアルタイムで得られること、また発作の頻度、薬剤の使用などについても、これまでの厳密な疫学研究とほとんど同じ結果が得られることを示している。
   詳細は省いて、面白い結果だけをいくつか最後にリストしておく。
1) 参加者の88%は、匿名化したデータの共有、66%は研究者へのデータ提供、さらに21%は研究のスポンサー企業への提供を同意している。
2) モバイルヘルスの場合、参加者は圧倒的に白人で、若者が多く、また男性が多い。
3) 症状が重い人ほど熱心に参加する。
4) 一般メディアでの宣伝があると、ダウンロードが高まる。
5) ピークフローなどのデータと、吸入器の使用率などを集めることも可能。
6) 患者さんへ提供する様々なデータにより、発作のコントロールがかなりの割合で可能になったという、医学的効果も表れている
などが挙げられる。
   これまで、厳密な医療統計学に基づき様々な調査が行われており、それと比べるとモバイルヘルスは問題が多いことは確かだ。現に、対象の学歴、年齢、性別、人種など多くのバイアスがかかる。しかし、これを拒否するのではなく、克服する新しい推計学を確立することが正しい道だと思う。このようなフレームワークがあるなら、我が国の研究者ももっと気軽に利用すればいいと思う。21世紀の医学にコレクティブインテリジェンスは欠かせない。
カテゴリ:論文ウォッチ

3月14日:ハチの学習能力(2月24日号Science掲載論文)

2017年3月14日
   高次機能でも進化の過程で神経ネットワークがプログラムされ生まれたすぐに働くものと、生後の学習をとおしてしか働かないものが存在している。例えば、歩いたり走ったりする能力に必要なネットワークは多くの野生動物で生まれた時には完成しているが、人間では2足歩行のためか、歩くまでに一年もかかってしまう。
    これは誰でもわかる例だが、何に学習が必要で、何を生まれつき持っているのか区別するのは実は簡単ではない。その最たる例が言語能力で、通常言葉を並べる統語能力は学習によると考えられてきたが、米国のチョムスキーは、統語能力が生まれつき備わっていると普遍文法を提案し、現在ではこの説が広く受け入れられている。
   同じことは昆虫にも言える。ハチの8の字ダンスが蜜を発見した情報伝達手段であることを示し、ローレンツ、ティンバーゲンとともにノーベル賞を受賞したフォン・フリッシュだが、このようなハチの高次行動は生まれつきと考えられてきたのではないだろうか。
   今日紹介するロンドン・クイーンメリー大学からの論文はハチにも本能と区別できる学習能力があることを証明した研究で2月24日号のScienceに掲載された。タイトルは「Bumblebee show cognitive flexibility by improving on an observed complex behavior(マルハナバチは複雑な行動の観察に基づいて認知可塑性を高める)」だ。
   研究は高校生の生物実験としても使える2種類のシンプルな実験システムを学習課題として考案している。
  まず、ハチを訓練するための実験台を巣と接続させ、そこにハチが一匹だけ入ってくるように設計する。すなわち、なるべく自然の状態のハチを使えるようにしている。この実験台には小さな穴と、花粉に見立てた黄色い玉が置かれており、この玉を穴に上手く入れると褒美の砂糖水がもらえるようになっている。この訓練を繰り返すとハチは黄色いボールを穴に入れるようになるが、この時ハチの形を模したフィギュアが黄色い玉を穴に運ぶ様子を横で観察させて、ハチがフィギュアの行動を見ることで学習効果が上がるか調べている。
   結果は予想通りで、フィギュアの行動を見て学習したハチは、成功率が上昇し、また成功するまでの時間も短縮される。すなわち、他の個体の行動から学習することができる。
   次に、他の個体から学習したことを、自分なりに処理し直して行動するかを調べている。
   この目的のために、今度は三叉路の中央に穴があり、それぞれの経路に3個の黄色い玉を置いてあって、どれかを穴に入れれば褒美がもらえる課題を使っている。面白いのは、それぞれの経路にある黄色い玉と穴までの距離がまちまちになるよう黄色い玉をおく。何も学習していないハチの成功率はもちろん低い。そこで、最も遠い場所にある黄色の玉を穴に入れるように訓練したハチを使って、最も遠いところの黄色い玉を実際に穴に入れさせ、それを観察させる。あるいは、磁石を使って穴から最も遠い黄色い玉が穴に導き、その様子を観察させる。そのあとで、ハチが黄色の玉を穴に入れるか、またどの玉を穴に入れるかを観察している。
   まず、実際のハチの行動を見たハチの方が自然に黄色い玉が穴に入るのを見たハチより成功率が高い。おそらく、これはハチの社会性を物語るのだろう。しかし、何も観察しない群と比べると、黄色い玉が自然に穴に入ったのを観察するだけで、成功率が上がる。極めて好奇心旺盛に脳ができているようだ。
   最も面白いのは、どちらのケースでも、手本としては最も遠い玉が穴に入るのを見たにもかかわらず、自分で行動するほとんどの場合、最も近い玉を穴に入れている。したがって、同じパターンをそのまま繰り返すのではなく、行動を自分なりに処理して行動に転換している。
   もちろん、複眼による視覚機能も含め、昆虫の身になってこの現象を理解する必要があり、単純に楽な方を選んだと結論するのは危険だろう。しかし、この実験から、他のハチの全く新しい行動も脳内で心的イメージとして表象され、それにしたがって行動を変化させる能力があることはよくわかった。実験は簡単だが、今後面白い発展がありそうな気がする。
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3月13日:記憶力アップの脳科学(3月8日号 Neuron掲載論文)

2017年3月13日
    アマゾンの本の検索で記憶力と入力すると、予想どおり記憶力を高める方法に関する本がトップに並ぶ。これほど多いと、どの本が役に立つのか選ぶのは難しそうだが、記憶力を高める方法は古くから経験的に確立していると言っていい。効果があると確認された方法では、トレーニング時に私たちの記憶で最も信頼性が高い空間視覚記憶と、覚える内容を関連させ、内容を構造化することで記憶を確かにしている。また、これを機能的MRIを用いて脳科学的に確かめる試みも行われており、この方法で記憶を構造化しているとき、確かに空間視覚領域が活性化されているのが確かめられている。
   今日紹介するオランダ・ナイメーヘンのラドボウド大学からの論文はこの記憶力アップのトレーニングにより脳に起こる変化を調べた論文3月8日号のNeuronに掲載された。タイトルは「Mnemonic training reshapes brain networks to support superior memory(記憶力トレーニングは高い記憶力をサポートする脳内ネットワークを再構成する)」だ。
   この研究の最大の特徴は、記憶力ランキングで世界トップの23人の脳を機能的MRI(fMRI)で調べ、これを参考に記憶力トレーニングにより普通の人の脳が記憶力チャンピオンに近くのかを調べている。このとき利用した記憶力トレーニングテストはMemocampにより提供されているトレーニングで、英語版はYouTubeで紹介されている(https://www.youtube.com/watch?v=OX5sHZk5XQQ)。

   研究ではまず、安静時のfMRIにより脳の71領域間の結合を調べ、記憶力チャンピオンで特に変化が大きい25結合を特定している。これは調べた全結合の1%に過ぎないが、最も記憶力と相関している。このネットワークでは、内側前頭前皮質と右側の背外側前頭前皮質が結合のハブになって、脳内各領域と空間視覚に関わる視覚野をつないでいる点が特徴としてあげられる。
   次にMemocampが提供するプログラムの効果だが、6週間続けると、72の単語を覚えるテストで、なんと35単語分余計に覚えられるようになっている。またこの効果は4ヶ月間続いている。要するに、このプログラムは信頼がおける。
   そして驚くことに、このプログラムによって記憶力チャンピオンで発達している結合が特に強くなっている。このことは、この回路を訓練できれば誰もが記憶力チャンピオンになれることを示している。
   最後に、ではトレーニング中にどの回路が使われているのか調べると、トレーニング中は各領域の結合ではなく、視覚野、内側前頭前皮質、背外側前頭前皮質内の回路が活発に活動していることがわかった。
   以上の結果から、古来確立している記憶を高める方法は確かに脳科学的に理にかなったものであることが確認された。記憶力を高めたい人にとっては挑戦に値する科学的プログラムだと言える。
   最後に印象を述べると、記憶力世界チャンピオンをよく集めたと感心する。
カテゴリ:論文ウォッチ

3月12日:アボリジニ母系のゲノム地理学(Natureオンライン版掲載論文)

2017年3月12日
   ゲノム考古学の最後は、古代人ゲノムについてではなく、今生きている民族のゲノムから古代を再構築する話を紹介する。対象はオーストラリアの原住民アボリジニだ。
   9000年前、海面の上昇でオーストラリアがニューギニアから孤立して以来、気候条件が厳しいオーストラリアに適合して繁栄していたが、ヨーロッパからの移住が始まると、動物同然の扱いを受け、一時絶滅寸前にまで減少した悲劇の民族だ。差別による虐殺が行われた最大の要因は、最初に移住した白人の多くが、社会からはじき出された犯罪者だったことによると考えるが、社会に不適合な人たちほど民族の優位性を唱え、他民族を差別すること、そしてその結果何がもたらされるのかを、今も私たちに教えてくれている。
   アボリジニが北部オーストラリア大陸に移動してきたのは約五万年前と考えられるが、その後どの様にオーストラリア南部へと広がっていったのかはよくわかっていなかった。昨年9月アボリジの全ゲノム解析から、約四万年前にニューギニアのアボリジと分離したこと、さらに一万年前まで東アジア人との性的交流があったことを示した論文が発表された(http://aasj.jp/news/watch/5824)。
   しかし、全ゲノム解析は性的交流の痕跡を見つけるには優れているが、逆にその結果、民族の分離時期の計算が複雑になったり、異なる民族が一つに一体化する過程を調べるのは苦手なところがある。例えばネアンデルタール人と現代人の性的交流があったとはいえ、決して混血が進み一つの民族へと一体化することはなかった。この様な本当の混血を調べるためには母系の歴史の方が優れている。このためには、母親からだけ受け継がれるミトコンドリア遺伝子が適している。実際、ネアンデルタール人のミトコンドリアゲノムが初めて解読された時、現代人との性的交流はなかったと結論されたが、これは民族の混血による一体化がなかったことを意味している。
   前置きが長くなったが、今日紹介するオーストラリアアデレード大学からの論文はオーストラリア内の地理的由来がはっきりしている111人のアボリジニのミトコンドリアゲノムを解読し、アボリジニのオーストラリア全土への拡大過程を調べた研究でNatureオンライン版に掲載された(Tobler et al, Nature, doi:10.1038/nature21416)。タイトルは「Aboriginal mitogenomes reveal 50,000 years of regionalism in Australia(アボリジニのミトコンドリアゲノムはオーストラリアでの五万年の地域主義的歴史を教えてくれる)」だ。
   この研究のポイントは、ミトコンドリアゲノムとその持ち主の地理的由来を正確に検証している点で、ゲノム地理学と言える。111人のミトコンドリアゲノム解析から、54種類のミトコンドリア型を分類することができ、それぞれの系統関係と、地図上での分布を対応させている。
   まずアボリジのオーストラリアへの移住時期を4.3-4.8万年前と計算し、この結論をさらに慎重に確かめるため、ニューギニアからオーストラリアが陸続きであった時の最も古い遺跡の炭素同位元素による時代測定を行い、結果がほぼ一致することを示している。
   驚くことに、それから四万年間陸続きだったのに、その後のアジアとの交流はほとんどなかった。
  次にゲノムの分布を調べるゲノム地理学から、大陸東西で完全にミトコンドリア型が分離していることを発見する。一方、北部の陸続きだったサウルと呼ばれる領域と、最南部の領域では全てのミトコンドリア型が見られる。これらの結果を合わせると、約五万年前すでにサウルで多様化していたアボリジ民族はオーストラリアに入り、一群は東海岸に沿って、残りは西海岸に沿って広がったことがわかる。
   この間氷河期を含む大きな気候変化が起こっているが、ほとんどの民族がこの間この激変を乗り切っていること、そして7千年前後に気候の改善に伴い、南部で急速に人口が増えている。
   最も特徴的なのはミトコンドリア型が地域的に完全に分離している点で、最南部で民族同士が出会い、また気候改善で人口が増大しても、もほとんど混血することなく、それぞれの領域内で分離して生活していた。
   この分離主義は定住型狩猟民族としての生活スタイルに大きく関係している。とはいえ、アボリジニ特有の文化と、言語は共有していたことを考えると、男性レベルの交流を想定する必要があり、今後の全ゲノム解析が重要になるという結論だ。
   一昨日紹介した同じアデレード大学からの論文とは異なり、慎重な議論に終始した論文だ。今後この母系史をもとに、Y染色体や全ゲノムからのデータをもう一度見直すことで、アボリジの歴史についてかなり理解が深まると期待している。男の浮気が文化を広め、地位に来根ざした女性がそれを守る典型がここに見られると感じた。
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3月11日:私たちゲノム中に存在するネアンデルタール人遺伝子の影響(2月23日号Cell掲載論文)

2017年3月11日
    ネアンデルタール人遺伝子が私たち現代人にも受け継がれていることを証明したのはドイツ・ライプチッヒ・マックスプランク研究所のペーボさんたちだ。その結果、私たちアジア人、ヨーロッパ人、そしてアメリカやオセアニア人のゲノムにはネアンデルタール人遺伝子断片が点在していて、全ゲノムの2%程度に達する。性的交流で子孫が残ると、その遺伝子は集団に受け継がれていくが、すべての部分が平等に受け継がれるわけではない。たとえば、生殖能力に悪い影響のある遺伝子は集団から消える。逆にネアンデルタール人から受け継いだ遺伝子がアジア・ヨーロッパ人を自己免疫病から守る遺伝子として広く維持されていることなどもわかっている(http://aasj.jp/news/watch/5948)。
   この様に、ネアンデルタール人の遺伝子は、私たち現代人のゲノム多様性に大きく貢献している。今日紹介するワシントン大学からの論文は、ネアンデルタール人ゲノムの影響を、これまでとは違った新しい観点から調べた研究で2月23日号のCellに掲載された。タイトルは「Impacts of Neanderthal-introgressed sequences on the landscape of human gene expression(現代人の遺伝子発現に対するネアンデルタール人から受け継いだ配列の影響)」だ。
   この研究の売りは、ネアンデルタールゲノムの影響を知るために、対立遺伝子特異的発現(ASE)が使えると着想したことに尽きる。特に実験を行ったわけではなく、既存のデータベースを新しい観点で調べ直した研究だ。ゲノムデータが揃うことで、questionとアイデアがあれば金のかからない研究が十分可能なことがよくわかる。
   この研究の売りになっている着想とは次の様なものだ。
10体以上のネアンデルタール人について全ゲノムが明らかになると、ネアンデルタール人にはあって、現代人ゲノムにはない一塩基レベルの遺伝子多型(SNP)のリストができる。このリストがあると、私たちのゲノム領域のどこにネアンデルタール人遺伝子が潜んでいるか明らかになる。
   このSNPで標識されたネアンデルタール遺伝子部分が片方の染色体だけにある場合、遺伝子発現調節のミスマッチが起こる可能性がある。普通は両方の染色体の遺伝子の発現は同じレベルに保たれているが、転写調節のミスマッチがあると、それぞれの染色体の遺伝子の発現レベルがアンバランスになる。これを対立遺伝子特異的発現(ASE)と呼んで、人類の多様性を研究する指標に利用している。このアンバランスをネアンデルタール人のSNPで標識された領域について調べたのがこの研究だ。
   ネアンデルタール人と現代人が別れてから四十万年以上になると、当然独自の遺伝子調節機構を発展させている。その遺伝子が性的交流で現代人ゲノムに入った場合、当然ミスマッチが起こる可能性が上がるというわけだ。
   研究では遺伝子型と各組織の遺伝子発現がセットになったデータベースを使って、ネアンデルタール由来遺伝子が片方の染色体だけに存在する領域について、各組織での発現にミスマッチがないか、ASEを調べている。
   結果は期待通りで、多くのネアンデルタール由来遺伝子で転写のミスマッチが起こっている。特に、脳と精巣では強く発現が抑制されているネアンデルタール由来遺伝子が多いことを示している。
   例を挙げると、神経細胞の増殖に関わるNTRK2受容体遺伝子は,ネアンデルタール人由来のものだけが小脳と脳幹で強く抑制されている。この遺伝子の突然変異は、うつ病、言葉の発達、肥満、アルツハイマー病、自閉症、ニコチン中毒など多くの病気と相関しており、重要な遺伝子だ。ミスマッチがあるということは、脳での遺伝子発現調節機構が、脳高次機能の発達に合わせて急速に進化した結果、現代人の遺伝子発現調節メカニズムが侵入してきたネアンデルタール人由来遺伝子にマッチしなかったことを示している。
   他にネアンデルタール人由来遺伝子が強く抑制される傾向が見られるのが精巣で、おそらくネアンデルタール由来遺伝子が発現すると生殖能力が落ちるのだろうと推論している。実際、精子の鞭毛の動きに関わるネアンデルタール人由来遺伝子は強く抑制されている。また、現代人ゲノムから完全に失われたネアンデルタールゲノム領域は精子発生や、機能に関わる領域が多い。
   この様に、ネアンデルタール人由来部分を調べることで、私たちの進化に必要だった条件が明らかになる。おそらくもっともっと面白い話が、着想次第で出てくるだろう。大量のデータが存在する今こそ、新しい想像力でこのデータを生かす若者が生まれることを期待する。
カテゴリ:論文ウォッチ

3月10日:ネアンデルタール人の歯石のゲノム解析(Natureオンライン版掲載論文)

2017年3月10日
    ちょうど3年ほど前になるが、修道院に葬られている中世の人骨の顎骨から歯石を削り取り、タンパク質やDNAを解析したNature Genetic論文を紹介したことがあった(http://aasj.jp/news/watch/1233)。この時、歯石には死後過程で侵入する細菌が少ないことが強調されていた。歯石も史跡になるかもしれないと下手なダジャレで終わったが、その後も歯石研究は広く行われていた様だ。
   今日紹介するオーストラリア・アデレード大学からの論文はついにネアンデルタール人までさかのぼり歯石に含まれるDNAを調べた研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Neanderthal behaviour, diet, and disease inferred from ancient DNA in dental calculus (歯石中のDNAから推察されるネアンデルタール人の行動、食事、そして病気)」だ。
   歯石の中では比較的DNAが守られていると述べたが、しかし少なくとも2万年以上前のネアンデルタールからの標本となると、よほど慎重に扱わないと間違った解釈を導く危険性があることは念頭において読む必要があるだろう。
   また歯石に残るDNAの量も多くなさそうだ。もっとも多く読めたサンプルで1億5千万リードで止まっている。最初PCRによる解析も考えていた様だが、最終的にはショットガンシークエンスと呼ばれる方法で、歯石中のすべてのDNA配列を読んで、由来した細菌や食べ物を推察している。
   読めた配列の94%はバクテリア、6%は古細菌で、食物や自分の細胞から由来したDNAはたかだか0.3%しかない。この中からまず食物由来のDNAを探すと、ベルギーのスパイ洞窟のネアンデルタール人ではほとんどが動物由来でマンモス、サイ、羊由来のDNAが見つかる。一方スペインのエルシドロンのネアンデルタール人からはほとんどが植物由来のDNAが見つかる。しかし、農耕による食物ではないので、forager(食べ物を探し歩く)だったとしている。
   ただ、この結論はやはり多くの疑問が残る。ネアンデルタール人は火を使っていたことは知られているし、それによる変性はないのか?また人間のDNAを調べるのとは異なり歯石中のすべてのDNAを読むとなると、汚染されたDNAと区別は難しいが、その点についての議論がない。食物で大きな差が見つかったことを信頼性の根拠としてミスリードしている様に感じる。
   信頼させた上で、さらに大きな膿瘍の跡がある骨から、アスピリンを含む植物やペニシリンを含むカビが見つかったことまで言及されると、ちょっとはしゃぎすぎではと懸念する。
   一方DNAのほとんどを占めるバクテリアについては、食物に合わせて細菌叢が形成されていることを強調している。すなわち肉食のネアンデルタールは狩猟民族の細菌叢に近く、草食のネアンデルタールはチンパンジーに近い。これもなんとなく納得しやすい結果だ。あとはやはりDNAが壊れていて、明確な結論は導きにくそうだ。
   最後にほぼ完全な配列を決定できた口内細菌の配列を他のソースからの同じ種と比べ系統樹を書いている。現代人の細菌と、ネアンデルタールの細菌が分離したのが12−14万年前、すなわち現代人とネアンデルタール人とが別れたずっと後なので、ゲノムからわかる様に口内細菌も身体接触を通して交換されていたと結論している。
   ネアンデルタール研究には注目してきたが、この論文は慎重さが足りない様に思える。当時のスペインとベルギーの気候の差、歯石の形成プロセス、火の使用など、考慮すべき項目は多い。その点もしっかり議論して欲しいと感じた論文だ。信頼性はどうなのかぜひ専門家の意見を聞いてみたい。
カテゴリ:論文ウォッチ

3月9日:世界初の補聴器の二重盲検無作為化試験(3月2日号American Journal of Audiology掲載論文)

2017年3月9日
    40代半ばから特に右耳の聴力障害が始まって、人の話をキャッチしにくいためいろいろ迷惑をかけてきたと思うが、現役をやめた頃に補聴器を買った。結構高価なもので、オーディオグラム検査を繰り返して自分に合う様細かく調整してもらったおかげで、だいぶ人の声はキャッチできる様になった。
   自分が難聴になったせいか、新聞などの補聴器の宣伝にも目がとまる。専門店で買うより結構安価で、現代の技術水準からすれば通販で買うのもありかなとも思う。
   考えてみると、補聴器はどう選べばいいのか、医療の側からテストされたことはないのではなどと考えていたら、世界初の補聴器の二重盲検無作為化試験であることを強調する論文がインディアナ大学から3月2日号のAmerican Journal of Audiologyに発表された。タイトルは「The effect of service-delivery model and purchase price on hearing aid outcomes in older adults: randomized double blind placebo controlled clinical trial(相談しながら提供する補聴器の販売方法とその値段が高齢者の聴力改善に及ぼす影響:プラシーボを対照に置いた二重盲検無作為化臨床試験)」だ。
   27ページで、図が17、表が11もある長い論文で、この分野に慣れていないので、きわめて読みにくかった。しかし、随所に世界初の補聴器の二重盲検試験であることが強調されている。
   この研究ではマルチチャンネルで調整可能な3600ドルの補聴器を、トライアルに参加した全員に配る。ただ、その時対象を無作為化して、1群には面談しながら個人の聴力に合わせた補聴器を、2群には面談と補聴器は同じだが、最後は全く調整しないで、そして3群には同じ補聴器を面談なしで、自分で3種類の特性から一つを選ばせる方法で提供している。3群はさらに、値段が3600ドルと告げられた群と600ドルと告げるグループを作って、値段によって聞こえ方が変わるかまで調べている。
   現在補聴器を買う時の行動をよく理解して、よく設計した治験と言えるだろう。6週目に補聴器の自覚的効果を聞き、このまま買うか、返却するかを尋ねて、満足度を調べている。結果は以下の様にまとめられる。
1) オーディオグラム検査では、相談しながら調整すると個人の聴力に適合した補正が出来ている。3種類の調整から自分で選ばせると、強い音が出る調整が選ばれ、騒音に対する問題が出る。したがって、もちろん相談しながら調整してもらったほうがいい。
2) 満足度だが、相談して調整した人のほとんどはほぼ満足し、6週間経った後、補聴器をそのまま買うという決断をしている。全く調整しなかった対照群だけでなく、自分で調整する群も満足度は低くほとんどが、補聴器を買わなかった。
3) 3群で3600ドルと告げられた人も、600ドルと告げられた人も、自覚的な改善度は変わらず、ほとんどが買わなかった。
    予想通り検査を受け、それに合わせた補聴器を調整してもらうべきという結論だが、これを確認するためここまで綿密な治験をよくやったと感心する。
   高齢化社会では間違いなく補聴器の需要は大きい。対面サービスが必要だと、どうしても高価になる。もし普及させたいなら、次は自動で対面サービスと同じ調整が可能な、安価な補聴器の開発が必要だと思う。そして是非その機械も同じ様な治験で効果を確かめてほしいと思う。
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3月8日:試験管内での胚発生再現(Scienceオンライン掲載論文)

2017年3月8日
    マウスや人の受精卵は、自分の力で分裂し、胚と胚外組織に分化した胚盤胞と呼ばれる段階まで進むことができる。この段階で胚を壊して培養すると、全ての組織へと分化できるES細胞が樹立できる。しかし、このES細胞は胚外組織の元になるトロフォブラストに分化できないことが多い。代わりに同じ段階の胚からトロフォブラストに分化が限定された細胞株(TS細胞)を樹立することができる。
   実際の胚発生では、胚盤胞内の細胞が増殖しながら、内部細胞塊がエピブラストと原始内胚葉の2層上皮を形成するegg cylinderが形成するとともに、胚と接しているトロフォブラストは胚体外外胚葉と呼ばれる上皮構造を形成する。
   この初期胚分化をES細胞から再現しようと様々な試みが行われてきたが、ES細胞からトロフォブラストが形成されないため、embryoid bodyと呼ばれる球状構造を作らせるのが精一杯だった。
   今日紹介するケンブリッジ大学からの論文は早い段階でES細胞をTS細胞と結合させることで実際の胚発生により近い胚を試験管内で作れないか調べた研究でScienceオンライン版に掲載された(Harrison et al, Science 10.1126/science.aal1810 )。タイトルは「Assembly of embryonic extra-embryonic stem cells to mimic embryogenesis in vitro(胚性幹細胞と胚外幹細胞を合わせると試験管内で胚発生を再現する)」だ。
   ES細胞もTS細胞もずいぶん前に樹立されているのに、なぜこのような実験が行われなかったのが不思議だ。おそらく、この分野の研究者は、胚外細胞と胚細胞を合わせて、子宮内に移植して完全に細胞株からマウスを作ることを目的に実験を進めていたのだろう。この研究はそこまで高望みせず、ESとTSを結合させた後、マトリジェルと呼ばれる3次元マトリックス内で発生させ、TSを組み合わせることと、できないことを整理している堅実な研究だ。
   結果だが、思いの外実際の胚発生に近い過程を試験管内で再現できている。順を追って見ていくと、
1) 自己組織化で、胚と胚外の分離が起こり、それぞれの細胞塊は上皮化することで、まず胚内、そして胚外に空洞が形成される。これにより、胚内ではegg cylinder様の構造、胚外では羊膜様の構造へ発展する。
2) Nodal分子を介する胚内組織、胚外組織の相互作用が、上記の構造形成に必要。Nodal分子を阻害すると空洞ができない。
3) 中胚葉誘導の最初の分子brachurryの発現が胚内上皮で出来たシリンダーの片方にのみ見られる様になる。すなわち、胚の不均等性が生まれる。
4) 胚外、胚内の境に始原生殖細胞が発生する。
    という過程が、再現できている。しかし、最も肝心の原始内胚葉を持ったシリンダー形成が出来ていない。このためか、brachurry発現の非対称性は再現できても、原条のようなしっかりした構造はまだできておらず、また原腸陥入の再現も出来ていないと言える。
   とは言え、できないことが整理されることで、目標が明確になる。もちろん原始内胚葉とエピブラストを持ったシリンダー構造をどう形成させるかが次の課題になる。そろそろ、細胞だけから個体が生まれる可能性を意識しておいても良さそうだ。
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