11月3日:脊髄損傷の大きなステップ:生理学の勝利(Natureオンライン掲載論文)
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11月3日:脊髄損傷の大きなステップ:生理学の勝利(Natureオンライン掲載論文)

2018年11月3日
9月26日、脊髄損傷の小さなステップというタイトルで、硬膜外電気刺激とリハビリを繰り返すことで、硬膜外の電気刺激を自分の脳である程度コントロールすることで、大地を歩けるようになった症例報告を紹介した。ただ、論文を読んで、例えば体性感覚が欠損している分を目で補っているなど、どんな患者さんでも確実に歩けるようにできるのかについては説得力がなかったため、「脊髄損傷の小さなステップ」というタイトルで紹介した。

ところが、まだ一月しか経っていないのに、今度はNatureに同じく外科手術で脊髄の硬膜外に留置した硬膜外刺激装置で3人の慢性期の頸椎脊髄損傷患者さんが自力で歩行することを可能にした研究が報告された。膨大な生理学的データを示して、なぜ歩けるかというプロセスを段階的に説明した論文で、素人の私にも説得力が高く、これはかなりいけると、今度は「脊髄損傷の大きなステップ」というタイトルで紹介することにした。ローザンヌにある工科大学EPFLからの論文でタイトルは「Targeted neurotechnology restores walking in humans with spinal cord injury (標的を定めた神経テクノロジーが脊髄損傷患者さんの歩行能力を回復させる)」だ。

この研究も、9月に紹介した研究も、筋肉と直接結合している末梢運動神経を脊髄に埋め込んだ硬膜外電極で刺激して運動を回復させる点では同じだが、この研究では生理学的な詳しいデータを集め、足を動かすための多くの筋肉が空間、時間的によりよくコントロールできるようにした上で、それぞれの患者さんのデータを重ねて調整が図られている。例えば、股関節を曲げる時、上部腰椎の脊髄が活性化されるが、足首を伸ばす時は上部仙骨の運動神経を支配する神経細胞集団を活性化するといった組み合わせが、それぞれの神経に伝わるようにプログラムする。また、神経刺激のパターンと屈筋、伸筋の関係についてさまざまな例を示して、ただ単純に刺激すればいいというものではなく、生理学的なデータに基づく刺激が重要であることを示している。

その上で、以前紹介した方法と決定的に違うのが、足を動かそうとしてもらって、全く動かない場合、硬膜外刺激を弱く加えてそれを残った神経で脳で感じてもらい、それぞれの筋肉をコントロールできる回路を開発できるようにしている。これにより、筋肉を動かすタイミングと強さを自分の頭でコントロールできるようにしている。この結果、驚くことに硬膜外刺激のないときでも、足を動かすことができるようになっている。また、治療開始5日で、吊り下げてもらいながら歩行訓練ができるようになる。

もちろんこんな説明では到底足りないほどの、記録や調整が行われた上の話だと思うし、このために患者さんも大きな努力を払ってコントロールを取り戻すためのリハビリを行ったと思う。そして最終的に、タブレットPCを通して、立つ、歩く、サイクリングなど、声で命令するとその動作に最適の刺激が与えられるようにしたコントロールシステムにより硬膜外刺激を与え、その刺激のタイミングと強さを自分の脳でコントロールすることで、3人ともかなりの運動能力を取り戻すのに成功している。

結局講釈は後にして、結果を見てもらったほうがいいだろう。次の2種類のビデオをみれば、これが大きなステップであることはわかっていただけるのではないだろうか。 https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1038%2Fs41586-018-0649-2/MediaObjects/41586_2018_649_MOESM8_ESM.mp4

このビデオを見るだけで私の説明など無意味であることがわかる。まさに生理学と電気工学の融合の勝利だと思う。また、ETHやEPFLのように工学と基礎科学が常に同居するシステムで教育研究を行うスイスの伝統の勝利と言えるのかもしれない。そして、我が国でも例えば脊損で政界を引退した谷垣さんを中心にして、この治療法をどう導入していけばいいのか、議論するときがきたように思える。
カテゴリ:論文ウォッチ

11月2日人類はいつからチョコレートを食べているのか(Nature Ecology & Evolutionオンライン版掲載論文)

2018年11月2日
少し専門的な論文が続いたので、ちょっと息抜きと思っていたら、うってつけの論文を見つけた。人類がチョコレートの原料カカオ豆をいつから栽培植物として利用し始めたのかという問題についての論文だ。しかしアフリカ由来のコーヒに南米由来のチョコレートは息抜きになる。

これまでカカオTheobroma cacaoの栽培は中米で始まったとされていたが、最近ゲノム研究が進み、遺伝的に大きな変化、すなわち栽培化がアマゾン上流で始まったのではないかという可能性が示唆されていた。今日紹介するカナダアルベルタ大学考古学教室からの論文は、少なくとも5450−5300年前には、エクアドルでカカオがすでに栽培されていることを示した研究で、アマゾン源流でカカオの栽培植物化が始まったとする説を支持する論文だ。タイトルは「The use and domestication of Theobroma cacao during the mid-Holocene in the upper Amazon (カカオの利用と栽培は完新世中期、アマゾン上流で起こった)」だ。

この研究の手法は単純で、2002年にフランスとエクアドルの合同チームにより発見され、放射線同位元素の年代測定から5300年前と年代特定できたマヨチンチべ文明の最古の遺跡(エクアドル)から見つかった陶器にカカオの痕跡がないか3種類の方法で調べ、すべての方法で栽培植物化されたカカオと考えられる残滓を特定できたという話だ。この遺跡は、当時の陶器の生産所として機能しており、複雑な形のツボまで様々な陶器が見つかっている。

具体的には、陶器にこびりついている煤けた食物残渣を19種類の道具から採取、その中の6種類の陶器から現在のカカオに似たデンプンが回収された。これらは野生種のカカオとは区別される。

次にこれを液体クロマトと質量分析器で調べ、カカオ由来のTheobromineを検出している。

最後に残渣のDNAを回収し、配列から栽培化された他のカカオや野生のカカオのDNAと比べている。カカオのDNAをトラップして濃縮する方法により得られた5種類のDNAサンプルのほとんどが栽培化されたカカオの配列由来で、野生型のDNAが混じっていたのは2種類だけで、それもほんの一部で、全て栽培化されたカカオを代表していることが明らかになった。また、他の栽培かカカオとの関係では、アマゾン上流のプルス川、エクアドルのクラレー川のカカオに、エクアドルで栽培されているチンチぺ種より近いこともわかった。以上のことから、この遺跡で食べられていたカカオはすでに栽培化されたカカオに近いことから、おそらくここにたどり着く前に栽培化が行われたのではと結論している。たかだか19種類の多型を用いた系統解析で、これだけで完全にカカオ栽培の歴史をたどるのは難しいが、、アマゾン上流のエクアドルで最初栽培化され、それが中米からメキシコで独自に新しい種に改良されたとする考えを示している。

もちろん、塩基配列の一致を見たからといって、実際にこびりついいていたサンプルが、当時のものかどうかはわからない。あとからつく可能性も十分ある。これについては、回収したDNAに5000年分の変性が起こっていることを示して、確かに後から混入したものでないことが示されている。ただ、この点については問題にする研究者も多い気がする。まあ、ここでは一応著者の結論を受け入れよう。

しかし、コーヒーといい、カカオといい、人類は結構苦いものをわざわざ栽培化して利用していたことになるが、実際その時から、これほど美味しい食べ物として発展すると考えていたのだろうか。その予見能力には脱帽する。
カテゴリ:論文ウォッチ

11月1日:自然免疫細胞の遺伝子発現の細胞間、及び種間の多様性(10月24日号Nature掲載論文)

2018年11月1日
ガンの免疫療法を考えると、現在実用化されているチェックポイント治療は、ガンを殺すのに必要な免疫反応の強さの閾値を下げて効果を高める方法といえるが、他にも多くの標的過程がある。中でも、がんの免疫を成立させる入り口の増強は極めて重要だ。この時、昔ならガン特異的な免疫反応だけが問題になったが、今では自然免疫系の関与の重要性が十分理解され、これを活性化させるのがアジュバントや腫瘍溶解性ウイルスになる。この系は、種差や人種差が大きいことが知られており、大きな多様性が生まれるメカニズムを理解することは、この系を標的にする治療法開拓には重要な問題だ。

この自然免疫の種間の多様性の問題を、 Poly I/CやLPSのような自然免疫刺激剤を異なる動物に注射し、それに対する線維芽細胞やマクロファージの遺伝子発現の差として正確に定義し、多様性のメカニズムを調べたのが今日紹介する英国サンガー研究所からの論文で10月24日号のNatureに掲載された。タイトルは「Gene expression variability across cells and species shapes innate immunity(遺伝子発現の種間の差と、細胞間の差が自然免疫を形作る)」だ。

極めて直線的でシンプルな実験が行われている。目的は自然免疫反応の多様性を理解することで、このため人間を含む様々な動物を準備し、その皮下に刺激物質を投与、同じ種類の細胞の転写レベルでの反応の多様性を調べている。また同時にsingle cell transcriptome を行い、個々の細胞での遺伝子発現の多様性も調べている。

実験は、人間、猿、げっ歯類にPoly I/C を注射し、ファイブロブラストの遺伝子発現を調べただけの、直接的で単純な実験で、単純とはいえ好感が持てる。ただLPSを注射してマクロファージの反応を調べる実験は、流石に人間を対象にはできなかったようで、代わりにウサギ、ブタを使って調べている。

この結果、インターフェロン、TNF、IL1など、全ての種で共通に上昇する分子も多く存在するが、ウイルスの処理に関わる数多くのサイトカインやケモカインの発現の強さは種により大きく変動する。同じ多様性は、マクロファージのLPSに対する反応でも見られる。

次に、これらの遺伝子発現の強さの違いが、プロモーターのエピジェネティックな状態と対応しているのかどうか、遺伝子発現が活性化された遺伝子に結合しているH3K4me3の結合を調べると、種間の多様性が大きな遺伝子ほど、予想とは逆に活性型のヒストンと結合していることがわかった。さらにこれらの遺伝子のプロモーター領域は、遺伝子発現で大きな種差があるにも関わらず、配列が保存されているという、少し進化の常識から外れた結果が示された。

この原因を追求して、種差の大きな遺伝子は、TATA型のプロモーターを持つが、メチル化の標的になるCpG islandが抜けているという特徴を持っていること見出している。そして、この種差が大きくなるプロモータを持っている遺伝子の多くが、サイトカインやケモカインをコードしていることがわかった。 炎症に最も重要なサイトカインやケモカインの発現の種差が、逆に大きいというのは、予想に反するが、それぞれの種で、細胞間の遺伝子発現を調べると、種差の大きなサイトカインやケモカインの遺伝子が、細胞間の発現でも、大きな多様性を示すことがわかった。すなわち、細胞間、種間を問わず、発現に大きな多様性が生まれるようなプロモーターの構造が多くのサイトカインやケモカインで維持され、もともと細胞レベルでも発現の多様性が構造的に高く、この結果進化速度も上昇することが示唆された。実際、発現の種差の大きいサイトカインほど、遺伝子配列の多様性も大きい。

話は以上で、結論は少しわかりにくいかもしれないが、多様な外界のストレスに対応して、迅速に進化できる自然免疫のエフェクター分子の多様性を支えるのが、発現レベルでの多様性をを積極的に生み出すように進化したプロモーターの特殊な構造にあり、これが種間で自然免疫系が多様化する原動力になっていると結論している。 人間を含め異なる動物を直接比べた点は評価できるが、本当にこれが正しい解釈かどうか完全に納得というわけにはいかない論文だった。
カテゴリ:論文ウォッチ

10月31日 時間をカウントする脳回路(Nature Neuroscienceオンライン掲載論文)

2018年10月31日
私たちの海馬の嗅内野と呼ばれる領域に、場所を記憶するグリッド細胞が存在する事はノーベル賞に輝いたオキーフやモザーさんの研究によって明らかにされた。実際、外部の空間的位置に対応して反応する細胞が、脳内で一種の空間的地図を形成しているのをみると、本当に感動する。一方、空間と並んで重要な時間はどのようにカウントしているのか?これについては、9月1日に同じモザーさんの研究室から、マウスが10−20秒間隔で規則正しく興奮を繰り返して、行動に時間の情報を統合している神経回路が示された。ただ、この時間は行動と密接に関わり形成されるリズムのようなものだ。しかしこれ以外にも、私たち人間はじっとしていても、頭の中で時間の経過を感じることができる。

同じようなじっとしている時の時間をマウスはカウントすることができるのか、もしできるとしたらその回路はどんな特性を持っているのかを研究した論文がNorthwestern 大学の神経生物学部門からNature Neuroscienceに報告された。タイトルは「Evidence for a subcircuit in medial entorhinal cortex representing elapsed time during immobility (動かないでじっとしているときに経過する時間を表象する内側嗅内野の下部回路が存在する証拠)」だ。

人間でも、例えば黙祷を捧げている時、時間をカウントしようとすると、「一、二、三、四」と頭の中で実際の数をカウントするのが普通だ。マウスも、本当にそんな芸当ができるのだろうか。この研究では、マウスを自分の足で回すことができる踏み車の上にのせ、前には3面スクリーンで周りの景色を変化さセル装置を用いて、直線で門の前まで走ってから、6秒待って、門が開くときすぐに中に入って進むと餌にありつけるというバーチャルな課題を作り、この課題を行わせながら、内側嗅内野に蛍光センサーを設置して、領域内の神経細胞の活動を記録している。

この研究のミソは、門の前まで来た後、止まって正確に6秒数えて走り出した時だけ門の中に入って餌にありつけるようにして、じっとして6秒カウントする行動が取れるよう訓練している点だ。これにより、体の動きや場所の認識とは全く別に、時間だけをカウントする神経回路があるかどうか調べることができる。この課題では、もちろん目から景色の変化や、門の開け閉めがインプットされるようになっており、当然場所に反応する神経も記録される。

まず驚くのは、訓練すればマウスでも6秒を正確に数えることが50%以上の確率でできるようになる。すなわち、時間をカウントすることができる。そしてこの時活動する神経細胞を調べてみると、じっとして時間をカウントする時にだけ興奮する細胞が確かに存在する。すなわち、場所とは無関係に時間のカウントを行う神経回路が存在する。

これら時間カウント細胞の興奮を記録すると、驚くことに、時間の経過に合わせて、異なる神経細胞が順番に興奮することで6秒という時間を計っていることがわかった。言い換えると、6秒の間に細胞の興奮がリレーのように伝わることで時間が図られていることがわかった。そして、この時間の経過を表象する細胞群はこの領域内でも互いに近接してサーキットを作っている。この発見が、この研究のハイライトだ。

あとは、カウントが短すぎたり、長すぎたりした失敗時の神経活動を調べ直し、細胞間の連携の正確さが時間カウントの正確さを決めていることを明らかにする。また課題自体は同じだが、目に入る景色をまるっきり違う景色にスウィッチして、時間のカウントに関わる同じ細胞が、新しい課題に対しても、最初から同じように使われていることも明らかにしている。

結果は以上で、ともかく時間の経過とともに、違う神経があたかも興奮をリレーしているように(実際にはそうだと思うが)、順々に興奮している図を見せられるとそれだけで納得する研究だ。もちろん、まだまだ現象論にとどまっていることは間違いない。今後ぜひ、このリレー回路のメカニズムと、それがどのように行動の命令へと統合されるのかなど、明らかにして欲しいと思う。モザーさんの実験も考えると、様々な時間が私たちの脳の回路として維持されているのがわかる。概日周期並みの大きな研究領域に発展する気がする。
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10月30日オーガニックフードでガンは防げるか(10月22日号JAMA Internal Medicine掲載論文)

2018年10月30日
随分前からヨーロッパでは、BIOとかOrganic をうたったスーパーマーケットが街角で多く見られるようになった。最初見たとき、店に全てオーガニックを集めて、その由来を店が保証するシステムはなかなか合理的だと思った。我が国でも、行くところに行けばあるのかもしれないが,街を歩く限り同じような業態はまだ普及していないように思う。少々値段が高くても、オーガニックを徹底したいと思う人たちが生まれ、それが一定数を超えると、それを支えるアクセスしやすいマーケットができることは間違いないので、我が国ではそこまで徹底したいと思う人間の数はまだまだ多くないのだろう。

しかし、オーガニック、すなわわち肥料、農薬、抗生物質など人工化合物を全く使わない食品に変えれば、ガンなど病気の発生を抑えることはできるのか?今日紹介するフランス・ソルボンヌ大学疫学・統計学研究所からの論文はフランスでオーガニックな食品を使っている人を、平均4年観察して、がんの発生を一般食と比べた論文で、10月22日号のJAMA Internal Medicineに掲載された。タイトルは「Association of Frequency of Organic Food Consumption With Cancer Risk (オーガニック食品を食べる頻度と癌のリスク)」だ。

研究では、まずウェッブで集めた6万人近くの人を、オーガニック食品を食べる頻度(例えば全ての食事でとか、週に2回)に参加者をオーガニック度を1−4段階に分けている。Q1はオーガニックに無頓着という人々で、Q4はオーガニック度が最も高い。

このような方法の最大の問題点は、オーガニック度だけが違うという人たちを集めるのが難しい点で、実際Q4の人は他のグループより当然健康に注意している人で、所得も高く、タバコを吸っている率は低く、肥満も少ない集団になっている。ただ統計学的には比較を妨げるほどではないと、統計の専門家である著者らはこのまま比較を続けている。ただ驚くのは、月給が1200ユーロ以下の人たちの中の13%の人が最も高いオーガニック度の生活を続けている点で、所得をにかかわらず、意思を徹底させている人達がいるのを知って、この生活スタイルが定着していることに感心する。

いずれにせよアンケート調査に応じた人たちを、平均で4年以上追跡し、がんの発生率をそれぞれのグループで確かめ、Q1-Q4各段階のがんにかかるリスクをオッズ比として算定している。

さて結果だが、かなりの効果がある。すなわち、Q1―Q4へとオーガニック度が上がるに従い、ガンのリスクオッズ比は下がり続け、 Q4段階でのオッズ比はなんと0.7にまで低下している。まだ、フォローの期間が短いため、ここのガンについて統計学的に何か言えるまでにはいっていないが、母数が十分な乳がんを取り出してみても、同じ傾向、すなわちオーガニック度の高さと、ガンの発生リスクのオッズ比と相関させる、見事にオーガニック度が上がるとリスクが下がる。

もしこの結果をそのまま受け入れれば、やはり私たちはがんの原因になる多くの化学化合物に囲まれて生きており、オーガニックに変えることで大きな効果があるという結論になる。著者らの頭の中にあるのは、農薬やホルモン類似物質だが、もちろんこのような調査では単一の物質に特定することはできない。あまり気にせずこの歳まで生きてきた私たちにとっては、もう手遅れだが、若い世代にとっては重要な問題だろう。さらに多くの調査研究が行われることを望む。しかし、このような調査が難しい問題をClinical Trial Govに登録して、真正面から取り組む疫学者がいるのにも脱帽。
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10月29日:アホロートルの四肢再生過程のsingle cell transcriptome解析(10月26日号Science掲載論文)

2018年10月29日
たまに幹細胞の話を若い人にすることがあるが、再生現象を教える時、プラナリアとアホロートルの四肢再生は、解析が最も進んだ系の例として取り上げている。その時、プラナリアの再生はES細胞型、アホロートルの四肢再生はiPS型と教えている。というのも、プラナリアの場合、体の全ての細胞に分化できるES細胞とも言える幹細胞が身体中に存在し、障害を察知するとその細胞から分化を誘導して成熟細胞を作る。一方、アホロートル四肢再生の場合は、すでに分化していた間質細胞が多能性の幹細胞へとリプログラムされ成熟細胞をリクルートすることから、iPS型といっていい。

さて、これらのプロセスは現在single cell transcriptomeで詳しく解析が始まっておりプラナリア再生時の細胞分化のダイナミックスについては以前紹介した(http://aasj.jp/news/watch/8430)。今日紹介するオーストリア分子病理学研究所からの論文はアホロートル四肢再生にsingle cell transcriptomeを組み合わせて解析した研究で10月26日のScienceに掲載された。もちろん、責任著者の一人はこの分野の開拓者Elly Tanakaさんだが、ドレスデンからウィーンに移っても着実に研究が進んでいる。

以前紹介したプラナリアの研究とは違って、この研究ではこれまでTanakaらが開発してきた細胞系譜を追跡するためのトランスジェニック個体が使われており、これにより再生芽だけを解析したり、再生組織に存在する細胞の元々の起源を確かめたりできる。すなわち、single cell transcriptomeを統合した、総合的再生研究を行なっている。

研究では、これらのツールを使いながら、再生前の間質細胞が再生芽へと発展し、その後筋肉や骨にボディープランに合わせて分化していく様子を詳しく解析している。膨大なデータなので、詳細は割愛するが、ほぼ完全にこれまでTanakaらが提案していた仮説が正しいことが示された。しかし、この一言で終わってしまうのも、あまりにそっけないので、今回確認された重要な点だけ列挙しておこう。

四肢再生では、もちろん皮膚や血管は再生能力があるため、そのまま新生が起こればいい。問題は、骨や筋肉、そしてそれをつなぐ腱などをどう再生させるかが問題になる。これが組織中の間質細胞によってリクルートされることはわかっていたが、今回single cell analysisが行われた結果、間質細胞の中に特に幹細胞として再生に働くものがあるわけではなく、どの間質細胞集団からも刺激に応じて再生芽細胞ができることが明確に示された。また、筋肉や骨細胞から再生芽ができるわけでないこともはっきりした。

また、手を切断するとすぐに細胞外マトリックスを分泌するシグナルが間質に入っているが、このような炎症型の刺激により始まり、その後成熟型の間質が形成されると同時に、ボディープランに関わる分子の発現が見られる。このように、間質が再生をどうガイドするのかは、これからの問題になる。

どの細胞からできてきても、再生芽は極めて均一な集団で、この細胞へのリプログラム過程の解析は今後の重要な課題になると思う。しかし、腕の先と根元の方の再生に関わる細胞の起源は別々で、先の方は骨格近くにある間質細胞、根元の方は皮下の間質細胞に由来することを示している。

以上細胞レベルの解析により、仮設の大枠はそのままでも、さらに新しい課題とそれに挑戦するための道筋がはっきりと示されたと思う。基本的には、現象論だが、これがより分子メカニズムを対象にした研究に進む大きな後押しになったと確信した。
カテゴリ:論文ウォッチ

10月28日模倣の神経回路(Natureオンライン版掲載論文)

2018年10月28日
進化の過程で環境とゲノムの間をさまざまな生物情報が媒介し、その中の最も重要な一つが高次神経回路だが、「模倣」「コピー」の進化への寄与を具体的に解説してくれて参考になるのがKevin N LalandさんのDarwin’s unfinished symphonyだ。残念ながら邦訳はないが、行動学や、脳の高次機能に興味がある人にはぜひ勧めたい良書だ。

この本から分かるように、ほかの個体の行動をコピーする能力は、脳を持つ動物の進化に大きく寄与してきた。実際、模倣のための特殊な脳回路が存在し、それが永続的な行動の脳回路に変換していることがよくわかるのが、鳥類のsong learningだ。天安門事件以前、朝、北京の公園にはお年寄りが集まり、大事に育てた鳥の歌比べをしていたのを覚えている。今はもうそんなのどかな風景は消えてしまった、というより北京市内から胡同が消滅してしまったので、こんな経験はできなくなったのではと思う。このお年寄りの趣味は、まさに鳥が模倣することを通して、永続的な鳴き声の回路を形成する過程を利用したものだ。

少し前置きが長くなったが、今日紹介するデューク大学からの論文はダーウィンの種の起源で有名になったフィンチが1ヶ月齢時期に泣き方を覚えるプロセスの脳回路を明らかにした論文でNatureオンライン版に掲載された。筆頭著者は現在東北大学で研究している田中さんという研究者だ。

この研究では、フィンチが歌を覚えるとき、生きたたフィンチが歌っているのを教師と認めて音を聞いた時だけ、歌の回路を形成できるメカニズムを脳回路的に研究している。このため、他の個体の声だけには反応せず、歌うオスを教師として認識しながら音を聞いたときだけに反応する回路を抜き出すところから始めている。と言っても、すでに研究の積み重ねがあり、この回路が中脳水道周囲(PAG)にあるドーパミン神経と、それが投射する鳥のさえずり中枢HVCとの間の回路にあるという答えがあり、この仮説を検証するという形で研究を進めている。

実際オスが泣いているのを見/聞いた時だけPAGが興奮することをまず確認して、次に、実際この刺激がドーパミンの分泌が高まることで起こることを、HVC神経がドーパミンと結合すると蛍光を発するように遺伝子改変して確認している。

次にこの神経興奮パターンが、確かに歌う回路形成に関わることを調べる目的で、歌を習うときにドーパミン分泌神経繊維を障害する化学物質による処理を行い、この回路がsong learning時に抑制されると、歌の回路が形成されないこと、また逆にこの回路を光遺伝学的に刺激することで、今度は教師になる鳥を見ないときでもある程度の歌の回路が成立することを示している。

最後に、先生に習うことがどのような神経科学的効果があるのかを調べ、習っったことがより強固に自己の脳活動に同化されている事が示されている。

かなり単純化してまとめたが、メッセージは上の通りだと思う。習うべきか、聞き流せばいいのか、この決断を決める回路がはっきりした。今後は、この回路に何がインプットされるのかなど芋ずる式の研究が進むと思う。同時に、ドーパミン神経であることからも、同じような回路が模倣する哺乳動物でも認められると思う。面白い、いい研究だと思う。そして、モデル動物でないフィンチでも、これだけの神経操作手法が使えることを知って、感心した。
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10月27日 AIに道徳観を植え付ける(Nature オンライン掲載論文)

2018年10月27日
論文の中には、友達同士酒の席で浮かんできたような疑問を、「よし、みんなで調べてみよう」といった感じで、実際に実験や調査を行うといった、極めて思いつき型の論文ではないかと思えるものがある。この場合、もちろんそこには地道な研究の積み重ねなどは、論文の中でみじんも感じられない。独断的な議論でアマチュアという印象を受ける。このような論文が掲載されるためにはquestionが勝負になる。

今日紹介するMITのメディアラボからのNature論文はまさにそんな例で、「AIに道徳観を植え付ける」という状況を設定して、読者を引き込もうとする意思が見え見えの研究だが、読んでみるとちょっと拍子抜けという論文だった。タイトルはもちろん魅力的で「The Moral Machine experiment (道徳機械実験)」だ。

Questionはシンプルで、「機械の限界から事故が不可避と判断された時、いくつかの可能性の中から最も道徳的な選択をAIが選ぶときの基準をどう決めるか?」だ。タイトルから見ると、これを実現するのが道徳機械でこれを実現したのかと錯覚するが、実際にはそうではなく、至極まっとうな議論がIntroductionで進められる。すなわち、「道徳といっても絶対的基準はなく、社会に応じた相対的なもので、AIに実装する選択基準もそれぞれの国や文化が最も受け入れやすい必要がある」というわけだ。

とすると、全世界にわたって相対的な道徳基準を調べる必要が出てくる。ここまで読み進むと、ようやく「道徳機械」とは何かがわかる。すなわち、全世界からいくつかの道徳課題について考え方を集め、整理する機械なのだ。わかりやすくいうと、全世界レベルの世論調査機械が彼らの言う道徳機械だ (日本語のウェッブサイトhttp://moralmachine.mit.edu/hl/ja参照)。

ウェッブ上で道徳機械アプリにアクセスしてもらい、そこで設問に答えてもらう。設問は、タクシードライバーが例えばブレーキの故障でそのまま進めば歩道を歩いている人、ハンドルを切れば同乗の人が犠牲になるという状況がわかったとき、どちらを選択すべきかで、選択対象を女性vs男性、子供vs大人、信号を守る歩行者vs守らない歩行者、など13種類の状況を設定して答えさせている。

よく考えると、コンピュータによる単純なアンケート調査にすぎない。ただ、論文によると233の国から4千万近い参加者があったようだ。もちろん、入力されたデータを、様々に層別化して分析する機能を持っており、例えば国別での道徳基準を容易に導き出すことができるようになっている。

結果はわりと当たり前で、世界中で例外なく男性より女性を大事にする。しかし、日本などアジア諸国は若年者を大事にしない傾向がある。ラテン系ではペットと人間を選ぶとき、人間への重みが少ない。などなど、詳しくは紹介しないが、なんとなくわかる結果が列挙されている。もちろん国別で経済格差の影響や、個人主義の影響など、分析が行われているが、驚くと言ったデータではない。

そして話はここで終わってしまう。本来なら、これで学習させたAIで道徳を実装した仮想自動車が、シミュレーション実験でどう決断したのかぐらいまでやって初めて、Natureに掲載されるべきだと私は思う。

もちろんあっという間に4000万人に対しての調査がでる時代がきたことはすごい。そして、結局道徳とは相対的なものだということを説得力をもって示せた力も認める。ただ著者らが書いているように、同じような結論に、ドイツの倫理委員会では、委員会議論の上に到達しているようで、逆に人間が積み重ねてきた知恵の偉大さが際立ってしまった気がする。本当の道徳機械はできるのだろうか。
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10月26日:ネットでの情報収集で温暖化問題への意見を変えられるか?(米国アカデミー紀要掲載論文)

2018年10月26日
自然現象についての科学的解釈には本来党派性は無関係だ。ところが科学が進んで、現象について何らかの対応が可能になると、途端に党派性が生まれてしまう。その典型が、地球温暖化問題だろう。

いま党派性から世界を見ていると、未来より現在を重視する党派と、現在をある程度犠牲にしても、未来をより重視する党派に分かれつつあるように思う。例えば原発は是か非かを考えるとよくわかる。この問題は、安全性や経済性について議論すると、水掛け論に終わり結論が出ない。しかし私の個人的意見だが、原発も、大きな電力を生産し、それをトップダウンで順々に分配するという、20世紀の階層性の遺物の典型だから、未来には必要ないと考てみたらどうだろう。一方、自然エネルギーは、階層的ではない新しいpeer-to-peer型ネットワーク構築に向けた未来の投資だと考えられる。ただ、こちらを選択すると現在の社会構造ををかなり否定することになる。

青い議論だとしても、未来か今かで判断すれば、以外とわかりやすい。20世紀の階層性を廃棄して、新しいネットワーク型社会へ投資するとすると決めれば、いくら原発が温暖化問題にとってはクリーンエネルギーだとしても、21世紀の選択にはならない。このように整理して行くと、原発支持=化石燃料支持になり、原発を重視した民主党時代のエネルギー政策でも、20世紀型になる。

しかし、いま世界は十分な余剰資本が投資先を求めてうろうろしているのに、未来を考える余裕がますます失われ、現在重視へ世界中が舵を切り始めているように思ってしまう。

ちょっと愚痴が長くなったが、今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は、地球温暖化問題を例に、いわゆる現状重視のポピュリズム政党支持者が、温暖化を警告する科学的意見を受け入れられるのか調べた一種の社会調査で米国アカデミー紀要にオンライン掲載された。タイトルは「Social learning and partisan bias in the interpretation of climate trends (温暖化問題に関する社会学習と党派バイアス)」だ。

わかりやすく言うと、トランプ支持者が地球温暖化に関するデータを受け入れられるのかという話になるが、もし温暖化が起こっていないと言うデータを見せられた時、サンダース支持者がそれを受け入れるかにそっくり代えて考えることもできる。ただ、私自身は温暖化が進んでいると思っているので、特に前者の問題として読んでいる。

さて調査の内容だが、1979年から2013年にかけて北極の氷の量の推移を示したグラフ(1996年から急速に低下しており現在はピークの6−7割に落ちている)が、このNASAのデータをみて将来さらに悪化すると思うかどうか、保守党支持者と民主党支持者で比べている。実験前で調べると、保守党支持者では6割、民主党支持者では75%が温暖化が悪化すると思っている。確かに意見が大きく分かれているが、共和党支持の半数以上が温暖化を心配しているのを知り、安心した。

次に、参加者を共和党と民主党支持者が同数参加するネットワークに参加して、そこから情報を得て学ぶという状況を実験的に作り、温暖化について周りの個人的意見や、あるいは平均した意見が入ってくるようにして、温暖化に関する自分の考え方がどう変わるか調べる。この時、意見の出所の支持政党がわかるようにしたネットワークと、支持政党がわからないようにしたネットワークに参加させたグループで、考えの変わり方を調べている。

この凝った実験系でわかった最も重要なことは、支持政党など党派性がわからないネットワークに参加している場合は、個人の支持政党にかかわらず温暖化に対する意見が大きく変わる。実際、共和党支持者でもトライアルが進むと9割近くが温暖化は深刻だと考えるようになる。すなわち社会学習は重要だという結論だ。ただ、もっと重要なのは、少なくとも温暖化問題に関していえば、意見と支持政党が連結してわかる場合でも、変化は小さいとはいえ、それでも共和党員、民主党ともに10%ほど温暖化は深刻だと考え方を変えている。すなわち、ネットで情報を得ること自体が、党派性をある程度克服できるという結論になっている。

もちろん課題によって結果は異なるだろう。また、共和党ではなく、トランプ支持者に限って調べれば結果は異うかもしれない。それでも、科学的なデータがある場合、おそらくどんなに政治家が強い意見を発しても、市民はいつか問題を認識するという実験で、個人的には励まされた気がした」。
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10月25日:胎児期にマラリア抗原に暴露されるとトレランスではなく免疫が成立する:常識は疑え(10月17日: Science Translational Research掲載論文)

2018年10月25日
学生時代、免疫現象で最も感銘を受けたのが免疫トレランスと呼ばれる現象で、中でも新生児期に皮膚移植をすると、他人の皮膚片に対する免疫が成立せず拒絶が起こらないないという、メダワーたちの実験だった。私が習ったときは、これらは全て成熟前のT細胞が抗原に出会うと、反応する代わりに、細胞死に陥るからだとされていた。その後、調節性T細胞が坂口さんたちによって示されると、新生児期に抑制性T細胞が誘導されることも免疫寛容に寄与すると考えらるようになった。いずれにせよ、胎児期や新生児期に抗原に触れさせると特定の抗原に対する反応は長期に抑制されるというのが常識だった。

しかし最近になって、人間のT細胞反応の場合、ウイルスによっては胎児期に母親を通して抗原に触れると、寛容ではなく免疫が成立するという、常識を覆す発表が見られるようになってきた。今日紹介するカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの論文は、マラリアに対してもT細胞性免疫反応が胎児期に成立することを、マラリアの蔓延しているウガンダの妊婦さんとその子供で調べた研究で10月17日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「In utero priming of highly functional effector T cell responses to human malaria (マラリアに対する高い反応性を示すエフェクターT細胞を子宮内で誘導する)」だ。

この研究は妊娠中のマラリア排除のため、アルテミシン間歇療法の治験にリクルートされた妊婦さんの胎盤が出産時にもマラリアに感染しているかどうかで層別化し、その時の胎児臍帯血のT細胞の反応を調べて、マラリアに対する免疫が成立しているかどうかを調べている。

最初は、感染の強い母親から生まれた子供では、臍帯血に分裂中の記憶T細胞が増加していることを確認した後、マラリア抗原抽出液に対する試験管内反応で、CD4,CD8共に上昇していることを見出す。すなわち、マラリア抗原に対しては、胎児期にトレランスにならず十分免疫が成立することが明らかになった。さらに、これがマラリア抗原由来ペプチドに対する反応であることを、表面に発現されるMSP-1タンパク質配列に合わしてペプチドを合成し、それを用いたT細胞刺激実験で、反応するのを確かめている。また、MHCに対する抗体を用いて、これらのT細胞がMHC+ペプチドを認識していることも確かめている。

さらに重要なのは、このような免疫方法では抑制性T細胞が全く誘導できない事で、トレランスにならないのは、抑制性T細胞が誘導できないからという可能性も示している。

そして最後は、こうして誘導されたT細胞が本当にマラリア感染を防ぐことが出来るかだが、臍帯血中のCD4T細胞がマラリア抽出液に強く反応した子供は、マラリアへの感染確率が、反応の低い子供の半分以下に低下し、また2年以内にマラリア抗原が検出される率はなんと3分の1に低下している。すなわち、母親からのマラリアに対して免疫反応が成立すると、生まれた後もマラリアにかかりにくいことが証明された。

以上の結果は、現在進められている妊娠中のマラリア駆除で子供を守るというプロジェクトに対しては、再検討が必要であることを示すとともに、これまでことごとくうまく行っていないマラリアワクチンも、胎児期に打つという可能性を追求する価値があることを示唆している。もちろん、どのような形態のワクチンが必要かなどさらに検討が必要だが、、胎児への免疫はトレランスを誘導するというこれまでのドグマは疑ってかかったほうがいいように思う。
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