9月22日 個人用ガンワクチンへの期待と限界(9月18日号 Cell 掲載論文)
AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ

9月22日 個人用ガンワクチンへの期待と限界(9月18日号 Cell 掲載論文)

2025年9月22日
SNSシェア

ガンが発生する過程で数多くの遺伝子変異が起こるが、変異した分子がもしガンで発現するなら免疫系にとっては非自己になる。この非自己抗原に対して人間でも免疫が成立してガンを抑制するかどうか20世紀盛んに議論されたが、21世紀に入って本庶先生やAllisonの免疫チェックポイント治療の有効性が示され、ガンに対する免疫のパワーが明確になった。ただ、チェックポイント治療はガン免疫が治療時、あるいは治療中に自然に成立することが条件になり、これがないと副作用だけが出てしまう。これを補うためには、感染症と同じでガン抗原に対してワクチンを投与し、新たに免疫を誘導する必要がある。しかし一人一人のガンは個性があり、共通の変異は限られているため、ガンに新しく生じた変異(ネオ抗原)を個人ごとに探し出すテーラーメード治療が必要になる。

このブログでも何度も紹介し、YouTubeジャーナルクラブでも解説したガンワクチン研究は(https://www.youtube.com/watch?v=0IqrHxI-XgU&t=609s)進展しているが、効果とコストの面でまだまだ一般的にはなっていない。これを前に進めるには、実際の臨床現場で患者さんの承諾を得て徹底的にガン免疫の成立維持状態を調べ尽くす必要がある。今日紹介するダナファーバー ガン研究所からの論文はネオ抗原の発見しやすいメラノーマを対象に、考えられる最強の免疫法を用い、その後臨床経過とともにガンに対する免疫を調べ尽くそうとした研究で、9月18日号 Cell に掲載されている。タイトルは「A multi-adjuvant personal neoantigen vaccine generates potent immunity in melanoma(複数のアジュバントを用いた個人用ネオ抗原ワクチンはメラノーマに対する免疫を確かに誘導する)」だ。

ステージが進行したメラノーマ患者さんの腫瘍をバイオプシーし、ゲノムとRNA解析を行い、基本的にはコンピュータ上で有望なネオ抗原を特定し、可能性の高い20種類について個人ごとにGMP基準でペプチドを合成し、抗原として用いている。11人という限られた数の患者さんでもこの過程に3−5ヶ月かかってしまい、ワクチン接種が遅れる。より多くの人に利用して貰うには、この過程をボトルネックにならないようにさらに改善する必要がある。

この研究ではワクチン作成に時間がかかることを見越し、最初からPD-1に対するチェックポイント治療を始め、既に存在するガン免疫を動員する方法でしのいでいる。ワクチン接種後の免疫も、すぐ利用可能な既存の方法を組み合わせて最強と考える免疫を行っている。実際には、同じくチェックポイント治療に用いられるCTLA4に対する抗体をワクチンとともに皮下注射している。そして、ペプチド抗原はMontanideを基質として使いポリICを自然免疫誘導のために用いている。

その後30週あまりの臨床経過を調べており、6人が再発なしで経過しており、一人は30週目に再発、残りの3人は10週以内に再発している。有効率が50%を超えるのはワクチンの効果がある事を示しているが、これだけのプロトコルでも効かない人がいるのは免疫の個人差を超えられていないことを示している。

とは言え、Elispotと呼ばれる方法で調べると、全く効果がなかった患者さんでも免疫が誘導できていることがわかる。もちろんチェックポイント治療だけでも免疫は上昇するが、ワクチン注射でインターフェロン産生系を中心に高い免疫反応が新しく誘導できている。従って、治療の失敗原因については理解できていない。

反応するT細胞側についてもネオ抗原特異的T細胞を誘導できたか、遺伝子レベルで調べており、すぐに再発した患者さんも含めてチェックポイント治療後、さらにワクチン接種後にネオ抗原特異的と考えられるT細胞が増加していることを確認している。

特に完全寛解した患者さんについては、末梢血だけでなく、ワクチン接種部位、そして残っている腫瘍組織に浸潤した細胞まで詳しく調べている。腫瘍内の免疫細胞については効果がなかった患者さんでも調べており、効果がなかった患者さんではCD8だけでなく制御性T細胞も誘導されていることがわかっており、治療失敗の一因であることを示唆している。

成功例失敗例を問わず、新しい抗原特異的T細胞が3回目のワクチン接種後に上昇がはっきりすること、これはワクチン接種局所の皮膚T細胞でもはっきり見られることを示している。

結果は以上で、ワクチンは抗原特異的CD8、CD4 T細胞両方を誘導し、ほとんどの人でこれらは腫瘍細胞まで浸潤する。ただ、腫瘍へ浸潤する細胞のタイプに個人差が見られるため、効果に差が現れるというのが現在までの結果になる。

とすると改良点としては、個人用ワクチンができるまでガン共通に見られる変異をワクチンとして利用するとともに、CD25と結合しないようなIL-2を用いて細胞バランスを整えることが考えられる。後者については明日紹介する。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月21日 小細胞性肺ガンの起原(9月17日 Nature オンライン掲載論文)

2025年9月21日
SNSシェア

最近、小細胞性肺ガン (SCLC) の研究をよく目にするようになってきた。SCLCは膵臓ガンやグリオブラストーマと並んで治療の難しいガンとして知られているが、遺伝子発現の研究が進んだ結果、極めて多様なグループに分類されるようになっている。SCLC-AはASCL1遺伝子の高発現、SCLC-NはneuroD高発現、SCLC-PはPou2F3高発現、そしてYap1を高発現するSCLC-Yが主なものだ。これまで転写因子の発現から、A型とN型は神経分泌細胞、P型は肺のTuft細胞、そしてY型は上皮幹細胞由来とする多起源説が中心だったが、マウスを用いた発ガン研究で神経分泌細胞からほとんどSCLSが発生しないこと、単一細胞レベルの解析で肺の幹細胞と言える基底細胞遺伝子の発現が見つかったことから、全て基底細胞由来として説明できるのではと考えられるようになっていた。

今日紹介するデューク大学からの論文は、マウスのSCLC発ガンモデルを用いて各サブタイプの発生を調べ、基底細胞から全てのタイプのSCLCが発生することを調べた研究で、9月17日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Basal cell of origin resolves neuroendocrine tuft lineage plasticity in cancer(基底細胞由来と考えることでガンの神経分泌とTuft細胞系列の可塑性を説明できる)」だ。

何度も紹介してきたがSCLCは多様性が大きいが、ほぼ全てのSCLCでRb1とP53遺伝子の欠損が見られる。従って実験発ガンではCre-組み換え酵素を用いてRb1/p53遺伝子をノックアウトし、場合によりMycの発現を高める方法が用いられる。

この研究では肺をナフタレンで傷つけて基底細胞の増殖を誘導し、この時基底細胞だけでRb1/p53/Mycを操作すると (RPM) SCLCが発生すること、こうして発生したSCLCはY型以外はA、N、P型が存在することを示し、基底細胞の発ガン性変化により多様なSCLCが誘導できることを確認している。

今度はより実験をしやすくするため、基底細胞を分離してオルガノイドを形成させ、この時点でRPMをはじめとする様々な遺伝子改変を行い、多様なSCLCを誘導できるか調べている。ガンが発生するまで試験管内で培養することは難しいようだが、遺伝子操作後免疫不全マウスの皮膚に移植すると確実にSCLCが発生すること、そしてA/N/P型全てが誘導できることを明らかにしている。ただ、Mycの発現なしに誘導したSCLCではほとんどN/P型が発生しないことから、Rb1/ P53欠損にMycが加わることで多様性へのドライブがかかることを示している。

この多様性はそれぞれのタイプに特徴的な遺伝子が発現することで起こるが、実際ASCL1をノックアウトすると、P型のSCLCへとバイアスがかかることを示している。一方で人のガンでASLC1遺伝子欠損は認められていないため、おそらくWntやNotch シグナルにより遺伝子発現が抑えられることで、P型あるいはY型へのバイアスが生まれるのだろうと結論している。

他にも、患者さんのSCLC遺伝子解析からリストされてきた遺伝子変異を基底細胞オルガノイド系で誘導することで、例えば PTEN欠損とMycによりP型のSCLCへバイアスがかかることを示しているが、詳細は割愛する。

要するに、これまで考えられてきたのとは異なり、SCLCの起原を基底細胞と考える方がその多様性を説明しやすいこと、そして基底細胞の増殖が誘導されたときRb1/p53欠損に陥ることでSCLC発ガン過程が始まり、これにMycが加わると転写の不安定性を誘導して、多様性が生まれる。もちろんその間に環境要因により他の遺伝子発現が大きく変わる事で、新たな遺伝子増幅や欠損がなくても多様性が誘導されることを示している。このように発ガン過程を追求することで以前示したように(https://aasj.jp/news/watch/27361)新しい治療戦略がもたらされる可能性も高く期待している。

カテゴリ:論文ウォッチ

 9月20日 プロモータとエンハンサーの安定な関係を維持するゲノム構造(9月18日 Science 掲載論文)

2025年9月20日
SNSシェア

遺伝子発現調節セットプロモーターとエンハンサーとの関係はかなり整理されているように感じていた。スーパーエンハンサーのように様々な場所からエンハンサーがプロモータにリクルートされる場合は別として、両者はゲノムの三次元構造で決定される領域内 (TAD) でのみ相互作用ができるようになっていて、その中でなら場所が変わっても同じように相互作用するというデータも示されてきた。

今日紹介するオランダ ガン研究所からの論文はES細胞とSox2遺伝子発現というよく研究された遺伝子調節機構を利用して、TAD内でもエンハンサーの影響は複雑な調節を受けていることを示した研究で9月18日 Science に掲載された。タイトルは「Functional maps of a genomic locus reveal confinement of an enhancer by its target gene(ゲノム領域の機能マップはエンハンサーが標的遺伝子により制限されていることを明らかにした)」だ。

研究では Sox2 がコードされている遺伝子を中心にした 4Mb の TAD のSox2遺伝子近くに、Sox2のプロモーターと蛍光マーカー遺伝子をレポーターとして組み込んだトランスポゾンを新たに挿入し、このトランスポゾンを活性化して様々な場所にレポーターを移動させ、経口の強い細胞から弱い細胞まで、セルソーターで純化し、一個一個の細胞についてどこにレポーターが移動したかを20万個の細胞で調べている。

トランスポゾンはSox2遺伝子のすぐ上流、及び 50kb 上流に挿入してそこから飛ばしている。結果だがどの領域でもほぼ同じようにエンハンサーが作用できるとする予想に反し、エンハンサー活性はレポータートランスポゾンがSox2遺伝子の近く、あるいはエンハンサーの近くに移動したときだけ高く、Sox2遺伝子とエンハンサー領域の間では中程度、そしてそれより外ではほとんど活性が見られないことがわかった。即ち、同じ TAD内でもエンハンサー活性は大きく変化し、さらにこの活性はトランスポゾンとエンハンサーのコンタクトする頻度を反映していることから、正真正銘のエンハンサー活性を反映していることがわかった。

この実験系では元々の Sox2遺伝子は存在していることから、おそらくSox2遺伝子がエンハンサーの作用範囲を制限しているのではと著者らは考えた。そこで元々のSox2遺伝子を除去する実験を行い、同じようにトランスポゾンを飛ばして調べると、今度は TAD の内側であればほとんど同じような遺伝子発現が見られることがわかった。即ち、エンハンサーは同じプロモーターであってもSox2遺伝子に結合しているプロモーターを好んで選んでいることがわかる。

この原因を探るため、Sox2遺伝子のコーディング領域をトランスポゾンに加える実験を行うと、完全ではないが第一エクソンの 1kb を加えると、よりエンハンサーに好まれるようになることを示している。

結果は以上で、実験系が面白いこと、現在考えられているエンハンサーとプロモーターの関係とは異なる結果が示されたことなど、面白い研究だが、まだまだ現象論にとどまっているのは残念だ。

現在生成 AI にゲノムを学習させる試みが進んでいるが、本当にノンコーディング領域に書き込まれたこのようなコンテクストまでキャッチできるようになるのか、行く末を是非見てみたい。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月19日 脊髄損傷後の自律神経過反射の治療戦略の開発(9月17日 Nature オンライン掲載論文)

2025年9月19日
SNSシェア

6番胸椎より上の脊髄損傷の患者さんで、便秘による腸の拡張や排尿困難による膀胱拡張などにより急に血圧が上昇し、場合によっては脳出血、心ブロック、脳浮腫などが起こって命に関わる状態を自律神経過反射と呼ばれている。脊髄損傷により脳からの抑制が外れた状態で、交感神経が過剰に活性化され、おそらく通常では起こらない回路形成の結果起こると考えられているが、根本的な治療はない。

今日紹介する脊髄損傷研究のメッカと言っていいローザンヌ工科大学 (EPFL) とカルガリー大学からの論文は、自律神経過反射の起こるメカニズムをモデルマウスで解析し、治療戦略を示した研究で、EPFLの脊損グループのポテンシャルの高さに驚かされる。タイトルは「A neuronal architecture underlying autonomic dysreflexia(自律神経過反射の背景にある神経構造)」で、9月17日 Nature にオンライン掲載された。

このグループにいつも感動するのは、脊髄損傷患者さんのあらゆるニーズに応えるべく、様々な問題を取り上げ基礎から臨床までのシームレスな研究を行っている点だ。さらに、リハビリテーションや硬膜外刺激による歩行実現など、治療を企業として進めていく明確な方向性も一貫している。

そんな EPFL が重要問題として選んだのが自律神経過反射で、生命の危険性を伴うという教科書的理解にとどまらず、個の論文でも実際の患者さんへのアンケート調査を行い、四肢麻痺の8割の患者さんで自律神経過反射と診断され、治療が困難であることを確認している。

研究はマウス疾患モデルを作成するところから始まり、頸椎脊損のあとで大腸を機械的に拡張させることで血圧が急速に上がるモデルを完成させている。この機械刺激を加えたとき、過反射までの過程で興奮する脊髄神経を調べ、大腸から求心神経が投射する腰椎部分と、血圧上昇に関わ下部胸椎が強く反応していることをまず明らかにする。

次にどの神経細胞が最も活動しているのかを single cell レベルの転写解析で探索し、四肢の運動にも関わる Vsx2 を発現したグルタミン酸作動性神経であることを発見する。脊損マウスで腰椎及び下部胸椎のVsx2神経を刺激すると血圧が上昇するし、抑えると自律神経過反射を抑えることができる。実際脊髄損傷によって、腰椎のVsx2神経が下部胸椎の Vsx2神経へ投射ができてしまっていることを確認している。即ち、この異常投射が自律神経過反射の原因になる。

次に腸管から腰椎Vsx2神経への投射、さらに下部胸椎Vsx2神経から血圧を上昇させる交感神経刺激までの神経回路を完全に明らかにしている。即ち腸管の刺激を受ける Calca 陽性脊髄後根にある神経が、腰椎Vsx2神経へ異常投射を起こし、このVsx2神経が脊損で神経回路の抑制が効かなくなった結果、下部胸椎のVsx2神経とシナプスを形成する。この神経は元々交感神経と結合しており血圧の調節に関わるが、脊髄損傷による異常な神経投射網の形成により、身体の下部の様々な刺激を下部胸椎のVsx2神経まで伝える回路ができてしまい、異常反射に繋がることがわかった。

次は治療戦略だが、現在行われている低血圧を抑えるための上部胸椎硬膜外刺激に注目し、この刺激が本来の下部胸椎Vsx2神経を調節する神経回路を強めることで、腰椎からの下部胸椎への投射を競合的に抑えることを明らかにしている。

あとは、低血圧発作を抑制するために硬膜外刺激治験を受けている患者さんで、刺激が血圧以外の自律神経過反射を抑制することを示し、今後脊髄損傷後の早い段階から刺激を行うことで、異常回路を抑制できる可能性を示唆している。

脊髄損傷患者さんの生活を一つでも安全快適にするための研究努力に頭が下がる。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月18日 GLP-1 受容体アゴニスト論文3題(9月16日 Nature Medicine オンライン掲載論文他)

2025年9月18日
SNSシェア

トランプ政権は米国の医療費を削減するため製薬業界に様々な圧力を加えている。この動きの一つの標的が GLP-1 受容体アゴニスト (GRA) の肥満への処方で、昨日 FDA はイーライリリーとノボノルディスクとともにオンライン診療大手に対して、減量薬の不都合な使用に対する警告書を送ったことが報道されていた。同じ問題は我が国にも存在し、コロナ以降解禁されたオンライン診療は GRA処方をドル箱にしている。

この問題がどこまで広がるのかを調べた調査が8月9日 Rand 研究所から発表されているが(https://www.rand.org/pubs/research_reports/RRA4153-1.html)、Rand 研究所が維持している3000人弱のアメリカ人を代表するポピュレーションに GRA治療を受けたことがあるかを聴いたところ、答えた成人の11%が GRA治療を受けた経験があり、特に50-64歳では女性で20%、男性で16.8%が使用経験ありと答えている。肥満によって生活習慣病になるより手っ取り早い治療と言えるのだが、この広がりを見ると驚く。

実際 GRA が糖尿病患者さんの心血管障害を予防する効果が大きいことを示す治験結果は GRA処方の最も重要な根拠だが、GRA前に代謝改善目的で行われた胃バイパス手術と比べると、第一世代の GRA の効果は多くの点で劣っていることを示す観察研究がクリーブランドクリニックから9月16日 Nature Medicine にオンライン発表された。タイトルは「Macrovascular and microvascular outcomes of metabolic surgery versus GLP-1 receptor agonists in patients with diabetes and obesity(胃バイパス手術あるいは GLP-1 受容体アゴニストの肥満を伴う糖尿病患者さんの大血管、症血管レベルの影響)

この研究はあくまでも観察研究で、また最近使われるようになった GLP-1/GIP 受容体アゴニストに効果がある薬剤ではなく、セマグルタイドのような第一世代の GRA と胃バイパス手術の効果を肥満と糖尿病を持つ患者さんで調べている。さすがに手術対象になるのはかなりの肥満で BMI の平均が46、一方 GRA投与群は BMI 平均が38と、最初から肥満で言えば胃バイパス手術を受けた人の方が重症と言える。ただ、A1cでは7.5対7.6と変わりはない。

胃バイパス手術群1657人、GRA 群2275人を7年以上に渡って追跡したのがこの研究だが、生存期間、大きな心血管イベント発生、腎障害発生、網膜症発生のいずれで見ても胃バイパス手術を受けた患者さんの方がリスクが低いことが示されている。

他にも様々な指標で比べているが、割愛する。無作為化しない観察研究であること、そして減量効果が大きい GLP-1/GIP 受容体アゴニストが含まれていないことから、GRA の心血管系への効果を否定する結果ではないと思う。

実際第二世代の GLP-1/GIP 受容体アゴニストの減量治療への期待は大きい。最後に紹介するケンブリッジ大学からの論文は、遺伝的肥満の中で最も多いメラノコルチン受容体 (MC4R) 機能不全による肥満をGRAで治療できることを示した研究で、8月26日 Nature Medicine にオンライン掲載された。タイトルは「Tirzepatide leads to weight reduction in people with obesity due to MC4R deficiency(TirzepatideはMC4R不全による肥満の体重減少を誘導できる)」だ。

メラノコルチン受容体は傍室核にある食欲を抑える神経細胞に発現されており、食欲調節の大きな経路のうちレプチン・メラノコルチン経路に属している。MC4R に GLP-1 からのシグナルが入ることも知られているが、MC4R 以外の刺激回路が存在することから MC4R変異を持っていたとしても GLP-1 経路が肥満防止に作用する可能性は高い。

この研究では MC4R 変異による肥満と、それ以外の肥満を選んでリリーの Tirzepatide を投与し、60週にわたって追跡し、MC4R 変異を持っていても、他の肥満と全く同様に Tirzepatide は大きな減量効果を示したという結果だ。

即ち、GLP-1/GIP は MC4R から完全に独立した経路で作用していることがわかる。以上、GRAフィーバーはまだまだ続く。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月17日 オキシトシンと乳児のボーカルシグナル(9月11日号 Science 掲載論文)

2025年9月17日
SNSシェア

子供の呼びかけに応じて授乳をしたり、子供を舐めたりする母親の行動にオキシトシンが重要な役割を演じていることは、動物だけでなく人間の研究でも確認されているが、乳児側の反応とオキシトシンの関係を調べる実験は難しい。人では母親とのスキンシップにより乳児のオキシトシンが上昇する事は知られているが、オキシトシンの乳児行動への直接作用についての研究はほとんど見たことがない。

今日紹介するイスラエル ワイズマン研究所からの論文は15日齢の乳児の脳操作という課題にチャレンジして、オキシトシンの乳児の行動に対する作用を明らかにした研究で、9月11日号の Science に掲載された。タイトルは「Oxytocin signaling regulates maternally directed behavior during early life(オキシトシンシグナルは乳児の母親に向けられた行動を調節している)」だ。

この研究では15日齢のマウスを母親から離したあと、元のケージに戻して最終的に母親の乳首にたどり着くまでの行動とその間の超音波域の発生パターンを精密に記録して、乳児が発する母親へのシグナルを特定している。この時、母親側の行動を制限するため、母親は麻酔で眠らせて、乳児が独自に母乳を探すよう仕向けている。

結果だが、母親のケージに戻ると、特定のパターンの発声でシグナルを送リ始め、乳首にたどり着くとき少し違った発声パターンに代わり、その後発声は消失する事を明らかにする。

次はこの行動にオキシトシン分泌神経が関わっているか調べる必要がある。このため、まず親から引き離した時に活動する神経を調べ、オキシトシン産生神経が活動することを確認したあと、オキシトシン産生神経活動を脳に挿入したファイバースコープを介してリアルタイムで計測し、母親から離れたことにより神経が興奮することを確認している。大人のマウスでは普通に行われる実験だが、15日齢でこれを行うのは簡単ではないと思う。いずれにせよ15日齢では既にオキシトシン神経は形成され、働いていることがわかった。

次はオキシトシン神経をブロックしたときに起こる行動変化を、まず化合物を注射して特異的に神経を抑制する遺伝学的方法を用いて調べている。結果だが、まず乳首に到達する時間が早くなる。発声は抑えられないが、パターンが変わる事から、影響が見られる。

ただ、この結果、特に乳首までの時間が短くなることが説明できないと感じて、これはセンシティブな乳児に腹腔注射を行ったせいではないかと考え、光遺伝学的にオキシトシン神経を抑える実験にチャレンジしている。

15日齢を大人で行う光刺激装置を付けるのは至難の業だったのだろう。代わりに、まだ頭蓋が薄いことを利用して、頭蓋を露出したマウスに、脳まで届く赤い光を照射して光遺伝学的にオキシトシン神経を抑制する方法を開発している。具体的には、マウスを母親から離したところで赤色光照射し、そのあとで母親のケージに戻したときの行動変化を調べている。結果だが、化合物注射と異なり、乳首にたどり着くまでの行動はほとんど変わらないが、分離されたとき、そして乳首に到達したときの発声が特にメスで強く抑えられる事を明らかにしている。

以上が結果で、化合物注射による抑制と、光遺伝学的抑制の結果が大きく違うことから、乳児の実験の難しさがうかがわれる。結論としては、子供から母親へのシグナルを発するコミュニケーションにオキシトシンが関わるということになる。できれば刺激実験もほしかったが、難しいのだろう。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月16日 食を促す脳回路(9月10日Cellオンライン掲載論文)

2025年9月16日
SNSシェア

悪液質や神経性食欲不全の患者さんは、おいしいとわかっていても食欲が起こらない。この欲望を食べるという行動につなげる脳回路は、様々な摂食障害の治療開発にとって最も重要だ。

今日紹介するコロンビア大学からの論文は甘み刺激を食行動に換える脳回路を明らかにした研究で、9月10日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「A brain center that controls consummatory responses(消費反応をコントロールする脳センター)」だ。

ちょっと脱線するがこの研究を行った Charles Zuker 研究室は味覚に関わる脳回路研究の第一人者で以前も論文を紹介したことがある( https://aasj.jp/news/watch/14819 )。このZukerさんの名前にcを加えると、Zuckerになるので、だじゃれではないがZukerさんの論文を読む度に、甘み研究に最も適した人だと一人で納得していた。

馬鹿話はここまでにして、この研究は甘み刺激に興奮する扁桃体の興奮が、甘い水を飲み続ける行動に繋がる回路を探索し、最終的に中脳から脳幹にある分界条床核細胞に投射していることがわかる。そしてこの投射が甘みを感じたときの消費行動を誘導する。この時、甘み→消費行動という1対1の関係ではなく、例えばおなかが空いているときに甘み刺激による消費行動はよりアグレッシブになる。

このような特定の刺激による消費行動は甘みだけではない。生命に必要な塩分の刺激は消費行動を誘導する。この時同じように塩分を制限しておくと、消費行動はよりアグレッシブになる。

これらの刺激に応じた分界条床核の反応を単一細胞レベルで調べると、甘みに反応する細胞と、塩分に反応する細胞は全く異なることがわかる。即ち、それぞれの味覚に応じた特異的な回路が形成されていることがわかる。次に、空腹によって活動が促進される時の細胞反応を調べると、甘みに反応する回路とは別の細胞が反応に参加して、全体で反応が高まることがわかる。即ち、内部の要求性からの回路が刺激回路と合体して高い反応を示す。面白いのは、飢餓などによる内部からの刺激は、甘みと塩分で全く異なることで、甘みの記憶や、塩分の記憶が内部の欲求として別々にコードされ、それぞれの欲求が分界条床核の別々の細胞を刺激し、消費行動のレベルを調節していることになる。

分界条床核細胞は視床下部に投射し消費行動を誘導するが、この回路に特異性はなく、これが抑えられると甘みであれ、塩分であれ消費行動が抑えられる。即ち、刺激や刺激の統合は分界条床核の中で計算されるが、行動のレベルが決まるとあとは全く同じ行動が起こることがわかる。

この分界条床核から視床下部につながる回路を抑制すると消費行動が低下した結果体重が低下する。一方、シスプラチンを注射して悪液質を誘導して、この回路を刺激すると消費行動が維持され、体重減少を抑えることができる。

最も面白いのは今はやりのGLP-1受容体アゴニストもこの回路を刺激する点で、この回路の刺激や抑制により、摂食障害を治療する可能性が示された。ZukerさんもZuckerと名前を変えれば、大きな話題になるような気がする。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月15日 ガンによる悪液質による人間の筋肉の変化(9月10日 Nature オンライン掲載論文)

2025年9月15日
SNSシェア

ガンの末期ではいわゆる激やせが進み、筋肉や脂肪が失われる。一見ガンによって栄養が吸収されてしまっているように見えるが、多くの場合ガンが分泌する様々な因子により筋肉や脂肪代謝が変化し、これが痩せる原因になっている。痩せる原因として、患者さんの食欲が落ちて食べない事が最も重要な原因になるが、食べていないにもかかわらず現在やせ薬として使われているGLP-1の血中濃度が上がっている。このように通常では考えられない代謝の変化の原因と結果を正確に調べていくことが悪液質治療の鍵で、このブログでも何度も紹介してきたように様々な研究が進んでいる。ただ病気の性質上人間のデータは意外と少ない。

今日紹介するカナダ・アルベルタ大学からの論文は、人間の腹直筋をバイオプシーして採取し、悪液質により起こる変化を徹底的に調べた研究で、910日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Molecular subtypes of human skeletal muscle in cancer cachexia(ガンによる悪液質で見られる人間の骨格筋のサブタイプを分子生物学的に分類する)」だ。

この研究では、悪液質が検出される前にリスクの高い膵臓ガンや大腸ガンの患者さんを選んで経過を観察。体重が急速に低下する悪液質が起こったと診断された時にすぐに腹直筋のバイオプシーを行い、mRNAだけでなく、全てのタイプのRNAを網羅的に調べ、筋肉に起こる変化を定義している点で、最初から計画性を持って患者さんを選んでいる点が重要だ。

RNAにはmRNA、tRNA、long noncoding RNA、microRNA、piwiRNA、 small noncoding RNA が存在するが、これらをまとめてAIに学習させ、筋肉のRNA発現から患者さんを分別すると、1型と2型に分かれ、1型がほぼ悪液質発症と一致する。そして50%の方が亡くなる時点を調べると、1型に分類される患者さんで50%短い。また、RNAの発現だけでなく、形態的にも筋繊維と核の位置が正常とは大きく異なり線維の中央に位置するケースが多い。

この研究では、AIを使った相関性の解析から、悪液質によって上昇する long noncoding RNA が大きなハブとなって、遺伝子発現を調節する microRNA を包括的に調整することで悪液質型の筋肉が形成されることを示している。ただ、これは極めて理論的で実際に証明されているわけではない。

最後に mRNA で筋肉に起こる様々な変化を解析しており、主なものを示すと、

  • 炎症とピロトーシスを誘導する様々なシステムが活性化されている。
  • 筋肉と神経間のシナプス形成に関わる遺伝子が大きく変化し、筋肉の機能を低下させている。
  • 外来の化学物質を排除する異種生体物質代謝が上昇している。
  • ES細胞などで発現が高い Sox2 や Nanog の発現が見られる。

などなどで、特に新しい結果や、明確に治療対象になる変化は示されていないと思う。例えば、神経筋接合の低下を刺激により抑えられるかなど考えつく可能性もあるが、悪液質の難しさを再確認した論文だ。この論文をそのまま外挿すると、ハブとして悪液質を誘導するのに大きな貢献をしていると考えられる long noncoding RNA を標的にした治療の開発が重要ということになるが、筋肉の数は多く、筋肉を標的とする治療は簡単ではないだろう。結局悪液質は、ガンを治療することが一番手っ取り早そうだ。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月14日 小細胞性肺ガンは神経とシナプス形成することで増殖を促進する(9月10日 Nature オンライン掲載論文)

2025年9月14日
SNSシェア

これまで乳ガンやグリオーマが神経細胞により増殖促進することを示す論文を紹介してきたが、今日紹介するドイツケルン大学からの論文は小細胞性肺ガンも神経細胞とシナプス形成して増殖に役立てることを示した研究で、9月14日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Functional synapses between neurons and small cell lung cancer(ニューロンと小細胞性肺ガンの間に形成される機能的シナプス)」だ (同じ時に、ほぼ同じ内容の論文がスタンフォード大学から発表されている)。

さて、小細胞性肺ガンは増殖促進に関わるドライバー遺伝子変異が見つからないという特徴があり標的治療が難しい。この特徴を生かした細胞周期を詳しく調べて、細胞周期チェックポイントをブロックできるサイクリンA/B阻害剤を開発したプロの仕事を先日紹介した(https://aasj.jp/news/watch/27361)。

この論文でも小細胞性肺ガンを誘導するとき、トランスポゾンがゲノム中に飛び込んで、遺伝子の抑制や活性化を誘導するシステムを利用し、小細胞性肺ガン発生に関わる遺伝子を探索している。この研究では追求されていないが、上に紹介した論文を裏書きするように、S期以降の細胞周期に関わる遺伝子の発現が高い。一方この論文ではこれとは全く異なるグループで神経シナプス形成分子の発現上昇に着目した。

そこで患者さんからのガンを調べると、やはり同じように神経シナプス機能に関わる遺伝子の発現が上昇している。即ち、ガン細胞が神経細胞とシナプス形成する可能性が考えられる。そこで、試験管内培養系、あるいはガンを移植した脳で組織学的に調べると、グルタミン酸トランスポーターを発現している細胞を中心に、明確なシナプス形成が見られる。実験的に発ガンを誘導する系では、ガン発生の初期からシナプスが形成されている。

あとは形態学的だけでなく、ガンとニューロン間に機能的シナプスが形成されていることを、まず狂犬病ウイルスを利用した逆行性にシナプス接合している神経を特定する方法を用いて確認したあと、試験管内及び脳に移植したガンのパッチクランプ法を用いた細胞膜興奮性の解析から、神経細胞と主にグルタミン酸作動性のシナプス形成が起こっていることを示している。

最後の問題は、シナプス形成によりガンの増殖が影響されるかだが、試験管内でのビデオ観察などを駆使して、神経とシナプス形成しているガン細胞の増殖が亢進していることを、またこの増殖をシナプスでの神経伝達をブロックすることで抑制できることを示している。

これが正しいと、当然グルタミン酸作動性シナプスを抑制することでガンの増殖を抑えることが予想される。移植ガンを用いて、最も発現が高いGRM8特異的阻害剤DCPG及び、特異性の低いグルタミン酸作動性シナプス阻害剤Riluzoleを用いて治療効果を調べている。

DCPGと比べてRiluzoleの方が効果が高いことから、おそらく様々なグルタミン酸受容体によるシナプスがガンの増殖を助けていると思えるが、DCPGも一定の効果が見られる。そして、一般的に使われる抗ガン剤と組み合わせると、動物の延命効果が高いことも示している。

同じ時に発表されたスタンフォード大学からの研究では、発ガン過程で肺に投射している迷走神経とのシナプス形成が発ガンに必須であることが示されており、決して脳転移だけでなく、末梢で小細胞性肺ガンは神経を利用していることが示されている。

以上ガンと神経との関係がまた一つ明らかにされた。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月13日 皮膚の制御性T細胞は痛みも抑える(9月5日 Science Immunology 掲載論文)

2025年9月13日
SNSシェア

制御性T細胞(Treg)の多様な機能についてはずいぶん紹介してきたが、今日紹介するスローンケッタリングガン研究所からの論文は、Treg が我々のストレス反応を制御するためになんとうまくできているのだろうと感心させられる研究で、9月5日 Science Immunology に掲載された。タイトルは「Enkephalin-producing regulatory T cells in the skin restrain local inflammation through control of nociception(皮膚でエンケファリンを産生する制御性T細胞は局所炎症を痛みを抑えて制御する)」だ。

要するにTregが皮膚で痛みを抑える働きをしているという驚くべき話だが、この論文を読んで今年の4月に、雌マウスだけで髄膜に存在する Treg が脳で直接神経に働きかけて痛みを抑えていることを示すもう一つの論文が発表されていることを知った(Midavaine et al., Science 388, 96–104 (2025))。

おそらく Treg が神経に直接働く可能性について研究が行われていたのだろう。この研究でも最初から皮膚の Foxp3 を発現する Treg が神経の近くに存在することを示すところから始めている。そのあと、全身で Treg 特異的にジフテリアトキシンで殺す操作を行い、Treg を急性に除去すると、皮膚の痛み刺激に対する反応が高まること、またその反応を脊髄後根の感覚神経の興奮として検出できることを示している。髄膜と異なり、オスメスの差はほとんど無い。

Midavaine の論文でも扱われているが、一部の Treg は麻薬物質であるエンケファリンを合成することも知られていた。この研究では最初から Treg のエンケファリンに着目し、データベースサーチや、プロエンケファリン遺伝子発現細胞のラベリング実験から、一部の Treg が確かに痛みを抑えるエンケファリンを産生していることを明らかにしている。

そして、プロエンケファリン遺伝子を Treg 特異的にノックアウトする実験から、Treg が産生するエンケファリンが後根感覚神経の興奮を直接抑えていることを示している。ただ、全ての Treg がエンケファリンを発現するわけではなく、皮膚では半分ぐらいの細胞で発現が見られるが、リンパ節や血液では全く見られない。

以上のことから、皮膚では Treg がエンケファリンを発現しやすい環境ができていることになる。そこで試験管内の刺激実験から、Treg がエンケファリンを発現する条件を調べていくと、抗原受容体を介する刺激とともに、グルココルチコイドの刺激が必要であることがわかる。グルココルチコイドはストレスホルモンだが、皮膚ケラチノサイトでも合成が見られる。以上のことから、ストレス反応が揃うと、Treg はエンケファリンを発現するようになり、本来の抗炎症性作用に加えて、直接感覚神経に働いて痛みを抑えている。さらに、Treg は神経細胞から分泌されるケモカインに対する受容体も持っており、これにより神経端末に引き寄せられることもわかった。

重要なのはエンケファリンが痛みを取るだけではない点で、プロエンケファリンが発現できないと炎症が高まる。これは神経興奮が痛みだけでなく、様々な炎症メディエータを介して炎症を亢進させるサイクルに組み込まれている事を意味する。

以上が結果で、Treg の機能の多様性が広がるのも驚きだが、全て炎症を抑える方向に向いているのも感心する。そして皮膚炎症に対してデキサメサゾンを塗るのは、炎症を抑えるだけでなく Treg のエンケファリン産生を高めている効果もあるのかと、新しい勉強ができた気分だ。

カテゴリ:論文ウォッチ
2025年10月
« 9月  
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031