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1月24日 生殖補助医療による出産時の異常(1月14日The Lancetオンライン掲載論文)

2019年1月24日

ノーベル賞に輝いたエドワード博士が最初に生殖補助医療による出産、すなわちいわゆる試験管ベイビーに成功したのは、今から40年前だが、その数は増え続け、わが国では全出生数の5%を超えているのではないだろうか。 5%というと、もはや当たり前の治療になったということだが、それでも周産期にさまざまな障害が起こる統計が多く、お母さんにもこのリスクは告げた上での治療だと思う。実際、卵を凍結したり、受精時期が遅れたり、あるいはホルモン療法が行われたりと、生殖補助医療には様々な余分な介入が必要で、これらの操作自体に、ある程度のリスクがあるのは当然だと思ってしまう。

今日紹介するロンドン政治経済科学大学からの論文は、フィンランドの出生記録と様々な投薬記録から、生殖補助医療による出産を特定し、特にその中で自然妊娠と生殖補助による妊娠の両方を経験した家族について調査して、生殖補助医療自体のリスクを調べようとした研究で1月14日The Lancetにオンライン出版された。タイトルは「Medically assisted reproduction and birth outcomes: a within-family analysis using Finnish population registers (生殖補助医療と出産:フィンランドの人口登録を用いた家族内での分析)」だ。

これまでの研究と同じで、生殖補助医療を受けた胎児の出産と、正常胎児の出産を単純に比べると、年齢などを補正しても、確かに出生児体重は60.5g程度低く、さらに早産の危険性が2.15%上昇する。

しかし自然妊娠による出産と生殖補助医療による出産の両方を経験した家族で、出産時の体重を比べてみると、自然妊娠による子供より前に生殖補助医療による子供を出産した場合は、出生児体重が163g低下し、早産率が上がるが、自然妊娠で生まれた子供の後に、もう一人生殖補助医療で出産した場合は、生殖補助医療による妊娠で生まれた子供の体重が50g多い事がわかった。

すなわち、同じ母親から生まれた子供で比較した場合、早く生まれた方が出生時体重が低いということは、胚の操作自体は、少なくとも出生時の体重や早産には影響がないことを強く示唆している。

5%が生殖補助医療という状況では、もややリスクを云々しても仕方がないが、今回の結果は、少なくとも周産期の問題については、ほぼ安心できることを強く示唆している。単純な統計だけで満足せず、大規模データから同じ母親からの子供を比較しようと考えた著者らに脱帽だ。

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