2月7日:睡眠中に単語を覚えられるか(2月18日号Current Biology掲載論文)
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2月7日:睡眠中に単語を覚えられるか(2月18日号Current Biology掲載論文)

2019年2月7日
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この歳になって何かを学ぶということは、知りたいという自発的な意思に基づいているため、不思議と頭に入る。最近は学生の時に苦手だった、歴史的事実の年号すら覚えている自分に気がついて驚いてしまう。絶対的記憶力の落ちた現在の経験から振り返ってみると、学生の時のただ覚えるためにだけの勉強がいかに無駄なことかよくわかる。とはいえ、受験を控えた多くの学生さんたちは、一つでも頭に詰め込んでおきたいと思っているだろう。そんな人間の夢は、寝ている間に新しいことを覚える方法の開発ではないだろうか。ちょっと気になって「寝ている間に覚える」でウェッブを調べると、たしかに英単語をテープで流しながら寝ることで単語を覚えることができるというサイトがトップに来ている。これに対し、次に現れる有名学習企業のサイトでは、寝ている間に覚えようなどバカなことを考えずに、しっかり睡眠をとるように勧めている。

脳のことを知ると、どちらの意見にも一理あることがわかる。すなわち、睡眠は記憶を確定するために極めて重要で、実際寝ている時にさまざまな短期記憶を復習している。この時の脳波を調べると、slow wave sleep(SWS)と呼ばれるゆっくりしたリズムを刻んでおり、例えば夢を見たり、あるいは夢遊状態もSWSが特徴で、意識はないものの障害物を避けて歩けることから、覚醒時と同じような脳状態にあると考えられる。

今日紹介するスイス・ベルン大学からの論文はこの寝ているとも、起きているとも言える状態をうまく使って寝ている間に単語を覚えられないか調べた論文で2月18日号のCurrent Biologyに掲載された。タイトルは「Implicit Vocabulary Learning during Sleep Is Bound to Slow-Wave Peaks (睡眠中のはっきりとした語彙の学習はSlow Waveのピークに連結している)」だ。

この研究も新しい外国語の単語を学ぶという設定で記憶の成立を調べる課題を設計している。単語を覚えるという課題は、どの国でも共通のようだ。ただ、現実の外国語単語を使うと、個人差が出る心配があるので、全く存在しない単語を作っている。例えばコルク栓=aryl、 家=toferといった具合だ。そして、SWSの時を狙って、1秒感覚で、コルクという訳と、arylという新しい単語を聞かせ、その時に誘導される脳はの波形と単語を聞かせたタイミングを記録しておく。その後、覚醒時にarylやtoferが靴箱より大きいかどうかを聞く。新しい単語の意味を覚えておれば、aryl(コルク)は靴箱より小さく、tofer(家)は靴箱より大きいと答える。

ではこの課題で、本当に寝ている間に単語を覚えることができるのか?

結果だが、SWS時に音を聞くともちろん脳は反応して興奮波形が現れる。そのあともう一度覚える単語を聞くことになるが、この2回目に単語を聞いた時のの脳波がslow waveのピークと一致した時、正解率が高く、 逆に単語を聞いた時が波形の底に一致してしまうと正解率が落ちるという結果だ。

要するに、コルク vs aryl (あるいは逆でもいい)というセットを聞く時、2回目の刺激がslow waveのピークに来た時、寝ていても新しい単語を覚えることができるという結果だ。もしこれが正しければ、極めて敏感な脳波計を用いて、slow wave ピークの上がり始めを感知して単語を流すという機械を作れば、おそらく寝ている間の単語を覚えるという夢を実現できるかもしれないという話だ。

面白いし、本当かどうかさらに追求して欲しいとは思うが、年寄からのアドバイスは「そこまでして物を覚える必要はない」だ。

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2月6日 デニソーワ洞窟の歴史を探る(Natureオンライン掲載論文)

2019年2月6日
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現代の人類史で、アルタイ山脈に存在しているデニソーワ洞窟ほど有名な場所はないだろう。まず我々ホモ・サピエンスと重なって同時期に生息した人類はネアンデルタール人だけだと考えられていたとき、デニソーワから発見された小さな指の骨のDNAから、両者とはまったく異なる人類のDNAが見つかり、デニソーワ人と名付けられた。この洞窟はもともとネアンデルタール人が住んでいた洞窟として知られており、この結果は時代は違っても、同じ洞窟を異なる人類が使っていたことを意味する。そして、昨年8月、このコラムで紹介したように(http://aasj.jp/news/watch/8831)、この洞窟からデニソーワ人の父と、ネアンデルタール人の母の間に生まれた子供の骨が見つかり、実際にこの洞窟周辺で、両者が密接な関係を持っていたことが証明された。

このようなエキサイティングなこれまでの研究を受け、この洞窟の地層とそれから出土する骨や石器を徹底的に分析して、この洞窟に暮らしていた人類の歴史を明らかにしようとしたのが今日紹介する論文で、オーストラリアのWollongong大学からNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Timing of archaic hominin occupation of Denisova Cave in southern Siberia (南シベリアのデニソーワ洞窟を占拠していた古代人)」だ。

まず、デニソーワ人の骨格標本がないため、デニソーワ人の骨と特定するためにはDNA検査が必要になる。こうして確認されるデニソーワ人の骨は4本見つかっている。この研究では、これらの骨が見つかった地層の年代を、ネアンデルタール人の骨が見つかる地層と様々な方法で分析し、時代を特定しようとする研究だ。詳細は省くが、実に様々な年代測定法を用いて、それぞれの骨が存在する地層の年代測定を行っている。比較的暖かい時代(20万年前)にデニソーワ人がこの洞窟に住み着く。その後地球の温度が下がり始める15万年前ぐらいからネアンデルタール人が移動して来て、この時両者の交雑が起こったと考えられる。デニソーワの父とネアンデルタールの母から生まれた子供はまさにこの時代の後期に属している。そして再度地球が暖かくなると同時に、この場所からネアンデルタール人が消え、またデニソーワ人がこの洞窟の住民となり、5万年まで続くというシナリオが示された。

同じNatureには、全く同じ課題を追いかけたMax Planck人類歴史科学研究所からの論文が同時掲載されており、利用した方法などは異なるが、ほぼ同じ結論に到達している。

この洞窟での人類史から、アルタイ山脈で寒い気候になるとネアンデルタール人の活動が活発になり、一方デニソーワ人は暖かいときにこの場所に帰ってくるというパターンが明らかになったように思う。すなわち、現代人が最終的に勝利する前は、気候がそれぞれの民族の優位性を決める重要な要素だったことを伺わせる。個人的感想だが、デニソーワ人のゲノム流入が一番多いのがポリネシア人であることを考えると、なんとなくこの結果も理解できる。今後、ポリネシアの人たちに残るデニソーワゲノムの内容が詳しく調べられるのだろう。その意味で、最初の論文がオーストラリアから発表されているのは、将来への意気込みを感じさせる。

何れにせよ、この洞窟はこれまでも多くの研究者が寄ってたかって、微に入り細に入り検討を加えており、謎の多いデニソーワ人だけでなく、異なる人類の交流史が明らかにされる予感がする。

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2月5日 実験進化学は可能か?(2月1日号Science掲載論文)

2019年2月5日
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環境が変わることで新しい形質が選ばれる例として最も有名なのが工業暗化として知られている、産業革命で工業が発達し、街が煤けてくると、蛾の羽の色が黒くなったという話だ。もちろん当時、その背景にある遺伝子の変化を調べようなど考えも及ばなかったと思うが、2016年6月にこのコラムで紹介したように(http://aasj.jp/news/watch/5337)、この原因がトランスポゾンの挿入による進化であることが明らかにされている。このように、ゲノムレベルの多様性と環境による選択を共に追跡できる条件が整ってきたことは確かで、進化を実験的に研究したいという人たちには大きな可能性がひらけていると言えるのではないだろうか。

今日紹介するカナダモントリオールのマクギル大学からの論文は、マウスの毛色の自然選択過程で選ばれるゲノムについて実験的にアプローチした研究で2月1日号のScienceに掲載された。タイトルは「Linking a mutation to survival in wild mice(野生マウスで突然変異を生存に結びつける)」だ。

この研究ではネブラスカ州の砂地と、緑地で野生マウスを野生のまま飼育した時、生存に適した毛色とそれをコードするゲノムとの関係を調べている。砂地は淡い茶色をしており、一方それ以外の場所の土地は黒っぽい。それぞれの土地からまず481匹の野生マウスを集め、土地に適応しているかどうか実地に試すため、50メーター四方のネズミが逃げないように囲ったフィールドを用意し、各土地から集めたマウスを放し飼いにし、なんと14ヶ月観察する。すると、近くに生息する主にフクロウに襲われるため、土地の色から浮き上がったネズミは淘汰されると予想される。実際予想通り、黒い土地のネズミを砂地で飼っていると14ヶ月目にはほとんどのネズミが鳥の餌になる。同じように、砂地のネズミを黒い土に離した場合も同じ結果に終わる。

実際それぞれの土地にどのようなネズミが生き残れるか調べると、砂地には背中の色が薄いネズミ、黒い土には背中の黒いネズミが生き残ることが確認でき、工業暗化と同じことが起こっている。ただこのネズミの場合、すべて茶色のトーンの違いなので、この色をコントロールするAgouti遺伝子の周りの遺伝子変化の結果だと決めて、この遺伝子の前後の塩基配列を詳しく調べ、それぞれの土地で生き残ったネズミで300−500のSNPを特定している。すなわち多様化が怒っている。そして、少なくとも黒い土の上での選択は自然選択により、この多様化した遺伝子の中から特定のSNPが選択されているという可能性が高いことを計算している。

次に、それぞれのSNPから自然選択されたことが間違いない7種類のSNPを特定し、この7種類が連鎖している3種類のブロックを形成していること、そのうちの一つはAgoutiのコーディング領域のserineが欠落する変異であることを確認する。

最後に、直接Agoutiタンパク質の構造が関わる変異を見出しせので、このalleleに絞って毛色の変化との関わりを調べると、このSNPを持つほど背中の毛色が薄くなることを確認している。同じSNPをマウスに導入して毛色を調べると、確かに色が明るくなる。変異の効果をこのように確認した上で、黒い土の上で生き残ったネズミのゲノムを調べると、serineの欠損したSNPを持つネズミが黒い土の上では強く選択を受け、殺されていることを示している。

結果は以上で、短いタイムスケールの中で、明らかに特定の遺伝子の多様性の結果が環境により選ばれるという進化過程を、予測し確認できることを示すことに成功している。おそらく、野生でも同じことが起こって、現在の状態になっているのだろうと納得した。

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2月4日 統合失調症の異常回路を直す(1月30日American Journal of Psychiatryオンライン掲載論文)

2019年2月4日
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ガンの免疫療法が最近急に注目を集めるようになった最大の理由は、ガンに対する免疫過程を正確にモニターし、効果の予測が可能な科学的な治療を行うことができるようになったからだ。実際、私が大学に勤めている頃は、ガンに対する免疫がいつも成立しているかどうかすら確認することは簡単ではなかった。

当時の免疫学と同じような状況が、統合失調症など多くの精神疾患にも当てはまるような気がする。精神疾患の背景には、大脳の神経ネットワークの異常があると考えられるが、様々な症状と、脳の神経ネットワークの因果関係を特定することは、様々な脳内の画像解析法が進歩した現在でも簡単ではない。また、「脳内ネットワークの異常と症状の因果性が確定したとしても、現在ではその回路を繋ぎ直すことは難しい。・・・」と考えていたが、なんとそれができることを示した論文がハーバード大学のベス・イスラエル病院からAmerican Journal of Psychiatry オンライン版に発表された。タイトルは「Cerebellar-Prefrontal Network Connectivity and Negative Symptoms in Schizophrenia (小脳と前頭前皮質のネットワーク結合性と統合失調症のネガティブ症状)」だ。

この研究が注目したのは統合失調症の症状の中でもnegative symptomsと呼ばれる、普通の人にはあっても患者さんで失われている性質だ。例えば、感情的な反応、モチベーション、社会性、自発的動き、などの喪失はすべてnegative symptomsだ。このような喪失は、それぞれの過程に必要な脳内ネットワークの欠損によると考えるのが一番自然だ。すなわち、神経結合が低下しているため、行動が低下すると考える。

この研究ではまず44人の統合失調症患者さんの機能MRIを撮影し、negative syndromeと相関が高い脳内の結合を探索し、特に右脳の背側外側前頭前皮質と小脳との結合が低下するとnegative symptomが高まることを確認する。

これまでこのような研究は何度も行われていると思うが、negative symptomに焦点を当てたことがこの研究の特徴だ。さらに、症状との相関を確認した後、この研究ではなんと頭蓋の外から電磁波を照射して特定の場所の神経結合を高めることがわかっているTMSを一日2回、5日間照射することで、この結合を高めて、症状を変化させられないか調べている。

データを見ると、照射した7人のうち、3−4人で結合の明確な改善が見られ、また一人では悪化が見られている。症状についてみると結合が変わらなかった一人を含め、5人でnegative symptomが改善している。また、脳全体を調べて、症状改善が基本的には前頭前皮質と小脳との結合の改善の結果だと結論している。

結果は以上だが、本当なら特定のネットワークの異常を治すことで症状を改善するという因果的な治療が可能であることを示した画期的な研究のように思う。もちろん、統合失調症の全症状をもたらす多くの脳の変化については複雑で、この研究では全く扱うことができていない。また、今回の結果も統合失調症に特異的かどうかは分からない。従って、統合失調症の治療としては、今後も薬剤により全体の活動を調整する方針を変えるまでにはいかないだろう。しかし、神経管の結合を標的とする治療が可能であることを示せた点で、何か新しい時代を感じさせられる。同じように、自閉症など発達期の障害がうまく治療できないか、期待している。

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2月3日 脳波から聞いている声を再現する(1月29日Scientific Reports掲載論文)

2019年2月3日
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脳はすべてのことを神経細胞が興奮するパターンで表象している。このパターンを読み解けば、今脳に入っている現実の刺激や、これから取ろうとしている行動を知ることができる。これをうまく利用したのが、昨年このコラムで紹介した、脊髄神経を硬膜の外から刺激して脊損の患者さんが歩けるようにした新しい治療法(http://aasj.jp/news/watch/9166)で、特に失われた脳機能を補う方法の開発には極めて重要な分野だ。

今日紹介するコロンビア大学心と脳の研究所からの論文は、人の声を聞いている時の脳活動を分析して、その活動パターンから聞いている音を再現しようとする研究で1月29日号のScientific Reportsに掲載された。タイトルは、「Towards reconstructing intelligible speech from the human auditory cortex (人間の聴覚野の活動からはっきりとした言葉を再構成するために)」だ。

この研究は、いわゆる機械学習研究とはなにかを知るには最適の研究だと思うが、このためのメインのコンピューターアルゴリズムの設計については私は全く理解できていないので、気になる人は是非原文を読んでほしい。Scientific Reportsはオープンアクセスの雑誌だ。

さて、同じような試みはこれまで行われており、私も2ー3の総説を目にしたことがある。ただ、ほとんどの研究は音を聞いている脳活動を頭蓋の外から記録する脳波や脳磁図を用いていた。この研究の最大の特徴は、音が最初に感じられる聴覚野に直接クラスター電極を埋め込んだ、てんかんの患者さんを用いて脳の活動を拾っている点で、これにより一段高い精度で脳活動を記録することができる。

その上で、この記録したパターンのどの情報を処理すべきか、機械学習の際に用いる回帰分析モデルにはなにを使うべきかなど、また、処理したあと声として再現するためどの波長の音を重ね合わすかなど、一つ一つ検討して、線形回帰モデルではない(当たり前と思うが)、deep neural networkモデルを用いて脳活動を処理し、それをVocoderと呼ばれる方法で再現することで、かなり正確で、さまざまな音素も重なった声を再現することに成功している。正門表の比較があるが、一見したところその一致率は高い。

その上で、脳活動も長い周期の波と、短い周期の波で表彰される両方の要素を統合した方がよく、学習を重ねれば重ねるほど精度は上がり、脳活動を記録する電極も多いほどいいことをしめし、この再現がまさにAI、機械学習過程そのものであることを示している。

結果は以上で、要するに今機械学習分野を席巻しているdeep neural networkを用いて機械学習を繰り返せば、聞いている音を再現することが可能であることを示している。詳細はわからないにしても、何の不思議もない話だが、声という視覚よりは少ない情報だが、十分複雑な情報を処理するという点では、将来性が感じられる研究だと思う。

いずれにせよ、処理のためのフレームワークは明らかになったので、今度は直接脳記録ではない脳波などの脳活動の記録から、どこまで同じ精度の声を再現できるのかなど技術的な見当が必要になるだろう。

もし自分がこの分野で働くとしたら、おそらく聞いてきた声を後で思い出す時の聴覚野の活動から声が再現できるかをゴールにするなと思いながら、機械学習の将来に夢を馳せている。

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2月2日 単純な発想でガン免疫を高める治療(1月30日Science Translational Medicine掲載論文)

2019年2月2日
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チェックポイント治療は、ガンに対する免疫がすでに活性化されているという条件で、その反応にブレーキがかからないようにする治療だ。ただ、全ての人がガンに対する免疫を誘導できているわけではないため、全く効果が見られない人も多い。このためバイオマーカーを用いて効果を予想する方法の開発が進められているが、逆に言うとこの手法はチェックポイント治療という点だけに絞れば患者さんの選別と切り捨てを意味する。これに対し患者さんを選別することなく、ガン局所に免疫刺激剤を注射してガンに対する免疫を高める様々な方法の開発が進んでおり、その成功例をちょうど一年前にこのコラムで紹介した(ガン免疫を誘発する戦略としてのNK細胞 http://aasj.jp/news/watch/8038)。

 今日紹介するのは米国のベンチャー企業Modernaが1月30日発行のScience Translational Medicineに発表した論文で、ガン免疫を高めるという意味では同じ方向の研究だが、必要な免疫活性物質そのものではなく、そのmRNAをリポソームで包んでガン局所に注射する方法の前臨床研究だ。タイトルは「Durable anticancer immunity from intratumoral administration of IL-23, IL-36g, and OX40L mRNAs(ガン内に注射した IL23、IL-36γ、OX40をコードするmRNAは長期間続くガン免疫を誘導する)」だ。

mRNAを直接細胞に導入してタンパク質を作らせるデリバリー手段の開発は多くの企業で進められているが、この会社はアミノリピッドを外郭に用いるナノ粒子を用いる独自の方法を開発している。ただ、この研究ではこの技術が優れているのかどうかは分からない。すなわち、基本的にはどのmRNAを投与すればガン免疫が高まるかを調べており、最終的にOX40,IL-36γ,IL−23の3種類のmRNAを一緒に詰め込んだ場合に最も高い効果が得られることを、マウスにガンを移植する実験系で見つけている。

このmRNAメンバーを見ると、OX40LでT細胞の増殖生存を高め、IL23とIL36で眼の周りに強い炎症を誘導するという戦略だ。これまで、ガンの周りの炎症は一般的に直りを悪くすると考えられてきたが、この組み合わせでは特に自然免疫が高まる仕組みになっており、OX40Lだけでは根治できないガンも、動物実験とはいえ根治できている。面白いのは、この効果がCD8陽性細胞に完全に依存している点で、CD4細胞を除去しても効果がある。とはいえ、このmRNAを注射すると、CD8,CD4のみならず様々なタイプのT細胞が集っており、相乗効果を表すのかもしれない。何れにせよ、調べられたガンに関しては、効果が絶大と言える。

もう一つ重要な点は、これらのmRNAをガンの中に注射する時に効果を発揮する点で、転移巣がいくつかあるという状況でも、一つの癌組織にこのカクテルを注射するだけで、他の転移巣も縮小させることができる。

またこの方法だけでは完全に根治できないガンについてもチェックポイント治療と組み合わせることで、腫瘍を完全に縮小することができる。すなわち、ガン免疫の入り口を高めてチェックポイント治療の難点を解決している。

色々な解析が行われているが、省略していいだろう。要するに、mRNAをナノ粒子につめ込んでガン局所に注射すれば、サイトカインを注射するより手軽に、しかも長期に渡ってガン免疫を刺激出来、現在のチェックポイント治療の問題を解決できるという結論だ。

論文にわざわざ第1相試験が終わったことを書いているので、この論文も第2相に向けてお金を集めるための布石かもしれない。しかし、mRNAを直接注射する方法は、この論文を読まなくとも、ガン局所の免疫を高める目的には極めて有望だと個人的にも思ってきたので、ぜひうまくいってほしいと思う。

1990年前後、サイトカイン研究分野では多くのベンチャー企業がトップジャーナルに論文を発表するのが当たり前だった。その中から世界のトップ10にリストされる企業が育っている。癌の免疫分野では同じような現象が今起こっていることをつくづく感じる。

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2月1日:IgA ではなくIgA分泌細胞が自己免疫性脳炎を抑える(1月24日号Cell掲載論文)

2019年2月1日
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IgAは、抗原に対してB細胞が反応するとき、粘膜組織に多い特別な樹状細胞から分泌されるBAFFを含む様々な因子の作用によりIgAへとクラススウィッチを起こしたB細胞がプラズマ細胞へ分化して分泌される、J鎖で2量体になった交代分子だ。これはそのままだと体内にとどまるが、粘膜上皮や乳腺上皮の分泌タンパク質が結合することで、粘膜から体腔へと分泌される。従って、IgAは粘膜免疫のために進化した特殊なシステムで、一般炎症に関わることはほぼないと考えてきた。

今日紹介するトロント大学からの論文はIgAではなくIgAを作るB細胞やプラズマ細胞が脳内での炎症を抑える働きがあることを示す意外な研究で、1月24日号のCellに掲載された。タイトルは「Recirculating Intestinal IgA-Producing Cells Regulate Neuroinflammation via IL-10(体内を再循環している腸管のIgA 産生細胞はIL10を介して神経炎症を調節する)」だ。

IgAだけではなく、IgGも大量に抗体を産生する細胞が体内循環して他の場所に移ることは少ないと考えれれている。したがって、粘膜組織で形成されるIgA産生細胞が体の他の場所で見つかることはないはずなのに、炎症や腫瘍組織にIgA産生細胞が見つかることがあるらしい。

この研究の目的は、自己免疫性脳炎(EAE)をモデルに、IgA産生細胞が脳に移動するのか、脳での機能は何か、について明らかにすることだ。まず、EAEを起こしたマウスでIgA産生細胞が脳や脊髄に移動してくることを確認する。そして、様々な方法を駆使してこの細胞が腸管内から体内循環を経て脳に移動すること、特異性にかかわらず腸管内で形成されたIgA産生細胞は炎症部位に移動すること、そしてEAEでは例えば腸内で誘導されたロタウイルスに対するIgA産生細胞や腸内の細菌叢によって誘導されたIgA産生細胞が脳内へ移行することを示している。またその結果、腸管内のIgA産生細胞が減少し、IgAに結合するバクテリアの数も低下することを示している。

次に、わざわざIgA産生細胞のような最終分化段階の細胞が炎症部位に移行する意味を調べるために、IgA産生細胞の移植実験を行うと、EAEを抑える効果がある。また、単一のバクテリアが感染した実験系で、腸内細菌が感染してIgAが腸内で分泌される場合、同じ細胞は脳内へ移行しEAEを抑えることを示している。そして、このIgA産生細胞の炎症抑制効果は、IgAをノックアウトした細胞でも見られることから、腸管内でIgA産生細胞が分化する過程で受ける刺激が揃っておれば、IgAが分泌できなくとも炎症を抑制する細胞へと分化できることを示している。

最後にこの分子メカニズムを調べ、IgA 産生細胞が炎症を抑制する過程にはIL-10が強く関わっていること、また炎症を抑制する細胞への分化には予想通りIgA産生細胞への分化を誘導するのに必要なBAFFシグナルが必須であることを示している。面白いことに、BAFFを異常発現させたマウスでは、最初からEAEの発症は抑えられており、これはIgA産生細胞が過剰に誘導されるためであることも示している。

以上の結果は、IgAではなく、IgA分泌細胞へと分化させるシグナルの副作用として、炎症を抑制する細胞ができて、それが脳内に移行して、脳内の自己免疫病を抑えるというシナリオを示している。意外性だけが際立った結果で、本当かという気持ちは抑えられないが、もし正しければ多発性硬化症などの細胞治療が可能になるはずだ。実際に人間でどうなのかを示す研究を進めて欲しい。

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1月31日 高血圧の遺伝素因の特定(Nature Genetics 1月号掲載論文)

2019年1月31日
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私が当時科学技術会議議長の井村先生からミレニアムプロジェクトの発生・再生をまとめろと言われ、CDBの構想を進めている頃、同じ様に重点項目として推進されたのが、医科研の中村さんを中心にまとめられたゲノムプロジェクトで、病気と関係する遺伝子を疾患を持った人と、正常人のゲノムの比較から明らかにすべく、多くの研究者が集まっていた。他人の庭は美しく見えるというが、当時このプロジェクトから多くの疾患ゲノム研究がNature Geneticsをはじめとするトップジャーナルに掲載されていたのを思い出す。しかし、当時の面影は日本のゲノム研究から消えて久しいのではないだろうか。もちろんこれはわが国だけではなく、この数年全ゲノム解読やエクソームなど多くの新しい話題が増えて、疾患のGWAS研究について従来のような研究が発表されることは少なくなった。

ところが最近新たにGWAS研究と言われる疾患と関連する遺伝子を探索する論文が増えてきたように感じる。ただ今度は、100万人近い対象のゲノムを調べるGWAS研究で、Nature Geneticsについていえば、ほぼ毎回のように多くの論文が発表されるようになった。この背景にある一つの象徴が、UKバイオバンクで、なんと50万人規模の対象の様々なデータが集められており、これまで発見できなかった病気と相関する稀な遺伝子変異も含め、新しいことがわかると期待できるからだ。実際、この1ヶ月だけでも、レジリエンス(ストレスからの回復力)、幸せな気分、慢性鼻炎、高血圧など、病気に限らず多くの人間の性質についてのGWAS研究がこのバンクを使って発表されている。

今日紹介するバンダービルト大学を中心とする国際コンソーシアムからの論文はUKバイオバンクに匹敵する米国の退役軍人のバイオバンクと、UKバイオバンクの両方からデータを集め、高血圧のゲノムを再検討した研究でNature Genetics1月号に掲載されている。タイトルは「Trans-ethnic association study of blood pressure determinants in over 750,000 individuals (血圧の決定因子に関する75万人規模の連関研究)」だ。

このような大規模なGWAS研究が可能になった一つの要因は、異なるゲノムデータベースを合体させ、100万近い人のゲノムデータが得られることで、これがさらに新しいインフォーマティックスの主砲開発を促し、これまでの研究の中心だった頻度の多いcommon variantだけでなく、稀な変異についても検出できるようになったことが大きい。このために、既存のGWASデータいくつか集め、100万人規模のメタアナリシスを行うことが可能になった。

この研究では退役軍人とUKバイオバンクを合わせて75万人規模の遺伝子と血圧を調べ、高血圧関連遺伝子を探索している。

もちろんこれまで以上にcommon variantが見つかる。全部で505種類見つかり、そのうち収縮期血圧の高さに関わる遺伝子216、拡張期血圧の高さに関わる遺伝子76存在していた。このうち、304は既に相関があるとして報告されているが、大規模に調べることでなんと201種類の新しいSNPが明らかになった。

次に、これまで発見できていないタンパク質をコーディングしているエクソン上のrare variantを探索し、血圧や、高血圧とは逆相関する脈圧に関わる分子などを特定している。

特定されたSNPが見られた遺伝子についても詳しく書かれているが、興味がある場合は直接論文を見て欲しい。特定されたSNPが本当に血圧に関わるかを特定し、そのメカニズムを追求できるかが、GWAS研究の最大の問題だ。注目されるのは、この研究では今流行りのバーコードを用いたsingle cell transcriptome、腎臓から細胞を分離し、single cell 遺伝子発現をバーコードを用いて検討を行っている点で、特定した遺伝子の半分以上がこの方法で腎臓の尿細管に発現している事を確認し、尿細管が血圧を決める重要な細胞であることを示唆している。

他にも、薬剤との相関、分子の関連性を見るための経路解析、さらには、高血圧を様々な形質に分解して、それぞれとSNPとの相関を調べるPheWAS法などでSNPの意味を理解できることを示している。こうして見つかったSNPを一個一個丹念に突き詰めることで、間違い無く新しい治療標的が見えるはずだ。カルシウム拮抗剤やアンギオテンシン阻害剤などが出た後、なかなか新しいメカニズムの降圧剤は開発できていないことを考えると、このような大規模ゲノム研究は、その重要性がますます高まるように思っている。その意味で、生理学を研究する人たちには、重要なSNPリストができたと言える。

おそらくお分かりのように、今日この論文を紹介した最大の理由は、ミレニアムゲノム研究を経て20年、このように大規模データが揃うようになり、GWAS研究の新しい波が始まっているという実感を伝える為だ。しかし、わが国のこの分野はどうなっているのか、論文を読んでいるだけでは全く表面に見えてこない。

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1月30日 アルツハイマー病は歯周病菌が原因?(1月23日号Science Advances掲載論文)

2019年1月30日
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昨日に続いてアルツハイマー病(AD)の治療についての論文を紹介する。昨日も、ADはさまざまな角度から研究が進んでおり、意外な標的が見つかる可能性が高いと述べたが、今日紹介するCortexymeと呼ばれる創薬ベンチャーからの論文は、意外性が大きすぎる論文だ。もし示された結果が確認され、仮説が正しいとすると、この分野がひっくり返ると行ってもいい話で、Science Advancesではなく、Scienceが掲載したはずだ。すなわち、AD病の原因が歯周病菌という大胆な結論が提出された論文だ。タイトルは「Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains: Evidence for disease causation and treatment with small-molecule inhibitors (アルツハイマー病の脳内に存在するP.gingivalis:病気の原因を示す証拠と小分子を用いた治療)」だ。

繰り返すが、実験結果はしっかりしている。まず、ADの脳組織と正常の脳組織をそれぞれ50近く集め、歯周病菌P.gingivalisが分泌するタンパク分解酵素gingipainに対する抗体で調べると、AD患者さんは圧倒的に高値を示す。実際logスケールで比べられており、その差がはっきりする。さらに組織学的に、海馬のニューロンおよびアストロサイト内にgingipainが存在することが示される。そして、組織からgingipainを免疫沈降で集められることも示している。

以上の結果は、ADの脳にはgingipainが高い値で存在しているが、正常の脳でも低いが、ほとんどの例で同じように存在することを示しており、歯周病菌が普通に脳に侵入していることを示唆している。実際、歯周病菌自体の存在をPCRで調べると、ADだけでなく、ほとんどの正常人でも見つけることができる。ただ、先にも述べたように、ADでの値は1桁高い。

Gingipainは蛋白質分解酵素だが、Tauタンパク質がgingipainで切断されることを示している。ADの一つの引き金は神経細胞内にリン酸化Tauが沈殿することだが、切断によリン酸化が起こることから、細胞内に入ったgingipainがTauタンパク質を切断、リン酸化を誘導し、細胞内で沈殿させることを示している。また、この切断サイトも特定するという念の入れようだ。

その上で、培養神経細胞に対するP.gingivalisの細胞障害性実験系で、彼らが開発しているCor286、Cor271と名付けたgingipain阻害剤が細胞毒性を緩和すること、さらに生きたマウスの脳内での細胞毒性も軽減させることを示している。

ではもう一つのAD原因因子アミロイドβタンパク質はどのような役割があるのか当然気になるが、この研究ではP gingivalisの感染により脳内に短いAβタンパク質が誘導されることを示している。そして、gingipainを欠損したP gingivalisではこのような反応が起こらない。そして、このAβの切断はP gingivalisに対する防御反応であることを示唆している。

すなわち、AβはADの原因というより、歯周病菌感染の結果で、ADの発症はTauの沈殿により細胞が失われると考えている。最後に、Cor286,Cor271投与によって、脳内でのP gingivalisの感染を防いで、神経を守れることを示している。この結果から、さらに効果の強い化合物Cor388を合成し、最終的にはこの薬剤に集中していいる。

さすが力のあるベンチャー企業でしっかり実験しているように思えるが、気になるところも多くある。まず使っている実験系で、これでAD過程が研究できているのか、あるいはただの脳の炎症と言えるのか、Tauのリン酸化が示されていないこと、アミロイドプラークが示されていないことなど、ちょっと疑わしい。さらに、実験評価に多くの指標が手を替え品を替え使われているので、本当の評価ができずまだまだ確定できないと思う。ただ、魅力的な話で、Cor388の治験により私の懸念が払拭できればいい。

ちょっとウェッブで調べてみたら、Cor388は第1相の試験が終わって、特に毒性がなかったようで第2相のリクルートが始まっている。すでに80億円以上のファンドマネーを集めているようで、第2相も進めるだろう。驚くことに、ファイザーも絡んでいるようで、まんざらガセネタでもなさそうだと思える。さてどうなるか、今後に注目したい。

カテゴリ:論文ウォッチ

1月29日 医師の責任でアルツハイマー病のラパマイシン治験を進めるべき(1月23日号Science Translational Medicine掲載意見)

2019年1月29日
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アルツハイマー病(AD)に対する治療法の開発は高齢化する先進国にとって、最も緊急の課題になっている。これまで、βアミロイドタンパク質に対する抗体、ワクチン、アミロイドの切断を阻害するBACE阻害剤など様々な臨床治験が行われてきたが、結果ははかばかしくない。幸い、アルツハイマー病の基礎研究は着実に進展しており、これら以外にも多くの治療標的が見つかる可能性は高い。さらに、臨床治験の結果を判断する指標も、より正確に、短期で判断できるものが開発されると期待される。実際、もし新しい治療薬剤が開発できれば、世界中の患者数から考え、製薬会社はまちがいなく大きな利潤を得ることができる。従って、どんなにこれまでが失敗続きでも必ず研究を続けられると期待できる。

当然研究が進むと様々なADの治療標的分子が明らかにされると思うが、もし既存の安価な薬剤の中にそれが見つかった時、治験をおこなってくれる研究者や医師はいるのかという疑問が湧く。特に、ジェネリック薬品がある場合は、製薬企業がその主体になることは期待できない。実際このような例が、mTORと呼ばれている多様な作用を持つ分子に対する阻害剤ラパマイシンで、ADにも効果がある可能性があるにもかかわらず、全く臨床試験が行われていない。この状況を打破しようと、ワシントン大学やテキサス大学などの研究者が、ラパマイシン治験の重要性を訴えたのが、今日紹介する論文で1月23日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Rapamycin and Alzheimer’s disease: Time for a clinical trial? (ラパマイシンとアルツハイマー病:治験に進む時が来た?)」だ。意見論文なので、特に実験ということはないので、彼らの主張をそのまま紹介する。

ADも一種の老化過程: AD発症と経過に関わる最も強いリスクファクターは年齢で、55歳と85歳の間でADのリスクは700倍増加する。従って、もっとリスクとしての年齢の役割を研究すべきだし、年齢によるリスクを軽減する方法を開発するべき。

なぜラパマイシン :多くの論文が、ラパマイシンに老化を遅らせる働きがあることを証明している。これはラパマイシンの標的mTORが増殖や代謝など様々な機能を持っており、これを抑えることで寿命が伸びることが知られている。さらに、動物ADモデルでラパマイシンがアミロイドβの蓄積やTauタンパク質の沈殿を抑えることも示されている。またmTORを阻害することでADによる記憶が回復するという研究もある。

「治験失敗が恐ろしい?」:ラパマイシンはこれまでもガンや移植に利用されており、副作用についてもよくわかっているのに、どうして治験をしないのか専門家に聞くと、なんと「失敗が恐ろしい」という声が返ってきた。そしてその背景に、これまで前臨床はクリアしたにも関わらず多くの治験の失敗があるADというトラウマがあることに著者らは気づいて驚き、できればより簡単に効果評価が可能な指標を開発し、失敗を恐れずできるだけ多くの治験を行う体制を作る必要があると示唆している。

ラパマイシン前臨床試験はその第一歩:その意味で、動物を使ったADに対する効果を調べたラパマイシンの前臨床研究結果は十分行われており、臨床研究へ移行して問題はないので、これを医学界全体で進めるべきと提案している。

ラパマイシンに問題はないのか?:ラパマイシンは現在抗がん剤として用いられているが、当然様々な副作用がある。しかし、高齢者に対してもその程度は低く、5mg/weekでは副作用は大幅に軽減される。また長期使用については、移植後の免疫抑制で何年も使用されていることから、十分合理的知見を計画できる。

医師主導で治験は行われる:ラパマイシンにはすでにジェネリックも存在し、製薬企業に治験を行う動機付けは少ない。したがって、公的な助成も積極的に使った、治験がおこなわれるべきだ。

以上が著者らの意見で、熱意が伝わってくる。おそらく、多くのAD患者さんも間違いなく協力されるように思う。論文を見ていると、ラパマイシン以外にも様々な既存の薬剤の効果が前臨床で確かめられている。全世界あげて、すべての可能性がチャレンジされることを期待したい。

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