え?と驚いてしまった。眠りはなぜ必要かについては、長い間議論されているが、はっきりとした答えがないらしい。睡眠を完全に抑制すると、実験動物は死ぬらしいから、眠りは生命に必須の機能だ。さて、今日紹介するのは、Rochester Medical Centerのグループがscience紙に掲載した”Sleep drives metablite clearance from the adult brain (睡眠は大人の脳からの代謝産物の除去を行っている)“という論文だ。睡眠は脳の中の老廃物を脳外へ運び出すのに重要だという極めて単純な結果だ。実験は、くも膜下に留置したカニューレを通して蛍光物質を脳脊髄液に注入し、生きたマウスの脳内でどう拡がるかを2光子共焦点顕微鏡という、生体内での出来事を見ることが出来る顕微鏡で調べた研究だ。どうしてこのような単純な研究が行われていなかったのかは驚きだが、結果は明瞭だ。起きているときは脳脊髄液内での対流は全くないが、寝ると急速に上昇し、老廃物が除去されるという話だ。この対流の上昇は、細胞外領域が睡眠時に拡張することに起因しており、自然睡眠だろうと、麻酔で寝ようと、あるいはアドレナリン受容体抑制で寝ようと、結果はまったく同じで、ともかく寝ることが重要らしい。結論としては、寝ることで、脳内の細胞外領域が広がり、対流が盛んになる結果、老廃物が脳内から除去されるという極めてわかりやすい話だ。本当に、この対流で老廃物が除去されるのか、眠りの程度との関係など、細部については検討を要するだろう。しかし、この解釈が正しいとすると、よく寝ることは重要だ。おそらく、報道する意味のある面白い仕事だ。最近眠りの量が減った私にとっては少し心配になる論文だった。
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