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7月1日:悲しいレポート(Biological Psychiatryオンライン版掲載論文)

2014年7月1日
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我が国でも子供への暴力、育児拒否、低所得など子供を取り巻く問題は深刻だ。この様な環境による子供への影響を私たちは精神的問題として考えがちだが、脳は生後も長期にわたって成長を続ける。当然脳自体の発達障害につながる可能性は大きい。この問題を調べたのが今日紹介するウィスコンシン大学からの研究で、Biological Psychiatryオンライン版に掲載された。タイトルは「Behavior Problems After Early Life Stress: Contributions of the Hippocampus and Amygdala (幼児期のストレスに起因する行動異常、海馬と扁桃体の寄与)」だ。研究では幼児期に様々なストレスにさらされた128人の子供の脳の扁桃体と海馬の大きさを12歳前後の時点でMRIを使って調べている。128人は3つのグループに分けられている。第一グループは親の育児拒否のため施設で生活をしている子供達、低所得過程に育った子供達、そして家庭内暴力の犠牲になっていた子供達だ。対照には中流階級に育った子供が選ばれている。どの程度のストレスにさらされたのかは聞き取り調査で点数化し、また検査時の行動異常の有無についても調べている。結果は予想通りだが悲しい結論だ。まず、右の扁桃体へのストレスの影響はほとんどないが、ストレスを受けた子供達の左の扁桃体の大きさは対照と比べると大きく低下している。特に低所得環境で育った子供達に低下が激しい。海馬になるとストレス群は全て左右で発達が低下している。ストレスを点数化して扁桃体、海馬の大きさに対してプロットすると、スコアが高いほど発達が阻害されているのが明らかになった。また、この大きさは検査時の問題行動とも相関すると言う結果だ。個人的に驚いたのは、暴力や育児拒否より、低所得が続くことの方が発達障害が著しいことだ。ストレスにより戻ることのない脳の発達障害が起こることがわかる。海馬は記憶に関わり、扁桃体は社会性に関わる脳領域だ。この結果から予想される将来の社会コストはおそらく大きいはずだ。是非政府も全ての子供の健全な育成を図るため、育児拒否、家庭内暴力防止だけでななく、安心して子育てが出来る所得を保証する政策をとることが、将来の社会コスト抑制への道であることを理解して欲しいと期待する。
カテゴリ:論文ウォッチ
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