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7月13日:ウズラの第3の目(Current Biology7月7日号掲載論文)

2014年7月13日
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現役を退いてから医学・生物学全般に「物知り」になろうと努力しているが、知らないことは沢山ある。日照時間に合わせた毎日のリズムを作るために鳥類では松果体に光を感じる細胞があることは知っていたが、これとは別に季節を感じるための光受容体を他の場所に持っていて、甲状腺刺激ホルモンを介して生殖行動を支配しているらしい。このことは1935年から知られているようで、当時の研究ではガチョウの頭を黒い布で覆って光が感知されていることを確認している。他にも、雀の頭皮に墨を注射すると言う想像力に満ちた研究も行われており、この分野では当たり前のことだったようだ。今日紹介する論文は名古屋大学の吉村さん達の研究で、この反応にこれまで同定されていた短波長の光に感受性のある色素OPN5を発現している細胞が関わっていることを証明した研究で、Current Biology7月号に掲載された。この号の表紙は、国会図書館から借りて来たウズラの美しい日本画を使っており、人目を引く。タイトルは「Intrinsic photosensitivity of a deep brain photoreceptor(脳幹部の光受容体はそれ自身で光感受性を持つ)」だ。元々吉村さん達はOPN5に注目して研究を続けていたようだ。この研究はその延長で、OPN5を発現している細胞が光に反応する細胞か、この分子が光による甲状腺刺激ホルモン分泌に関わるかを調べた研究だ。先ずパッチクランプと呼ばれる一個の神経細胞の活動を調べる方法で、確かに光に反応して興奮することを明らかした上で、次にOPN5の遺伝子発現を局所的に押さえると、光刺激に反応した甲状腺刺激ホルモンの分泌が少し低下することを示している。結果はこれだけの短い論文だが、季節の移り変わりがはっきりした日本のウズラについての仕事だと思うと、勉強をした気持ちになる。しかし本当に光が届くのかと心配にもなるが、よく考えればどんな鳥も頭は小さい。十分届くのだろう。6月22日黒いカラスと灰色のカラスの話を紹介した。1935年の実験で黒い布がこの細胞の活性を抑制するなら、この細胞の活性をこの2種類のカラスで調べれば面白いだろうな?季節のない赤道付近の鳥は?などと連想は果てしない。
カテゴリ:論文ウォッチ
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