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4月30日:ガラパゴスフィンチのくちばし(4月22日号Science掲載論文)

2016年4月30日
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    完全に隔離された島々からなるガラパゴス諸島での種の多様性についての観察は、ダーウィンが多様性の生成と自然選択を組み合わせた進化論を着想するのに大きく貢献したとされている。特に種によって食物の異なるフィンチが、食物に適応したくちばしの大きさや形態を持っていることは、自然選択が進む過程を直接観察できる可能性を秘めている。そのため、現在も多くの研究者がフィンチの研究を続けており、ゲノムについても解析が進んでいる。
   今日紹介するスウェーデン・ウメオ大学を中心とする国際チームからの論文は実際にくちばしの形を決める遺伝子が自然選択の対象になることを示した研究で4月22日号のScienceに掲載された。タイトルは「A beak size locus in Darwin’s finches facilitated character displacement during a drought (ダーウィンフィンチのくちばしのサイズを決めている一つの遺伝子座が干ばつによる形質変化を促進する)」だ。
   この研究の目的は明快で、フィンチのくちばしの形を決める遺伝子座が自然条件により実際に選択されることを示すことだ。このため、ガラパゴス諸島の中でも小さな島の一つダフネ島に生息する陸上フィンチに焦点を当てて研究している。なぜダフネ島のフィンチが選ばれたのかだが、この島のフィンチのクチバシの形が干ばつにより選択の対象になることは、1970年代の研究で一度示されている。また、2004年から2005年にかけてダフネ島はもう一度大きな干ばつに見舞われ、この時の死亡した個体と、生き残った個体の資料が残っている。このため、この時保存された資料の遺伝子解析から、クチバシの形を決める遺伝子が本当に自然選択の対象になっていることを示すことができる。
  この研究では、まず体の大きさやクチバシの大きさの異なる6種類のフィンチのゲノムを10羽づつ解読し、HMGA2遺伝子の多型がクチバシの大きさと最も強く相関することを明らかにしている。次にこの遺伝子型を、2004−2005年にかけて起こった干ばつで生き残った個体と、死亡した個体について調べ、大きなくちばしと相関する多型を持った個体ほど、干ばつによって自然選択されていることを示している。具体的にデータを紹介すると、大きなくちばしと相関する遺伝型をL、小さい方をSとすると、LL型フィンチは死亡14、生存6、LS型は死亡15、生存17、そしてSS型は死亡5、生存14という結果だ。
   この一枚の表を作るために、60羽の異なるフィンチのゲノム解析を行ったという執念の仕事だ。おそらく著者らはこの結果を得て大興奮しただろう。環境条件が、形質だけでなく、その背景にある遺伝型を選択したことを目撃した記念すべき瞬間だ。    前回のガラパゴス旅行ではダフネ島を訪問できなかったが、次回は是非見に行きたい。
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