ファスティングはカロリー制限だけでなく、内分泌系のバランスなどに影響することで、特に体の代謝を変化させ、健康維持に貢献することは広く知られるようになってきた。しかし、今日紹介するマウントサイナイ・アイカーン医科大学からの論文は、24時間ファスティングでの白血球の動態を調べ、ファステイングに潜む意外なリスクを示した研究で、2月23日 Immunity にオンライン掲載された。タイトルは「Monocytes re-enter the bone marrow during fasting and alter the host response to infection(単核球はファステイング時に骨髄に戻り感染に対する反応を変化させる)」だ。
この研究では24時間ファスティングを行ったとき、各組織に存在する血球が変化するかどうかを、末梢血を含む16組織について調べている。この実験を着想したことがこの研究のハイライトで、この結果 Ly-6 の発現が高い単核球だけが、ファスティング後4時間で、末梢血から骨髄へと移行することが最も目立った変化であることがわかる。
ファスティングにより単球に起こる変化を調べると血球の移動を調節する CXCR4 が上昇しており、またこの上昇はファスティングによるストレスでステロイドホルモン分泌される結果であることをさまざまなノックアウトマウスを用いて明らかにしている。
以上の結果は、ファスティングという異常事態に備えて、単球を骨髄にしまっておくといったイメージになるが、24時間後に食事にありつくと新しく作られた単球と共に末梢血へ遊離されることを明らかにしている。
異なる時間に増殖していた単球を標識することで、造られたばかりの単球と、老化した単球を区別する実験を行うと、末梢の単球を骨髄に待機させているファスティング中には増殖が低下する結果、食物にありついた後末梢血に遊離される単球は老化した単球の割合が上昇することが分かった。
最後に、24時間ファスティングによりおこった末梢血中の単球の変化の影響を、炎症と感染について調べ、老化した単球が増えることで組織中の炎症が起こりやすくなること、また逆に緑膿菌に対する抵抗性が低下することを明らかにしている。
以上が結果で、「ファスティングは、ストレス反応を介してフレッシュな単球増殖を抑え、古い単球を使い回すメカニズムを発動させるため、感染への抵抗性を低下させるリスクがある」というのが結論になる。
この結果を認めた上で、代謝改善のためのファスティングにとって重要な今後の研究は、ファスティングによるストレスの原因を明らかにし、これを防止しながらファスティングを行う方法の開発だろう。もし血中グルコース低下だけがストレス反応の引き金なら、リスクを回避するのは難しそうだ。しかし、食べれないという精神的なものが大きいなら、対策は可能だ。ファスティングに効果があるなら、ぜひファスティングによるストレスを抑える方法も開発してほしい。