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8月7日 気になった臨床研究(8月3日号 The New England Journal of Medicine 掲載論文、他)

2023年8月7日
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今日は気になった臨床研究を2編紹介する。まず最初はハーバード大学から8月3日号The New England Journal of Medicineに掲載された論文で、胸腺摘出によりその後の免疫機能が低下することを示した研究だ。

様々な疾患で胸腺摘出術を受けた1420人の患者さんと、胸腺摘出術以外の手術を受けた患者さん6021人を追跡し、死亡率、ガンの発生率、発生したガンの種類、とともにT細胞産生や、血中サイトカインを調べている。

これまで成人になると胸腺は萎縮するので、胸腺がなくても大きな問題はないと考えられてきたが、胸腺摘出効果ははっきりしており、相対的死亡リスクは2倍以上高まる。勿論胸腺摘出が必要だった背景の疾患があり、その影響も存在するが、それを補正してもリスクは高い。

これが胸腺でのT細胞産生低下である可能性は、ガンのリスクがやはり2倍程度上昇していることからもわかる。驚くことに、胸腺摘出を受けた人では罹患するガンの種類が極めて多様になっており、正常免疫システム維持が、成人後も必要であることがわかる。

最後に、新しいT細胞のリクルートについても見ており、予想通り強い低下が認められる。このように、免疫機能は低下していても、逆に慢性炎症が高まっていることも確認されている。

以上、萎縮すると言っても、成人後の胸腺は重要だ。

次は米国ブラウン大学を中心とするグループが8月2日 JAMA Open に掲載した論文で米国で Covid-19mRNA ワクチンを受けた65歳以上の高齢者について、モデルナのワクチンとファイザー/ビオンテックワクチンの効果と副作用を比べた大規模調査だ。

米国メディケア保険に加入しており、ワクチンを接種した300万人づつの調査だが、まず高齢者については、モデルナワクチンの方が、効果(接種後の感染が14%ビオンテックより低い)が高い。

副作用については、これまでモデルナの方が一回に投与するmRNAの量も多く、腕の痛みとか発熱などはモデルナの方が高いとされていたと思う。この研究では、血栓など重篤な副作用について焦点を当て比較しているが、例えば血栓は10万人に2人、ギランバレー症候群で100万人に3人と、重篤な副作用の頻度は少ないとはいえ、統計学的にはモデルナの方が重篤な副作用は低かった。

最初様々な評判があったため、どうしても高齢者にはファイザー/ビオンテックが用いられる傾向があったと思うが、その点も加味すると、もう少し差はなくなるかも知れない。

いずれにせよ、mRNAワクチンなら同じと思わず、しっかりと事後調査を行うことの重要性がわかる。

カテゴリ:論文ウォッチ
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