12月11日 Covid-19  死亡例の包括的解析(11月27日 米国アカデミー紀要オンライン掲載論文)
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12月11日 Covid-19 死亡例の包括的解析(11月27日 米国アカデミー紀要オンライン掲載論文)

2024年12月11日
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現在は新型コロナ流行の底に有るようだが、新しい株も発見されている上昇してくるだろう。感染の波は何度も訪れているがパンデミック初期のような多くの死亡者を出すまでには至っていないのは幸いで、教科書通りウイルスとの共存状態が成立しているようだ。ただ、安心は禁物で、常に新しい状態に備える必要がある。その意味で、過去の例をゆっくり調べ直すことは極めて重要だ。

今日紹介する多くの機関が参加している Covid-19 国際研究チームからの論文は、感染後死亡までの鼻咽頭粘膜スワブのデータが揃っている40例の死亡例について詳しく解析した研究で、11月27日 米国アカデミー紀要 にオンライン掲載された。タイトルは、「Lethal COVID-19 associates with RAAS-induced inflammation for multiple organ damage including mediastinal lymph nodes(Covid-19 死亡例はRAAS により誘導された炎症による縦隔リンパ節変化を含み他臓器障害が認められる)」だ。

まず鼻咽頭スワブから死亡例では高いレベルの感染が認められる。また、呼吸器系以外の臓器でも細胞死に至る炎症が認められ全身に病気が広がっていることがわかるが、死亡時の肺以外の臓器では全くウイルスは検出されていない。従って、呼吸器感染からどのように全身病へと発展するかが問題になる。

解析は膨大で、気になった点は動物実験まで行ってデータを集めているので、ここのデータについて紹介するのは避ける。幸い、この論文はオープンアクセスで自由に図を見ることができるので、論文にアクセス後、最後に示されたサマリーの図をみながら読んでいただきたい(https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2401968121)。

タイトルにもあるように、全身に広がる最大の原因として RAAS(レニンアンギオテンシン系)の異常が重要な要因になっていると結論している。事実、患者さんでは遺伝性の血管浮腫の原因遺伝子の発現異常が認められ、レニンアンギオテンシン系が強く活性化され、その結果として血管炎症、さらに血栓が生じ、これが臓器のストレス反応を誘導している。さらに、フィブリン沈着により、補体系の活性化も誘導され、心臓、腎臓などの細胞の炎症反応から細胞死へのプロセスが進む。

これまであまり気づかれなかった病理所見として、やはりタイトルにあるように呼吸器につながる縦隔リンパ節でリンパ球の数が低下する一方、繊維化が進んでいることを報告している。これもおそらく一種のストレスによる炎症の結果で、ウイルスに対する特異的免疫が成立しにくい状態ができている。

この二つの原因が続くことで、各臓器の細胞で様々なストレスがかかり、これがそのままミトコンドリアの酸化的リン酸化の抑制、活性酸素の合成を誘導する。その結果、ミトコンドリアが破壊され、そこから DNA や RNA が放出されることで、ウイルス感染がなくても核酸センサーを介する自然炎症が誘導持続し、最終的に細胞死に陥ると結論している。

結果は以上で、進行例の治療の基本は、レニンアンギオテンシン系の正常化、ミトコンドリアの活性化、そして自然炎症の抑制になるが、抗体や抗ウイルス剤が存在する現在では、まず感染を早期に制御し、悪いサイクルが始まるのを防ぐことが最初の治療ラインになるだろう。弱毒化しているとは言え、直近の80歳以上の死亡率は5%程度で、感染すると100人に5人は亡くなる。その意味で、今こそ剖検例を詳しく検討し、全身に対する治療方法を確立することは重要だと思い、久しぶりに新型コロナの論文を取り上げてみた。

カテゴリ:論文ウォッチ
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