TDP-43はALSのみならずアルツハイマー病など様々な神経変性疾患に関わると考えられている。TDP-43はRNAスプライシングや、安定化に関わるタンパク質で、核内に存在している。このRNA結合部位がプリオン様の構造を持っており、RNAの少ない神経軸索などでは凝集し、神経変性を誘導する。この凝集を元に戻す一つの可能性が、プリオン様部位をRNAによって守る、即ちシャペロン機能を持つRNAに凝集を阻害させるアイデアだ。
今日紹介する論文は、TDP-43mRNAの3‘側の非翻訳領域の短いRNA(Clip34)が凝集を防ぐことを発見していたペンシルバニア大学のグループによる、RNAシャペロンの構造解析に基づくALS治療の可能性を示した研究で、5月7日号のScienceに掲載された。タイトルは「Short RNA chaperones promote aggregation-resistant TDP-43 conformers to mitigate neurodegeneration(短いRNAシャペロンはTDP−43の凝集抵抗性を促進し、神経変性を抑える)」だ。
この研究ではClip34とTDP-43の相互作用ダイナミックスを、遺伝学的方法、HDX-MSと呼ばれる水素原子の交換速度測定、更にはNMRを用いた結合ダイナミックスの解析などを駆使して調べている。その結果、Clip34は鍵と鍵穴に結合というより、RNAがRPM領域に結合すると、PrLD領域のαヘリックス領域に変化を誘導し、分子自体が凝集しにくくなると言う複雑な相互作用ダイナミックスをまず明らかにしている。
その上で、Clip34と凝集を促進する様々な変異TDP-34との相互作用を調べ、ほとんどの変異分子の凝集はClip34で抑制可能だが、一部活性が低下する変異も存在することを確認し、Clip34より強い活性を持ちながら、細胞の他の機能に影響がないRNAシャペロンの設計を行っている。その結果、配列はClip34とは全く異なるMalat1-startと名付けた、ほとんどの変異体の凝集を抑制できるRNAシャペロンを開発する。
後はこの活性を細胞やマウスモデルで調べる実験が続いている。このRNA細胞内届けるためリボースをメチル基に置換した修飾核酸を用いて安定化させたMalat-startを作成し、TDP-34変異により細胞質で凝集を起こすiPS由来運動神経培養に加え、核内局在を回復させ、スプライシング機能が正常化することを確認している。
最後に、正常マウス脊髄に核内移行が出来ないTDP-43を導入して凝集させ神経変性を誘導したマウスの脊髄にMalat-startを注射する治療実験を行っている。この実験では神経機能については全く調べていないが、運動神経細胞質に形成された凝集体が、Malat-startを加えることで半分以下になり、神経細胞の形態が正常化することを示している。
今後は様々なALSモデルでRNAシャペロンの治療効果を調べていくと思うが、一度出来た凝集体にシャペロンが入り込んで、分子を可溶にするという力に驚く。RNA デリバリーの方法は発展が続いているので、かなり期待できるALSの治療法になるのではと期待する。
