細胞が活性化すると転写翻訳も活性化することが多く、合成されたタンパク質をターンオーバーさせる仕組みが重要になる。このメカニズムに差し障りが出ると、分解できないタンパク質が細胞質に鬱滞し、このストレスに基づく転写の変化が起こる。
今日紹介するカリフォルニア大学サンディエゴ校からの論文は、CD8キラー細胞の分化をプロテオスターシスが調節している可能性を示した研究で、4月19日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Proteostasis sustains T cell differentiation potential and tumor-infiltrating lymphocyte function(プロテオスターシスはT細胞の分化能とガン浸潤リンパ球機能を維持している)」だ。
キラー細胞は抗原に出会うとキラー活性を発揮するとともに、急速に exhausted と呼ばれる機能の低下した細胞へと分化する。この時発現するのが PD-1 で exhaustion が免疫のチェックポイントに関わっていることがわかる。ただ、exhaustion 前の前駆細胞 (Tpex) は、抗原に出会って exhaustion ステージ (Tex) に分化するだけでなく、サイトカインの作用によって次刺激に反応するメモリー細胞 (Trm) にも分化する。
この研究では、この3種類の細胞の遺伝子発現を比較する中で、Texで強くプロテオスターシスに関わるユビキチンリガーゼが低下していることに気づく。そこで、3種類のユビキチンリガーゼを全て過剰発現させて担ガンマウスに移植して調べると、Texの頻度が低下し、サイトカインやインターフェロンの産生も上昇する。
3つあるユビキチンリガーゼを別々に強制発現させても、ガンの増殖を抑えることができ、チェックポイント治療と同じようにガン免疫の疲弊を抑えることがわかる。逆に3つのユビキチンリガーゼを全てノックアウトすると、Texへの分化が急速に促進される。
実際にプロテオスターシス異常が見られるのかは、転写されたRNAに比してタンパク質の発現が上昇することを捉える必要がある。そこで、mRNAの方を single cell RNAsequencing で、タンパク質を微量質量分析で調べている。実際に10万個程度の細胞で何千ものタンパク質の量の変化調べられるというのは、本当にすごいと感じる。
膨大なデータで、変化するタンパク質も多いので、今後一つ一つ詳しく調べる必要はあるが、長い話を短くすると、Texではユビキチンリガーゼの発現は低下しているが、分解に関わるプロテアォームに異常はない。この結果、ターンオーバーの早い短い寿命のタンパク質でうまく形をとれなかったタンパク質の分解が遅れ、蓄積が起こっていることがわかった。そして、この蓄積する折りたたみがうまくいかないタンパク質は、3種類のユビキチンリガーゼを強制発現させることで正常化することを明らかにしている。
最後に、チェックポイント治療を受けたメラノーマ患者さんのデータベースからユビキチンリガーゼの発現を調べ、高い群と低い群に分けて予後を調べると、ユビキチンリガーゼの高い患者さんほど予後が良いことを明らかにしている。
結果は以上で、チェックポイント治療の効果予測に使うと言う結論になっているが、Texの分化を知る上でかなり重要なデータだと思う。Texの分化を止めたりTrmヘブンかを誘導するサイトカインなどが明らかになっているので、プロテオスターシスとの関連を調べ直してみることは重要だと思う。
