7月21日 Resident マクロファージ機能と老化(7月16日 Science 掲載論文)
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7月21日 Resident マクロファージ機能と老化(7月16日 Science 掲載論文)

2026年7月21日
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細胞レベルでも、臓器レベルでも古くなった分子や細胞を新しいものに置き換えることが生命にとって必須の過程だ。この過程の異常は老化の重要問題として研究されてきた。まずリクルートする側、即ち幹細胞から分化した細胞の供給が老化で低下することは、だれもが感じる。さらに、最近では老化した細胞を速やかに除去できないと、臓器や個体全体の老化が促進されることが示され、死にかけの細胞の処理を速めるセノリシスによって老化を食い止める方法の開発が進んでいる。ただ最近様々な治験結果が出てきて、人間でセノリシスが老化を抑えるという仮説については再検討が必要なようだ。

今日紹介するスタンフォード大学からの論文は、古くなった細胞を処理する機構を高めて老化を防ぐという点ではセノリシスのアイデアに似ているのだが、処理される細胞が好中球に限られており、古くなった好中球が臓器に溜まると障害を起こすが、これが臓器老化の一因であることを示す研究で、7月16日 Science に掲載された。タイトルは「Restored clearance of senescent neutrophils by tissue-resident macrophages limits organ aging(老化した好中球の除去機能を組織で回復させると臓器の老化を抑制できる)」だ。

この論文はおもしろいというより、老化という定義の難しい言葉を使ってしまうことの問題を認識させる論文だとおもい紹介することにした。肝臓のクーパー細胞、脳のグリア細胞など、組織内で再生して機能するマクロファージは、tissue resident macrophage (TRM) として知られている。

この研究に至ったいきさつはわからないが、まず TRM 特異的にプロスタグランディンE2受容体 (EP2) をノックアウトするところから研究が始まっている。TRM とそれ以外のマクロファージを区別することはそう簡単ではないので、完全に TRM 特異的 KO とは言えないが、TRM での発現レベルが半分以下になるマウスを作成して、肝臓、肺、脳で TRM を調べている。TRM は老化とともに数が低下するが、EP2-KO ではこの低下が抑制される。

特に自然炎症や免疫に関わる遺伝子発現を見ると、老化 TRM で上昇傾向が見られるが、これが EP2-KO で元に戻る。これは、肝臓や肺だけでなく、腸、心臓、腎臓でも見ることができる。大事なのは、その結果で老化に伴う脳の認知機能低下が防がれ、四肢筋肉が強くなり、心筋の強度も高まる。実際に TRM の数の低下は2-3割程度で、それが9割ほど元に戻るだけなのだが、臓器機能への効果は意外に高い。

この原因を single cell RNA sequencing で調べると、老化によるTRM の減少に呼応して、老化した好中球や、細胞死の途中の好中球が処理されずに溜まってきていることがわかる。それだけでなく、溜まった死にかけ、あるいは細胞死細胞から炎症性サイトカインが放出され、NETosis と呼ばれる核酸の排出まで起こっている。ところが、PE をノックアウトすると、これらの異常がほとんど正常化することがわかった。このように、死にかけの好中球を処理することをエフェロサイトーシスと呼ぶが、老化に伴い TRM の数が減るだけでなく、エフェロサイトーシス機能が低下し、その結果死にかけの好中球から炎症物質が出て臓器を傷害する。

老化に伴う TRM のエフェロサイトーシス機能低下は、細胞をマクロファージが取り込むときに必要なインテグリンなどの発現異常によっており、EP2-KO でこれら機能分子の転写調節に関わる分子の発現が活性化されることで、エフェロサイトーシスが正常化することも示している。またノックアウトだけではなく、EP2 機能を阻害する化合物を2ヶ月投与する実験で、肝臓や脾臓で老化とともに上昇してくる死にかけの好中球の数を、化合物により低下させられることも示している。

最後に、人間の肝臓の single cell RNA sequencing データベースから、人間でも老化に伴い死にかけの好中球が増加し、炎症性サイトカインの分泌も高まっており、マウスと同じ状態が起こっていることを示している。

結果は以上で、元々プロスタグ TRM を減らし、マクロファージのエフェロサイトーシス機能を落としてしまう結果、死にかけの好中球が臓器に溜まることで、逆に炎症が起こるという結論だ。そして、EP2 機能を抑えることで、老化を防げるという結論になっている

しかし、これを老化と言っていいのかわからない。EP2 も若い段階では炎症が高まらないよう重要な機能を果たしている。しかしこの論文では追求し切れていない、年齢による影響により TRM 特異的に思いがけないサイクルが始まり、この時 EP2 のような炎症を抑える分子が逆に炎症を高め、臓器が傷害されるという話だ。これを老化と一言でまとめていいのか、そして EP2 阻害を若返りの薬と言っていいのか、個人的には違っているような気がする。

カテゴリ:論文ウォッチ
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