8月23日 神経活動と血流調節の再検討(8月20日 Science 掲載論文)
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8月23日 神経活動と血流調節の再検討(8月20日 Science 掲載論文)

2026年8月23日
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非侵襲的に脳活動を調べる方法の一つに機能的MRI (fMRI) があるが、これは我が国の小川誠二先生が米国ベル研究所で開発された方法で、酸素結合によるヘモグロビンの磁気特性の変化を用いて脳の局所血流の変化を捉えることができる。何よりもこの血流変化が脳の活動状態と一致していることが示され、脳の活動を血流変化として捉えるBOLD法が定着した。即ち、我々の脳は必要な場所にエネルギーを向けるシステムを持っており、これが脳の圧倒的省エネシステムの基盤になっている。

今日紹介するカナダ・モントリオール大学からの論文は、このBOLD法がどこまで神経活動と連結しているのかを、生きたマウスで神経細胞に血液を供給する血管のサイズ変化を調べるイメージングと脳活動イメージングを同時に行うことで再検討した研究で、8月20日号の Science に掲載された。タイトルは「Modality-specific neurovascular coupling via layer-segregated arteriole networks(神経の役割に特異的な神経血管連結は各層に分離した小動脈ネットワークを通して行われる)」だ。

この研究では足の痛み感覚とタッチされる触覚で興奮する感覚野を、神経のカルシウムイメージングとfMRIとおなじヘモグロビンの変化を同時に測定し、酸化ヘモグロビンと神経活動領域がほぼ一致することから、これまでのfMRIが間違いでなかったことを確認している。しかし、酸素が受け渡された後のヘモグロビンを調べると、触覚領域のほうが脱酸素したヘモグロビンが圧倒的に多い。即ち、触覚神経でよく酸素が消費されている。

この差は全て神経への血流を調節する血管の変化を反映しているので、単一細胞の神経とそれを支える血管の流れを調べると、痛み神経と触覚神経の血管を流れる赤血球の動態に大きな変化があることがわかった。即ち、痛み感覚神経ではほとんど血流の変化が見られない。これは大変だと、他の神経層も含めて横断的に調べると、他の層、特に4-6層では比較的血流は一致しているが、2/3 層で大きな変化があることがわかった。そしてこの差が、神経興奮に合わせた小動脈の拡張度の差と、拡張後の再収縮の差によることを明らかにしている。

以上の結果は、神経の役割ごとに異なるタイプの血管ネットワークが形成されており、しかも脳の各層ごとに血管網の反応性が異なることを示している。運動神経や、自発的な神経興奮についても調べており、自発興奮の場合、痛み神経と同じように浅い層での血流が低下する傾向を示したが、運動神経では浅い層も深い層も血管の変化はほぼ同じであった。

以上の結果は、神経血管の連結現象は、神経が活動すれば血流が向くという単純な話ではなく、神経の役割や、脳の各層で、対応する血管網が異なる反応をしていることを示している。もちろんこれまでのfMRI研究の結果を否定するものではないが、より正確な神経活動のモニターにはBOLDではなく、Cerebral Blood Volumeを測定する方法が適していると結論している。いずれにせよ、神経活動から発生するどのようなシグナルが今回示された血管の変化を誘導するのかが明らかになることで、より神経活動の測定も正確になると思われるが、AIの人たちも注目するむちゃくちゃおもしろい分野に発展する可能性がある。

以下のWordPressからわかるように、この記事はHPにアップロードした5000回目の記事になる。

論文ウォッチについては、下図にあるようにあと281の記事をアップロードする必要があり、おそらく来年の5月ぐらいになると思う。なんとか健康で、論文ウォッチ5000回を迎えたいと思っているが、ともかく全記事が5000回になったことは本当にうれしい。

カテゴリ:論文ウォッチ
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