リソゾームは細胞内で発生する様々な老廃物を分解し、またオルガネラのリサイクルを通して細胞代謝を支えている。様々な理由でリソゾームの機能が傷害されるリソゾーム病では、時間とともに細胞機能が傷害され、中枢神経系を始め様々な臓器の不可逆的な障害を引き起こす。これらの治験から、リソゾームから細胞老化を考える研究が行われている。
今日紹介する米国MITからの論文は、老化細胞からリソゾームを直接調整して代謝物を調べ、リソゾーム内に蓄積するシスチンとglycerophosphodiesterが、老化と正比例する分子マーカーとして利用できることを示した研究で、7月30日Scienceに掲載された。タイトルは「Atlas of lysosomal aging reveals a metabolite signature shared with lysosomal storage disorders(リソゾームの老化アトラスはリソゾーム病と同じ代謝の特徴を明らかにした)」だ。
この研究の最大のハイライトは、老化細胞からリソゾームを精製してきて代謝物を直接調べる方法を用いたことだ。最初は、リソゾーム膜に発現している分子にタグを付け、これを指標に老化マウスの脳、心臓、筋肉、脂肪組織からリソゾームを生成、老化に伴って大きく変化する代謝物を探索している。この直接的実験により、アミノ酸ではシスチン、脂質では細胞膜の脂質が分解する過程で出来る代謝物glycerophosphodiester(GP)が老化とともに上昇する事を発見する。この変化はリソゾームを精製しないと全く検出できない。
この発見が研究のハイライトで、次はタッグを付けていないリソゾームを精製する方法を開発し、リソゾームを精製さえすれば同じ結果が安定して得られること、さらにマウスだけではなくラットやサルでも同じ結果が得られることを明らかにしている。ただ、サルの場合シスチンは優位の差はなかった。
何故GPやシスチンの蓄積が起こるのかについてはほとんど解析が行われていないが、老化リソゾームでbis phosphate と呼ばれるコレステロールのリソゾームからの輸送や、リソゾーム内の酵素のコファクターとして働いている分子が蓄積していることも示しているが、明確なメカニズムは示されていない。
代わりに、脳でどの細胞がシスチンやGPの蓄積が著しいかを調べ、最も老化の影響を受けるのがミクログリアで、次いで神経細胞自体であること、一方アストロサイトやオリゴデンドロサイトでは老化による変化はほとんど認められないことを示している。即ち、細胞により影響が全く異なる。
さらに、この変化が細胞老化自体を反映しているのか、他の要因の二次的変化かを調べるため、異なる年齢のマウスからリソゾームを取り出して、シスチンやGPを調べると、見事に年齢と正比例することから、これらの分子は老化度を測るマーカーになることを示している。
最後に、この変化を老化を遅らせる介入で変化させられるかも調べ、カロリー制限によって心臓や筋肉では老化に伴う変化を軽減することが可能だが、脳では全く効果がないことを示している。
結果は以上で、リソゾームを精製して調べたという点がこの研究の全てで後は現象論に終始していると思う。しかし、リソゾームが細胞老化の鍵として働いていることは納得できる仕事だ。
