8月27日 側副血管内皮の起原(8月20日 Science 掲載論文)
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8月27日 側副血管内皮の起原(8月20日 Science 掲載論文)

2026年8月27日
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血管が閉塞すると、局所的に低酸素状態になり、細胞は死んでしまう。これを補うため、低酸素に反応する様々な血管増殖因子が誘導され、局所に新しい血管が発生する。特に太い血管枝から発生する新しい血管を側副血管と呼んでいる。既存の動脈枝から生えてくるので、動脈が伸びたものだと考えてしまう。事実、腹側血管の内皮がどこから来たか、遺伝マーカーを使う研究が行われており、動脈内皮が伸びてきたものとされてきた。

今日紹介する上海中国科学技術院大学からお論文は、これまでの通説の元となった実験システムを再検討し直し、心筋梗塞後の側副血管内皮のほとんどは毛細血管から由来することを示した研究で、8月20日 Science に掲載された。タイトルは「Tracing the origins of de novo coronary collateral formation in cardiac repair(心臓修復時に冠状動脈に新たに生まれる側副血管の起原を追跡する)」だ。

血管内皮細胞の起原を追跡するためには、発生後それぞれの場所の内皮を標識する必要がある。動脈起原と結論した実験では、Cx40 と呼ばれる分子をマーカーとして、成長後タモキシフェンを注射すると Cx40 を発現していた動脈内皮だけが標識されるという戦略をとっていた。この研究でも、まずこの方法を再検討し、Cx40 発現が決して動脈内皮特異的でないことを発見する。即ち、腹側血管内皮が動脈からだけ由来しているという結論は間違っている可能性が浮上した。

そこで、Cx40 と毛細血管特異的なアペリン (apln) 遺伝子両方を発現する内皮をラベル、Cx40 だけでラベルした内皮と心筋梗塞部位への寄与を調べると、動脈内皮由来の細胞よりはるかに多くの毛細血管由来内皮が側副血管に寄与していることを明らかにした。

この後は、これでもか、これでもかと、様々な遺伝子改変マウスを作成し、動脈内皮と毛細管内皮を別々にラベルして、同じ実験を繰り返している。結論的には、梗塞が起こった段階で動脈に存在していた内皮はほとんど側副血管には寄与しないことを証明している。

これほどのダメ押し実験が必要な理由は、血管内皮自体、場所に応じて遺伝子発現が変わるからで、動脈内皮も動脈から離れた途端異なる内皮に変化するし、逆に毛細血管内皮も動脈の来ると、動脈内皮として振る舞う。このおかげで、バイパス手術で静脈を移植した場合でも、時間がたつと動脈のように変化出来る。従って、遺伝子標識を誘導するために用いるタモキシフェンが体内に残っておれば、毛細血管内皮が腹側血管に到達した後で、動脈内皮として標識されてしまう可能性がある。

このような分化の揺らぎを明確に定義するための実験の圧巻は、平滑筋と相互作用する内皮だけを、人工 Notch シグナルを使ってラベルする方法の開発で、これにより確実に毛細血管でない内皮をラベルすることができる。さらに、毛細血管から由来した内皮が平滑筋の存在する腹側血管に入って、合成 Notch で刺激され、動脈の内皮へと転換することも明らかにしている。ここまでマニアックな血管内標識実験は今まで見たことがない。

これらの実験は再生力の強い新生児マウスで行われているが、大人のマウスの心筋梗塞でも同じ結果が得られることを確認し、あとは腹側血管内皮の形成に必要なシグナルを検討している。結論は、局所の血管増殖因子、特に VEGF-A によって誘導される YY1 転写因子が Notch シグナル経路など、血管形成に重要な遺伝子をエピジェネティックに変化させ、最終的に側副血管に統合されることが示されている。

残年ながらこの結果からだけでは内皮がリードして側副血管が形成されるとまでは結論できないが、今後持続的イメージングなどの研究が行われるだろう。そのとき、今回使われた遺伝子改変マウスが大きく貢献することは言うまでもないだろう。

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