8月31日 SGLT2阻害剤はpantothenate kinase1にも作用して心機能を上げる(8月27日Science掲載論文)
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8月31日 SGLT2阻害剤はpantothenate kinase1にも作用して心機能を上げる(8月27日Science掲載論文)

2026年8月31日
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糖尿病の治療薬として開発された新しい薬剤ではGLP-1受容体アゴニストが一般にも有名だが、SGLT2阻害剤も21世紀を代表する薬剤として多くの患者さんに使われている。SGLT2は腎臓の尿細管に存在するナトリウムとグルコースを同時に再吸収する酵素で、これを阻害することで血中グルコースを下げ、同時にナトリウム排泄を通して、様々な効果を発揮する。特に腎臓機能の保護と心臓機能の保護は重要で、今や糖尿病を超えて腎不全や心不全の中心的薬剤になっている。

心臓には発現していないSGLT2の阻害が何故心不全に効果を示すのかについては、エネルギー代謝の改善とナトリウム利尿作用などの2次的効果と説明されてきたが、SGLT2以外にも薬剤が作用するプロセスが存在するという可能性が常に指摘されてきた。実際臨床で使われている薬剤の心不全に対する効果の差が見られるし、切り出した心筋にも効果が見られることも報告されてきた。今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は、切り出した心筋にたいしてSGLT2阻害剤の一つエンパグリフォロジン(EG)の効果を調べ、EGが作用する新しいメカニズムを明らかにした研究で8月27日Scienceに掲載された。タイトルは「SGLT2 inhibitors activate pantothenate kinase in the human heart(SGLT2阻害剤は人間の心臓でPantothenate kinaseを活性化する)」だ。

この研究ではSGLT2阻害剤としてEGだけを検討しているので、他の阻害剤で同じ効果があるかはわからない。研究では心臓のブロックの血流を保持した上で、EGを作用させ代謝学的にまず調べている。その結果、EGが心筋に直接作用して酸化的代謝を大きく改善し、これが心筋機能を高めていることを発見する。

特に効果が広い範囲で見られるので、焦点を絞らす中間代謝物全体の変化を調べた結果、pantothenate(ビタミンB5)から補酵素CoAが合成される経路がEGで活性化することを発見する。この経路は心不全の患者さんの心筋では低下しており、EGはこれを補うことで心不全に効くことが示唆される。

代謝阻害剤などを用いたEGの作用する経路の探索から、最終的にEGはpantothenate kinase 1(PANK1)に作用することがわかってきたので、実際にEGがPANK1に結合して酵素活性を高めること、さらに心不全ではこの酵素の活性低下が見られ、pantothenateからCoAへの合成が低下していることを明らかにしている。

最後に、もう一度心臓の生理学に返り、この酵素を介して心筋の収縮拡張機能がEGにより高められること、更には右心室の心筋が線維化する心筋症の筋肉にも少し効果が見られることも示して、PANK1の活性化がSGLT2阻害剤のもう一つの標的で、これが心不全の治療に貢献していると結論している。

もちろんSGLT2阻害を介した代謝改善、Na排出、利尿などが心不全に効果があることも間違いないが、PANK1活性化が明らかになったことで、心不全への効果を新しい目で見ることができ、心不全治療にも役立つと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
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