9月18日 腫瘍を広く認識できるγδT細胞(9月16日 Natureオンライン掲載論文)
AASJホームページ > 2026年 > 9月 > 18日

9月18日 腫瘍を広く認識できるγδT細胞(9月16日 Natureオンライン掲載論文)

2026年9月18日
SNSシェア

チェックポイント治療やガンのネオ抗原ワクチンなど、現在ガンの免疫療法の主役として考えられているのはαβT細胞受容体(TcR)を発現したT細胞だ。しかし、以前紹介したようにトリプルネガティブ乳ガンの場合Vδ1を発現するγδT細胞がガン局所に存在すると予後が良いという報告は(https://aasj.jp/news/watch/11533)、γδT細胞もガン免疫に関わっていることを示している。

今日紹介するトロントのマーガレット女王ガンセンターからの論文は、骨髄腫に対するADCを用いる新しい治療を受けている患者さんで予後と相関するリンパ球を探索し、様々なガンに反応するγδT細胞がガン組織に存在すると予後が良くなることを明らかにし、このγδT細胞の特質を調べた研究で、9月16日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Identification of broadly tumour-reactive γδ TCRs from multiple myeloma(広い範囲の腫瘍に反応するγδT細胞受容体を多発性骨髄腫で特定した)」だ。

多発性骨髄腫(MM)には様々な薬剤が開発されているが、最新の方法はMMに特異的な抗体に微小管形成阻害剤を結合させたADC、Belamafを用いる治療で、この研究ではこの治療に反応した患者さんと反応しなかった患者さんの違いを探る中で、血中に流れてきたDNAを調べる検査,(cell free DNA検査)δTcR遺伝子が高い患者さんの予後が良いことを発見する。

ADCによる治療は直接MMを殺す方法だが、抗体薬でもあるのでγδT細胞が治療を助けている可能性を考え、MMが増殖している骨髄細胞のsingle cell解析から、γδT細胞の中でもキラー活性を示すGZMB陽性細胞が治療効果と相関することを発見する。

次に骨髄中のγδT細胞からTcR遺伝子のレパートリーを解析、それぞれのγδの組み合わせをT細胞株に導入して、MMや様々なガン細胞に対する反応を調べるという大変な実験を行っている。これにより治療に反応した患者さんには、MMに直接反応するキラーγδT細胞が存在し、その細胞が発現するγδTcRはMMには反応しても正常細胞には反応しないことを確認している。おもしろいのは、これらγδTcRはMMだけでなくいくつかの腫瘍細胞に反応するので、ガン共通の何らかの抗原に反応している可能性がある。

こうして得られた多くのTcR反応性のデータを機械学習(ランダムフォレスト)で仕分けできるようにした簡単なモデルを作成し、患者さんの骨髄中のγδTcRから治療効果と相関するレパートリーを特定出来るようにしている。

この方法で得られる治療効果を反映するγδTcR(responder γδ TcR:Rγδ)を発現するT細胞を骨髄で調べると、多くはGZMB陽性のキラー細胞であることが確認され、治療効果の一つのマーカーとして利用できる。また、治療に反応した患者さんではこのTcRを持つT細胞がクローン増殖していることも確認できている。そしてクローン増殖を指標に病気の再発を比べると、50%progression free survivalで8月vs40ヶヶ月と大きな違いが見られる。

最後にではRγδTcRが認識する抗原を探索し、なんとHLAの一つHLA-C(ほぼ全てのHLA-Cタイプに反応できる)ことを発見する。しかし、HLA-Cは正常細胞にも発現していることからγδT細胞がMMや腫瘍だけに反応するという結果と矛盾する。このメカニズムを探り、γδT細胞が発現するKIR3DL1が正常細胞のHLA-AやB上のBw4エピトープと結合し、キラー活性を抑えていると結論している。

結果は以上で、骨髄という特殊な臓器で増殖するMMに限った話だと思うが、γδT細胞による腫瘍免疫を、最終的に抗原とTcRレベルまで突き止めたのはおもしろいと思う。しかし、最後に抗原がHLA-Cと特定された結果、逆に多くの問題が残されてしまったように感じる。なぜBelamafの効果を反映するのか、Bw4エピトープのない患者さんは最初からγδTは関与できないのか、これらの問題が解決されると、ひょっとしたらおもしろい免疫治療が生まれるかもしれない。

カテゴリ:論文ウォッチ
2026年9月
« 8月  
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930