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8月3日:CDK5とPD-L1(7月22日号Science掲載論文)

2016年8月3日
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   細胞周期に応じて遺伝子の転写を調節するcdk5は神経や筋肉の発生に必須の分子であるのに加えて、血管新生など様々な過程に関わることが知られているリン酸化酵素で、この分子の発現の高い脳腫瘍は予後が悪いことが知られている。このため、何とか薬の標的として使えないか研究が行われてきたが、本当に特異的な阻害剤の開発は困難なようだ。
   今日紹介するケースウェスタンリザーブ大学からの論文は今注目のPD1のリガンドPDL1がcdk5依存的であることを示した論文で7月22日号のScienceに掲載されている。
  注目のトピックスかと思って読んでみたが、正直言って拍子抜けの論文だった。
   おそらくこのグループはこれまでcdk5について研究してきたのだろう。その一環として、この遺伝子を脳腫瘍(meduloblastoma)細胞株から欠損させて移植する実験を行ったところ、ガンの増殖が強く抑制されることに気づいている。組織学的に、ガンの周りのT細胞の浸潤が少ないことから、cdk5が免疫のチェックポイント機能に関わるのではと考え、腫瘍のPDL1の発現とcdk5の相関を調べ、cdk5が欠損するとPDL1の発現が低下し、主にCD4陽性細胞による炎症が高まり、結果として腫瘍増殖が抑えられることを発見した。
   あとはこの機構について、ガンに対する免疫が高まりインターフェロンが分泌されるとIRF2を介してcdk5が誘導され、これがPDL1を誘導して腫瘍を免疫反応から守ることを示している。
   最後にcdk5を欠損させた脳腫瘍を植えたマウスの組織を観察して、リンパ球の浸潤が脳内でも観察できることを示している。一つ面白いのは、ガンのPDL1を抑制すると、周りの細胞でPDL1の発現が上昇していることで、結局PD1自体をブロックしないとチェックポイントブロックは難しいことを示している。
   話はこれだけで、よくScienceにアクセプトされたなという印象が強い。ただ、ガンのPDL1と樹状細胞などのPDL1の役割を区別して研究するためには使えるかもしれない点、またPDL1やPD1の転写調節について研究が進めば、安価な治療法の開発も可能になるかもしれないことはこの研究からもわかる。残念ながらこの研究では全ての細胞でのPDL1発現にcdk5が関わることを示せてないので、特異的阻害剤が開発されても一石二鳥の効果を期待するにはデータが弱いと思う。
   今日は拍子ぬけた論文を紹介してしまったが、明日から膵臓ガンについてまとめてみようと思っている。現役をやめてからも多くの友人を膵臓ガンで亡くしている。また、現在も知り合いが膵臓ガンと向き合っている。また千代の富士の死により世間でも注目されている。この3年間様々な論文を断片的に紹介したので、この機会にこれまで紹介した論文をまとめ直すと、どんなシナリオが見えてくるのか、考えてみたい。
カテゴリ:論文ウォッチ
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