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8月16日:ヒマワリの秘密に迫る(8月5日号Science掲載論文)

2016年8月16日
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    正直なところ、私は植物のことについてほとんど知らない。論文を読むまで、特定の現象を問題として感じることはまずない。逆に言えば、何を学んでも全て新鮮だ。
   今日紹介するドイツ・マックスプランク分子植物学研究所の論文を読むまで、なぜ「ヒマワリ」が「向日葵」か考えたこともなかった。しかし言われてみるとあれほど大型の植物が、朝から夕方まで太陽の方向を向き続け、また朝になると元の位置に戻っているのは不思議だ。
   例えば気孔の動きやオジギソウのような早い動きは理解できているのだが、確かに向日葵の周期運動は不思議だ。
   この論文は大掛かりな研究では全くないが、少なくともこの不思議に全て答えてくれている点で、夏休みのお父さんやお母さん向けかもしれない。おそらく子供の実験としても可能だろう。論文は8月5日号のScienceに掲載され、タイトルは「Circadian regulation of sunflower heliotropism, floral orientation and pollinator visit (ヒマワリの向日性、花の向き、そして受粉昆虫の概日制御)」だ。
   まず向日葵だが、朝は先端が東に向いており、太陽の動きに従って西向きになる。面白いのは、夜になると今度は自分で西から東に逆に動いて、朝になるとまた東を向いている。この動きをどう説明するかが問題だ。
答えは以下のようにまとめることができる。
1) 向日葵の概日運動は全て植物全体の成長を基礎に行われる。すなわち、早く成長する側がヒマワリ全体の向きを反対の方向へと押す。このメカニズムは成長が完全に止まると使えないため、ヒマワリは成長しきると向日性を失う。また、成長ホルモンであるジベルリンが欠損すると、概日運動はなくなる。
2) この研究では、太陽の青色の光により刺激され、従って発現場所を変える分子2種類を特定し、これにより成長が非対称になることが向日性のメカニズムになっている。
3) 一方夜になると、多くの生物が持っている自発的な概日メカニズムが働き、逆の運動が起こる。
4) 向日性と概日リズムは互いに協調して成長場所を調節し、1日の動きを制御している。
5) 向日性によりヒマワリの花の温度が上昇し、この温度の差を感じて昆虫が引き寄せられる。これは、人工的に花を温めると昆虫が集まることからわかる。
動物の概日周期の研究のように、転写の詳しい変化などはすっ飛ばして全体の動きを説明した研究だが、ヒマワリの1日の動きを知り、それを子供に説明するには素晴らしい論文だ。ぜひ話のネタに使って欲しい。
カテゴリ:論文ウォッチ
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