国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、厚労省から特定疾患に指定されている稀少難病ミトコンドリア病の一種MELAS(脳卒中様症状を伴うミトコンドリア病)への治療効果を調べるために、米国ベンチャー企業のエジソン社が開発中の酸化ストレス除去剤EPI-743について、8月から同センター病院の神経内科および小児神経科で臨床研究に入ると発表しました( http://www.ncnp.go.jp/press/press release130809.html )。
EPI-743は、米国および欧州でミトコンドリア病の一種のリー脳症(ミトコンドリア脳筋症)を対象に臨床第IIb試験を実施中で、日本でも既に今年3月に大日本住友製薬が、エジソン社からライセンスを受け、同用途での開発を進めており(http://www.ds-pharma.co.jp/pdf_view.php?id=493)、本試験薬が両社と同センターでの臨床開発が、協奏的に加速され、これら適用範囲の承認を得て、早期にミトコンドリア病患者に届くことを期待しています。
このように国内外を問わず、産官学が協力して稀少難病治療薬の創出に取り組まれる事例が、最近散見されるのを知り、稀少難病患者の実態が、社会でも認知され始め、また科学と創薬技術の進歩に各種制度の整備も進んでいることを実感し、さらに他の稀少難病にも目が向くものと期待が広がります。 (田中邦大)
今日のニュースのトップは竜巻、ゲリラ豪雨、そして婚外子の権利についての最高裁判決だ。科学に偏った目から見ると、全て科学問題に見える。え?婚外子も?と聞かれる向きもあるだろう。私の偏った考えを紹介しよう。
まず私は今回の判決を支持する。遅かったぐらいだ。この判決を阻んで来た唯一の理由が、明治憲法以来(あくまでも明治以来)の婚姻形態/制度の保護と言うことだ。しかし、婚外子の立場から見ると極めて理不尽な話で、実際遺産相続の話に矮小化できるものではない。また、非嫡出子になるからと望まない人工中絶を強制される女性がいることも確かだ。これをきっかけに、根本的な変革が必要だと思う。
と言った上で、しかしこの決定を科学が可能にしていることを強調したい。天一坊事件を持ち出すまでもなく、婚外子の場合に最も問題になるのが血のつながりがあるのかないのかの判断だ。しかし、現在ではこの問題は存在しない。どれほど否定しようと、遺伝子診断を行えば血縁関係はすぐけりがつく。従って、嫡出、非嫡出の区別がなくなったとしても、血縁関係を争う訴訟が頻発することはほとんどない。頻発しても、裁判にまでいくこともない。すなわち、血縁関係を制度で保証する理由はほとんどなくなったと言うことだ。ただ、ここで血縁というのは身体的なことに限っている事を肝に銘じる必要がある。すなわち、血縁=身体=科学が全ての法的判断根拠にならないようにしなければならない。血縁関係がなくとも、家族である例はいくらでもある。大事なことは、親子家族の様々な可能性が認められる社会を作ることだろう。
デカルト以来、私たちは心と身体の2元論を克服できていない。とは言え、実際には一元的であるはずだ。これを一元的に理解することが21世紀科学の最も重要な課題だ。ところで、血縁を少し科学的に言い換えるとゲノムになる。こう考えると、制度と血縁、すなわち心と体を、法律の方では既に一元化して扱おうとしている事はすばらしい。今日の最高裁決定は21世紀に開いている。