5−6年ほど前からeBook readerを使い出しているが、今はこれ無しの生活は考えられないぐらいだ。まず軽い。私はKindleを使っているが、本より軽いと言っていいだろう。また何百冊もの本を同時に持ち歩ける。気分や場所に応じて違う本を読みたい私のような人間に理想的な読書環境を実現してくれている。また、英和辞書が内蔵されており、英語の本を読むとき辞書を調べる手間が省ける。英語の本でよければレパートリーも広く、古典はほとんど無料でダウンロードできる。新刊でもかなり安価だ。さらに、iPadやPCと比べた時、初代のKindleはバックライトがなく目に優しい。新しいバージョンのKindleはバックライトがあるが、それでも強くはなくちょうどいい加減だ。さらに、字の大きさを変えられるのも年寄りにとっては素晴らしい。書き出せばきりがないが、ブックリーダーは年寄りの友達になること間違い無い。そんな私の気持ちを逆撫でするような論文がアメリカアカデミー紀要に掲載されていたので読んでみた。ハーバード大学からの論文で、タイトルは「Evening use of light-emitting eReader negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertnesss(光を出すブックリーダーを夜使うと、睡眠、概日リズム、寝起きに悪い影響がある)」だ。私にとってはタイトルを見ただけで不快な気持ちになる。研究では12人のボランティアの若者(おそらく学生だろう)を14日間病院(?)に入ってもらって、決まった環境で生活してもらう。昼は特に管理を受けないが、6時からは4時間毎日iPadか通常の本を読んでもらい、眠りに対する影響を比べている。眠りは主観的な要素が大きく、客観的に調べることは難しいが、この研究では自覚症状に加えて、メラトニン濃度を測って概日リズムを調べ、また睡眠中の脳波を調べて睡眠の質を調べることで客観的な評価を行っている。寝ている間に1時間づつ採血したり、脳波計をつけたまま寝て客観的な評価が可能か少し心配だが、そこは眠りと概日リズム研究所のプロだから抜かりはあるまい。そしてタイトルにある通り、寝る前にブックリーダーで本を読むと眠りが妨げられるという結論が、1)メラトニンの血中濃度に反映される概日リズムがずれる、2)REM睡眠時間が低下する、3)自覚的に夜寝付かれず、寝起きが悪い、などの結果をもとに導き出されている。社会的には結構大きな反響を呼ぶ論文だろう。ただ私としては気になる点がいくつかあった。まずブックリーダーという時、普通はKindleなどのバックライトの弱い機器を意味すると思う。よく読んでみるとこの研究ではiPadが使われており、しかも最も明るいセッティングで使わせている。なら、結局夜遅くまでPCを使っているのと同じことだ。私ならタイトルにはっきりとiPadあるいはタブレットと書かせるだろう。他にも、本といってもいろいろある。面白くない本だとすぐ眠くなる。このような研究は社会に向けたメッセージの意味も多い。ならもう少し注意深い実験計画が必要だと思った。いずれにせよ、よく読んでみると、Kindleとは無関係な話だと胸をなで下ろしている。
12月25日:就寝前のiPadは眠りを妨げる(アメリカアカデミー紀要オンライン版掲載論文)
2014年12月25日
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