ところがちょうど昨年の今頃ロンドンのキングスカレッジから、乳児期にピーナツを積極的に与えるとピーナツアレルギーの発症頻度が格段に低下するという画期的結果がThe New England Journal of Medicineに報告された。今日紹介する論文は、この研究の続きで、タイトルは「Effect of avoidance on peanut allergy after early peanut consumption (早い時期にピーナツを避けることによるピーナツアレルギーへの影響)」だ。
昨年の論文では600人近い乳児をリクルートし、乳児期にピーナツを食べさせたグループと、ピーナツを避けさせたグループの子供について、60ヶ月後にピーナツアレルギーを調べ、積極的にピーナツを食べさせた子供では1.9%しかアレルギーが認められなかったのに、ピーナツを避けたグループでは13.7%が皮膚反応陽性だったという結果が示されている。
今回の研究では、この時成立した免疫状態が、60ヶ月後から1年間ピーナツを避けることで変化するか、72ヶ月時期に調べている。アレルギーかどうか、実際にピーナツを食べさせて判定している(少し恐ろしい気もするが)。他にもIgEやIgG抗体価を調べて示しているが、詳細は省いていいだろう。結果は明確で、乳児期に成立した免疫状態は安定に続き、後からピーナツを避けたからといって、アレルギーになることはないという結果だ。 要するに、乳児期に積極的にアレルゲンを摂取したほうがアレルギーにならず、こうして成立した状態は、その後のアレルゲン摂取状況にかかわらず安定に続くという結果だ。おそらく、坂口さんの発見した抑制性T細胞の誘導など複雑な要因が絡んでの結果だろう。メカニズムの解析には動物実験が必要だと思う。しかし、前の論文を読むと、この研究の発端は、乳児期からピーナツをこどもに食べさせるイスラエルのユダヤ人は、アメリカに住むユダヤ人と比べてピーナツアレルギーの頻度が低いという観察から始まっている。注意深い観察から始まる医学研究の重要性がよくわかる。幼児期の習慣を詳しく調べなおすことは、アレルギーが増加している我が国でも、対策を練るために重要なことだと実感した。
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