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3月24日:腸管のアミノ酸センサーと炎症(3月24日号Nature掲載論文)。

2016年3月24日
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  引退してもう3年になるが、分野を限らず論文を読むようになって最初に強い印象を受けたのが、1)CRISPR、2)光遺伝学、3)腸内細菌叢の3分野だ。最近染色体のトポロジーの研究なども目をみはるが、上位3分野は当分揺らぎそうもない。そう思っていたら、文科省が今年のクレスト領域として光遺伝学を選び、AMEDが腸内細菌叢を選んだのを知って驚いた。確かに、細菌叢と免疫の分野では世界をリードする研究者がいるが、細菌叢でも代謝となるとほとんど日本人の優れた論文に出会わない。光遺伝学も、ここでも紹介したように磁気を使った磁気遺伝学まで出てくる盛況だが、我が国は圧倒的に技術の消費国だ。それぞれの分野が成長を始め5年経った後から世界の潮流に追随する2番煎じの計画と言える。オートファジーや、ERストレスなど、我が国の研究者が開発した分野もあるのにと思うと、誰がどこでこのような決定をしているのか、もっと顔が見えるようにして欲しいと思う。また、どんな連中が選ばれるのか、どのような成果が出るか注目し、今後も意見を述べていきたいと思う。私の懸念が杞憂であることを望む。
   今日紹介するエモリー大学からの論文は腸内の炎症に関わるアミノ酸センサーについての研究で、腸内の炎症にオートファジーが関わることを示す研究で3月24日号のNatureに掲載された。タイトルは「The amino acid sensor GCN2 controls gut inflammation by inhibiting inflammasome activation (GCN2アミノ酸センサーがインフラマトゾーム活性化を阻害して腸内の炎症を抑える)」だ。
  この研究は最初から、細菌以外の腸内のストレスが炎症に及ぼす影響、特に低栄養などに関わるアミノ酸センサーの機能に絞って研究を行っている。まず、アミノ酸センサーGCN2の欠損したマウスに硫酸デキストランで腸内炎症を起こすと、欠損マウスでは炎症性のリンパ球の浸潤が強く、炎症が激烈になっていることを突き止める。この現象は、GCN2に特異的で、ERストレスに関わる分子をノックアウトされたマウスでは観察できない。このメカニズムを調べると、オートファジーがこの炎症増強に関わることを、様々なノックアウトマウスを用いて明らかにしている。すなわち、GCN2が欠損して、オートファジーが働かなくなり、ミトコンドリアでの活性酸素が上昇して、炎症が促進されることを明らかにした。最後に、GCN2が何に反応して炎症を抑えているか、餌の中のアミノ酸を変化させて調べると、低タンパク食や、ロイシンの欠損した餌を与えると、GCN2が活性化し、炎症が抑えられることが明らかになった。もし人間も同じメカニズムを使っているとすれば、腸内の炎症を抑える一つの栄養経路が明らかになったと言えるだろう。
  オートファジー恐るべし。
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