2020年5月21日
ガンのゲノム研究は、次世代シークエンサーとともに始まったゲノムデータバンク構築が完成に近づき成熟期を迎えていると言えるのかもしれない。ただ、データは様々な視点から何度もなんども見直すことが重要で、その意味でインフォーマティックスが臨床のニーズに合わせて、データを掘り下げる作業が大事になる。
今日紹介するスタンフォード大学からの論文はすでに集まっている転移を起こしたガン患者さんの原発巣と転移巣のゲノムデータを、最新の解析手法を用いて調べ、転移がどの様に起こるか調べた研究で、5月18日号のNature Geneticsに掲載された。タイトルは「Multi-cancer analysis of clonality and the timing of systemic spread in paired primary tumors and metastases (複数のガンの原発巣と転移巣の比較からクローン性と拡大時期を解析する)」だ。
同じ様な論文はなんども目にしてきたが、同じデータで何度も見直すことは重要だ。この研究でも世界中のデータベースから、乳ガン、大腸ガン、肺ガンで原発巣と、転移巣のエクソーム解析が行われているデータベースから信頼できるサンプルを抽出し、原発巣と転移巣との関係、治療と転移との関係、そして転移の起こり方などを解析している。基本はゲノム上の変異の蓄積状態を比較することで、系統樹関係、突然変異の起こり方、転移の時期、転移の様式などを解析している。答えは大体予想通りだが、それでも臨床医にとっては示唆に富む解析だと思う。
ただ間違ってはいけないのは、この研究では転移が実際に起こったケースを解析しており、臨床経過で一度も転移が発見されなかったケースとの比較が全くない点で、進行例を調べた研究と言える点だ。
まず、ガンの変異の特徴から以下のことが示されている。
多くの転移ガンは、原発ガンと同じドライバー変異を共有しているが、乳ガンは、転移巣独自のドライバーへシフトしている確率が高く、ネオアジュバント治療の重要性を示す。 乳ガンや大腸ガンではガン化に関わる変異は原発巣と転移巣で共有されているが、肺ガンの場合、ガン化につながる変異がバラけている。おそらく、タバコにより多くの変異が早期に発生した結果と考えられる。 一方、抗ガン治療を受けた人の転移巣では、転移巣だけに見られるドライバー変異増加してくる。治療により、この様なマイナーな変異を持つガンが選択される。
これらの変異から、ポピュレーション動態解析を行うことで、
発ガン早期から転移は起こっており、実際にはガンが診断される2−4年以上前に転移が起こっている。 転移は個々のクローンが独自に起こす現象だが、どのクローンが優勢になるかは治療により大きく影響される。すなわち、治療により選択された転移巣は、抗ガン剤の抵抗性に関わる変異を持つことが多い。この様な転移ガンは進行が早い。
が結論される。
これらの結果は、検出できなくとも、転移がすでに広がっていると考えて治療する、例えばネオアジュバント治療の重要性を示す。さらに、薬剤自体が選択圧としてガンの進化に関わることから、進行していることが予想される場合はネオアジュバントは異なるメカニズムの薬剤を組み合わせた方が理論的には良い。おそらく、これに免疫治療が加わるとさらに効果を高められる可能性がある。
これは論文を読んだ素人の感想だが、この様なデータを臨床的に再検討し直し、新しいガンのプロトコルを進化させていってほしいと思う。
2020年5月20日
右巻きのDNAが構成塩基などの条件により左巻き構造をとりうることが発見されたのは、私が臨床をやめて基礎研究に移る前だった様に思うが、当時おおきな話題になったことは確かだ。ただ、時折タイトルは見かけることはあっても、ほとんど忘れていた。
今日紹介するオーストラリア・クイーンズランド大学からの論文はZ-DNAという特殊な構造が脳の高次機能に関わっていることを示した不思議な研究で5月4日号のNature Neuroscienceに掲載された。タイトルは「Dynamic regulation of Z-DNA in the mouse prefrontal cortex by the RNA-editing enzyme Adar1 is required for fear extinction (前頭前皮質でRNA-編集酵素Adar1によるZ-DNAのダイナミックな調節は恐怖の消去に関わる)」だ。
誰でも「Z-DNAと記憶」などというありえない組み合わせのタイトルを見たら読んでみる気になるだろう。ただ、構造が変化したDNAということで、物理的エントロピーが、DNA本来の情報に重なったとき何が起こるか興味を持って研究している人たちがおり、この配列情報+αをfliponという概念で捉えて、転写調節に関わることが提唱されている様だ。言ってみれば、一種のエピジェネティック・メカニズムとしてZ-DNAが使われていることが知られていた。このときZ-DNAと反応する分子の一つがサイレンシングなどRNA editingに関わるAdar1であることもわかっている。
この研究では恐怖に対する光が当たるとショックが来るといった記憶の条件付けを形成させた後、今度は光に慣らせて条件付けを消すという課題をマウスに行わせる実験系で、Adar1の転写を調べると、恐怖記憶の消去過程でAdar1が上昇することに気づく。さらに、Adar1をノックダウンして同じ記憶実験を行うと、不思議なことに恐怖記憶の消去過程だけが抑制され、恐怖記憶が残ることを発見する。
通常なら、グルタミン酸受容体などのRNA editingではないかと思ってしまうところを、Z-DNAの調節とAdar1に気づいた点がこの研究のハイライトで、まず恐怖記憶成立過程でZ-DNA構造がゲノムに蓄積すること、そしてこの構造がAdar1により解消されることが、恐怖記憶の消去に必要であることを明らかにする。またAdar1結合する部位にある転写因子のいくつかについて、Z-DNA構造が転写阻害につながり、Adar1によりこれが解消されることで、転写が高まることを明らかにしている。
おもしろいことに、Z-DNA構造をとってAdar1と結合する部位のかなりの領域が、LINEやSINEと呼ばれる繰り返し配列により遺伝子発現が調節を受けている部位であること発見する。
もう一度まとめると、恐怖発作の記憶が成立する過程で強く刺激を受けた神経細胞のゲノムの一部が、おそらくDNA切断、修復などの過程を通してZ-DNAを形成、この構造が転写を変化させる。ただ、恐怖記憶の維持自体にこの構造は必要ないが、次にこの条件付けを消去しようとするときに必要な分子の転写が低下するため、恐怖記憶を消し去れない、という話になる。
もちろんAdar1本来のRNA editingもこの現象に関わるのだが、Z―DNAが一種の傷として恐怖記憶に関わっているとは意外で面白い。とはいえ、個人的には、強い神経刺激がDNAの構造を変化させる方が記憶に残ってしまった。
2020年5月19日
身長に関わるコモンな遺伝子多型は3000近く知られているのではないだろうか。現在、それぞれの多型について身長の寄与度が計算され、ヨーロッパの民族ではこの計算に基づけばゲノムから身長を予測できる可能性は高まっている。一方、同じコモンバリアントでも、特定の民族には広く分布し、その民族の身長を決めている多型が存在することがわかっている。
今日紹介するハーバード大学からの論文はペルーのアメリカ原住民が背が低いことに注目し、民族の身長を決める遺伝子領域を特定しようとした研究で5月13日Natureオンライン版に掲載された。タイトルは「A positively selected FBN1 missense variant reduces height in Peruvian individuals(FBN1のミスセンス変異が選択されることでペルー人の身長が低くなった)」だ。
混血が進んでいないアンデスの町に行くと、確かに色黒で身長のひくい人が多いことに気づく。この民族の特徴から身長に大きな影響を持つ遺伝子多型を特定できないか、4000人余りのペルー人のSNPをアフィメトリックスのDNAアレーを用いて解析し、ペルー人の低い身長と強く相関するコモンバリアントを探している。
全部で5種類のSNPが発見されたが、そのうちの一つがマルファン症候群の原因遺伝子として知られるfibrilinのアミノ酸変異を伴う多型であることがわかり、この多型に焦点を当てて解析をしている。面白いことに、ヨーロッパ民族の身長の25%を説明できるSNPでは、ペルー人では6%しか説明できない。一つの民族で身長を決めるゲノムがわかった気になっていても、話は簡単でないことはよくわかる。日本人でも、独自に大規模なゲノムテストが必要だろう。
ともあれ、fibrilinの多型があると2cmの身長低下が起こることを確認した上で、ではこの多型がペルー人の進化で選択されたのかどうか知るため、この部位の近くの多型との連鎖状態を調べ、fibrilinの多型が選択的に選択されていることを示し、確かにペルー民族が形成されるとき、この多型がポジティブに選択されたことを明らかにした。面白いことに、この身長が低くなる多型は、海岸に住んでいるペルー人の方に濃縮されている。素人考えでは、アンデスなどの様な高地の方が低い身長を選択するプレッシャーが高い様に思うのだが、なぜこの様な結果になるのかは不思議だ。
これを知るためには、今回特定されたfibrilinの多型の機能的側面を理解する必要がある。おもしろいことに、これまでこの分子の変異として見つかったのは、マルファン症候群に関わる頻度の低い多型で、これらの変異は身長は伸びる方向に働いている。ただ、残念ながら多型と低身長に関してスカッとした説明はまだ難しい様だ。ようやく皮膚バイオプシーで、この変異があるとfibrilinの沈着が低下していることを示せる程度だ。おそらくモデル動物で発生過程をマルファン症候群の変異などとも比べることが重要だろう。
何れにせよこの研究で、マルファン症候群の対極ともいえる変異が同じ分子上に特定されたことから、この分子の研究を通して私たちが体格と定義している性質の分子メカニズムの理解も進むと期待される。
2020年5月18日
当然のことながら、最近読もうとダウンロードする論文の三分の一はCovid-19関係になる。医学の専門誌からメディアまで、これほどコロナの話題でいっぱいになると、自らの頭も洗脳されてついつい手を出して読んでしまう。ただ、世界中の人が寄ってたかって一つの病気を研究するなど、そうあるものではない。一観客にとってはエキサイティングな舞台が目の前で進行している。とはいえ、この劇場にはエキストラ、ヘボ役者、そして名優まで、登場人物の数は多い。昨日紹介した論文もそうだが、この様な混沌とした舞台の中で名優に出会えるのは嬉しい。
今日紹介するイスラエルワイズマン研究所、フランスパストゥール研究所、そして深圳肝臓研究所が共同でCellに発表した論文はウイルス感染した細胞のsingle cell trascriptome解析方法を確立し、これをcovid-19に用いた研究で、どれほど緊急事態でも、しっかりとした準備を整えることの重要性がよくわかる論文だ。タイトルは「Host-viral infection maps reveal signatures of severe COVID-19 patients(ホストとウイルスの感染地図は重症Covid-19患者さんの特徴を明らかにする)」だ。
当然といえば当然だが、病気で何が起こっているかの解析にはsingle cell trascriptome解析(scRNA)の威力はすごい。例えば今年1月、薬剤による重症アレルギー局所に現れる細胞のscRNA解析から治療法を発見し、実際に患者さんが治った論文を紹介した(https://aasj.jp/news/watch/12272 )。当然、covid-19でもscRNAが使われると思って見てきたが、発表されたほとんどは「なんでもまずやっておこう」というスタンスが目立って、面白くなかった。特に、感染症なのに、解析にはウイルスがほとんど登場できていない。なぜ肝心なことができないのか訝しく思っていたが、この論文を読んで、ウイルス感染した細胞が含まれる集団のscRNA解析データの処理が極めて複雑であることがよくわかった。
ウイルスの転写物は種類が少ないものの、数は多く、しかも異なる細胞にも感染する可能性がある。また、ポリA添加の乏しいウイルスも存在する。さらに、通常のソフトは、よくわからないRNAを全て無視して細胞を同定する様設計しているため、感染細胞とそうでない細胞を見分けて、scRNAデータを処理するためには、全く新しいソフトの開発が必要だった。
詳細は省くがこの研究では、上記の課題を克服するためにまずViral-Trackと名付けたアルゴリズムを開発し、マウスのウイルス感染実験、およびヒトB型肝炎のバイオプシーサンプルなどを用いて、検証したあと、新型コロナの患者さんの解析に利用している。
この研究では軽症者人、重傷者6人のcovid-19の気管洗浄液に含まれる細胞を解析に用いている。自分で採取した経験もあるので、この状況で重傷者からよくサンプルが得られたなと思うが、そのおかげで重要な発見が得られている。
これまで示されてきた様に、ほとんどの感染細胞はACE2とTMPRSS2を発現した繊毛細胞と上皮前駆細胞. ただ、オステオポンチンを発現したマクロファージにも感染が認められる。これは、抗体と結合したウイルスを貪食した結果である可能性がある。ただ、もう一つのCovid-19侵入サイトとして疑われているCD147から侵入している可能性もある。この様なマクロファージでは、ケモカインの発現が強い。 マクロファージや好中球のタイプで、重傷者、軽症者をはっきり分けることができる。例えば、樹状細胞は重症例ではほとんど認められない。 NK細胞が重症例で増えている。 CD4T細胞は重症例で多いが、CD8T細胞は重症例ではほとんど認められないが軽症例では全員に認められる。 重症例の一例で、メタニューモウイルスの混合感染が認められるが、1型インターフェロンの賛成派強く押さえられていた。
以上が主な結果だが、まず軽症者のみにキラーT細胞が見られる点が重要だと思う。キラーT細胞が上手く誘導できた人が軽症で終わる可能性が示唆されており、同じ手法でTcRを特定することで、ウイルス免疫成立をモニターできると、理解は格段に進む。
また、気管洗浄液は重症、軽症の見分けに重要な検査になる可能性がある。ボランティアで、症状が出てから時間を追って洗浄液中の細胞変化を追うことで、サイトカインストームの出方、ADEの出方などわかってくるのではと期待できる。
面白い論文だった。
2020年5月17日
北里柴三郎がベルリンに留学していた当時、感染症をめぐってペッテンコッファーとコッホの論争が行われていた。コレラの最終原因が細菌によるとするコッホに対し、ペッテンコッファーは最終的には生活スタイルが重要と、公衆衛生学の重要性を説いた。この時ペッテンコッファーがコレラ菌が最終原因でないことを示すため、コレラ菌を自分で飲んだエピソードは有名だ。ちなみに下痢がでたが、すぐに回復して、それ見たことかと勝鬨をあげた様だ。
今から考えて、公衆衛生か、細菌学かという当時の議論は滑稽にすら見えるが、その後コレラの恐怖から人間を解放したのは抗生物質の登場だ。その意味で新しい生活スタイルなど公衆衛生学的対処では、個人個人の感じる新型コロナウイルスへの恐怖からの解放は困難で、ともかく全力をあげて治療法を開発する以外に方法はない。
この点から考えると、アビガンにしてもレムデシビルにしても、現在使われている治療法は全て、新型コロナウイルスのために開発されたものではなく、その場しのぎに過ぎない。幸い重要なウイルスタンパク質の分子構造が続々明らかになり、既存の薬剤との結合が詳しく解析されつつあり、新型コロナに対する薬剤が開発されてくると期待できる。
ウイルス制圧に重要なもう一つの分野は免疫学だが、我が国メディアを見ていると、ワクチン開発でも、早期開発と競争ばかりに目が向いている様に思うが、実際にはウイルスに対する免疫反応を厳密に理解することが最も重要で、この知識なしにワクチンの評価はあり得ないだろう。実際、ほとんどの人が無症状や軽い症状で終わる新型コロナの場合のワクチンの評価を疫学的方法で進めるとしたら、逆に途方も無い時間がかかる様に思えてしまう。
今日紹介する二編の論文は、コロナに対する免疫反応を理解し、治療や予防を考える上で大きな貢献をした研究だと思う。最初の論文はウイルス遺伝子から合成されるタンパク質から予想できるペプチドに対するT細胞の反応を調べたLa Jolla免疫研究所からの研究でプレプリントがCellにオンライン掲載された。
T細胞の反応は組織適合抗原(MHC)とウイルス由来ペプチドが結合した複合物を認識し、MHCは個人個人それぞれ異なっているので、ウイルスに対するT細胞反応を多数の人について調べるのは難しい。この問題を、ウイルスタンパク質由来のペプチドを200種類以上用意することで、ほとんどの人でT細胞反応を検出できる様にしている。また、反応はペプチドカクテルでT細胞を刺激した後、活性化された時に発現してくる分子を指標に調べることで、多数の人の反応を迅速に調べることができる。
この研究では、ウイルス感染に必須で、ワクチンの標的として使われているスパイク分子から253種類、それ以外の分子について221分子をヘルパーT細胞反応検出のために、またキラーT細胞に対しては628種類のペプチドを合成、プールして刺激に用いている。
詳細は省いて重要なポイントを以下にまとめる。
Covid-19から回復した人では発症後1ヶ月で、ほとんどの人で、プールしたウイルスペプチドに対するヘルパーT細胞(CD4T)およびキラーT細胞(CD8T)の反応が見られる。ただキラーT 細胞の活性化については反応の低い人も存在する。 ヘルパーT細胞の活性化は抗体産生と相関しており、ヘルパー機能を見ていることがわかる。 各ウイルスタンパク質個別にペプチドを調整しT細胞の反応を見るとスパイクだけでなく、多くの分子に対してヘルパーT、キラーT細胞が誘導されていることがわかる。 新型コロナに感染したことのない人の60%で、新型ウイルスに対するヘルパーT細胞反応が見られる。一方、キラーT細胞が反応する人は3割程度。感染者と、非感染者でT細胞が反応するウイルス分子は異なっており、例えば核内タンパク質については非感染者ではほとんど反応が見られない。
以上が結果だが、いくつかの重要なヒントが得られる。
現在抗体だけのことを考えて、スパイクに対するワクチン開発を進めるグループが多いが、T細胞で見るとこれで誘導できる免疫機能は高々半分にも満たない。したがって、もっと多くの異なるT細胞を誘導するワクチンの方が将来有効になる可能性がある。 少なくともヘルパーT細胞については、他のコロナ感染により既に記憶T細胞を持っている人もいるので、この人たちが既に新型コロナウイルスから守られているのかどうか調べる必要がある。
かなり包括的なT細胞活性の検査法が開発された。望むらくは、感染細胞を用いたキラー活性も症例を選んで調べてもらえるとより理解が進む。またもう少し大規模に検査をし、特に次の感染まで前向きの研究ができると、旧型コロナウイルスによる免疫やMHCの民族差が、感染防御や重症化阻止に関わるかもわかるだろう。そして、T細胞側の受容体の解析が進むと、将来はT細胞を用いたCAR-Tのような治療すら可能になる様に思う。
もう一編は北京の首都大学から論文で、人型モノクローナル中和抗体の開発とスパイク抗原との結合についての構造解析の研究でScienceにオンライン出版された。
なんども述べた様に、エボラウイルスに対する薬剤を比べた治験では、モノクローナル中和抗体が最も効果を示した。この意味で、回復者の血清だけでなく、多くの企業、研究所が中和モノクローナル抗体の開発にしのぎを削っている。
おそらく世界中よく似た手法で抗体開発を進めていると思うが、患者さんの末梢血からB細胞を取り出し、その中からスパイクタンパク質に結合する細胞を精製、こうして得られた一個一個のB細胞から抗体遺伝子をクローニングし、その遺伝子を用いて最終的にIgG1クラスの、ヒトモノクローナル抗体を得ている。
論文では4種類の抗体を得たところから始めているが、このうち2種類の抗体はスパイクと、ACE2の試験管内結合を強く阻害できた。さらにこれらの抗体が、試験管内だけでなく、細胞表面のACE2とスパイクとの結合も阻害することを明らかにしている。最初から4種類の抗体しか取れなかったとしたら、成功確率の高さに驚く。
マウスの感染実験系でこのモノクローナル抗体を投与する実験を行い、最終的に最も病気を抑える効果があったB38抗体を用いて、スパイクタンパク質と抗体の結合に関する構造解析を行い、この抗体がスパイクタンパク質の36アミノ酸残基と相互作用し、そのうち21残基は新型コロナ特異的であること、そして21残基のうち18残基はACE2とも相互作用することを明らかにした。わかりやすく言ってしまうと、スパイクのACE2結合部位にドンピシャで結合できることがわかった。
結果は以上で、少し専門的になったが、治療薬として使えるヒトモノクローナル抗体が開発できたという話だ。今後、どのクラスが抗体による感染増悪が起こらないか、Fcを除去しても使えないかなど、検討が行われるだろう。また、同じ様な抗体が続々開発されることは間違いない。最後は、値段と活性の勝負になるが、この抗体がどの位置にいるのかわかるのもそんなに時間がかからない様な気がする。
ただ、治療用抗体としてだけでなく、ACE2とスパイクとの相互作用がモノクローナル抗体のおかげで詳細に理解できたことで、抗体だけでない阻害剤の開発も進むだろう。
この様に驚くべきスピードで必要な情報が上がってくると、今年中にコロナの恐怖から解放される方法が開発できると確信できる。
2020年5月16日
素人考古学の楽しみは、いろんなストーリーを勝手に想像することだ。JT生命誌研究館の顧問をしていたころ、言語の発達について自分なりに考えブログにまとめたことがある。その内容は今このHPに引っ越してきているが(https://aasj.jp/news/lifescience-current/10954 :JT生命誌研究館サイト https://www.brh.co.jp/salon/shinka/2018/post_000004.php )、この長い考察の中で、なぜ言語の発生時期を5万年と考えるかについての私の勝手な想像を書いた。勝手な想像だが、それまで中東で10万年もの間接して暮らしていたホモ・サピエンスとネアンデルタールの間の均衡が壊れ、ホモ・サピエンスが急速にユーラシアに流れ込んだ時期を4万5000年くらいとすると、この均衡を破ったのがホモ・サピエンスで、いち早く言語が誕生したからではないかと考えた。
いずれにせよ、ホモ・サピエンスがヨーロッパに移動を始めた時期には、明確にホモ・サピエンスとネアンデルタール人の優劣がついた時期なので、それが身体的なものなのか、文化的なものなのか最も興味深い時期なのだが、この時期(後期旧石器時代)のホモ・サピエンスの遺跡は意外と少く、人類学研究の喫緊の対象となっている。
今日紹介するライプチヒのマックスプランク人類進化学研究所を中心とする国際チームからの論文はブルガリアのBacho Kiro Caveで発見された人骨をはじめとする様々な遺物の分析から、この遺跡ががヨーロッパ最古のホモ・サピエンスのものであることを示した研究で5月11日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Initial Upper Palaeolithic Homo sapiens from Bacho Kiro Cave, Bulgaria(ブルガリアBacho Kiro Caveから出土した後期石器時代はじめのホモ・サピエンス)」だ。
この発掘では地層を何層にも分けて発掘と年代測定を行い、またそこから出土した骨の形態、DNA解析、そして石器の分析などを全て行い、まさにこの洞窟がホモ・サピエンスがヨーロッパへ移動してきた4万7000年から4万3000年を代表するヨーロッパ最古のホモ・サピエンス遺跡で、シベリアUst’-Ishimと並んで、ホモ・サピエンスのユーラシア移動を理解するカギになることを示した。
結果だけをまとめると少しそっけないが、広がりのある発見だ。まず、この民族はすでにヨーロッパには存在しないミトコンドリアグループに属し、肉食獣とも戦うだけのスキルを身につけていた。
そして何よりも石器から、旧石器時代後期のオーリニャック文化とは異なり、旧石器時代の初期に移行的に見られる石器に近いが、旧石器時代中期のルヴァロワ石器とも異なることを示している。面白いのは、ネアンデルタール人のシャテルペロニアン石器とも似ている点で、おそらくネアンデルタール人が移動してきたホモ・サピエンスから学習したものではないかと議論している。
この様に、ヨーロッパに移動したばかりのホモ・サピエンスの遺跡から、言語や音楽に関わる遺物が見つからないか、スリリングな研究が続きそうだ。最後の方でオーリニャック文化など専門用語が出てしまったが、このあたりの研究を楽しむには石器についてもある程度学ぶことをお勧めする。私が辞書がわりに使っているのは以下に示すJohn Sheaの本で、キンドル版もある。
2020年5月15日
昨日、東大の河岡さんたちがThe New England Journal of Medicineに発表した、猫が新型コロナウイルスに感染しやすいことを示した論文がメディアの話題になっている。
詳しくは記事を読んでもらえばいいと思うが、このウイルスが私たちの身近にいる動物にも感染できるとすると、今後のコロナ対策も全く違ったものになるだろう。
この問題は中国でも強く懸念されており、35種類の動物から1,300以上の血清を集めて、抗体検査を行った論文すら発表されている。
幸い結果は全て陰性で、動物がこのウイルスのキャリアーとなる心配はないと言う結論だ。事実、先の猫への感染実験でも、河岡さんたちは、猫が感染しやすいとはいえ、ウイルスを排出する期間は短く、発症もしないので普通の状態で猫がキャリアになることはないだろうとコメントしている。すなわち、現在のコンセンサスは、ペットから新型コロナウイルスがヒトへと伝搬する危険性はほとんどないと言うものだが、話はそれほど簡単ではないことを示唆する論文が、香港大学から5月13日Nature Medicineにオンライン掲載された。
この研究では、ヒトとコウモリの腸上皮細胞をオルガノイド法と呼ばれる方法で培養し、ヒトの鼻粘膜から採取した新型コロナウイルスを感染させる実験を行なっている。
このオルガノイド培養は、現在慶応大学医学部の佐藤(俊朗)さんが開発した方法で、細胞から立体的な腸組織を再構成する方法で、フレッシュなヒト組織の代わりとして消化管の研究にはなくてはならない方法になっている。
この研究では、同じオルガノイド法で、コウモリの腸組織を試験管内で一定期間維持することができることをまず示し、試験管内で新型コロナウイルスを感染させた。驚くなかれ、ヒト鼻粘膜から調整したばかりの新型コロナウイルスはコウモリの腸組織に感染し、ヒトの腸オルガノイドを用いたのと同じぐらいの効率でウイルスを排出する事が示された。すなわち腸上皮細胞であれば、猫どころか、コウモリの細胞にすら新型コロナウイルスはそのまま感染する事になる。この結果は、コウモリのACE2とTMPRSS2も、新型コロナウイルスの感染の入り口として機能する事を示している。要するに、新型コロナウイルスは、そのままで広い範囲の哺乳動物に感染できる可能性が示された。
恐ろしい話だが、十分可能性がある事を示す論文が南京大学から5月13日にJournal of Virologyにオンライン出版された。
この研究では、ウイルスが細胞に感染するときに使うスパイクタンパク質と、その受容体ACE2との結合について構造解析を行い、ヒトACE2と比べた時、他の動物のACE2にもウイルスのスパイクが結合できるか、アミノ酸配列から理論的に考察している。
研究で行われたのは、構造解析からわかっているヒトACE2がスパイクタンパク質と直接コンタクトする20アミノ酸について、他の種のACE2と比較している。理論的可能性だけで、直接結合を調べた研究では無いので評価は難しいが、ヒト感染性の新型コロナウイルスを発生させた主として疑いをかけられているコウモリも、センザンコウも含めて、新型コロナウイルス感染は広い種に感染する可能性があると結論している。
以前、中国のグループがイヌ、ブタ、ニワトリ、ガチョウ、ネコ、フェレットに新型コロナウイルスを感染させる実験を行い、フェレットとネコ以外はほどんど感染できない事を示していた。
しかし、これは経鼻的に感染させた時の感染効率を調べた実験で、動物コロナウイルスのほとんどは消化管感染の方が多い事を考えると、消化管も含めて新型コロナウイルスの動物への感染がないのかは、しっかり調べた方がいいように思う。
新型コロナウイルスは、不顕性感染が多い事、発症から重症化までの時間が短い事、血管炎を伴う事など、インフルエンザなどとは全く質の異なる扱いにくさを持っているが、この上に様々な動物への感染のし易さが加わるとすると、ポストコロナに備えたこれまで以上の対応が必要になるだろう。
例えば鳥インフルエンザのように、新型コロナの場合も私たちの周りにいる動物の感染状態については、定期的なモニタリングが、次の流行に備えるために必要だと思う。その時、様々な動物の消化管や呼吸器のオルガノイド培養が重要な鍵を握るような気がする。わが国のもう一つのお家芸が役に立つ時がきたようだ。
2020年5月15日
20世紀の後半から病気と相関するゲノム領域探索が急速に進み、特に次世代シークエンサーの登場で解析制度が高まった結果、個人ゲノムを解析するサービスを受けている人の数が米国では2000万人に達しようとしている。とはいえ病気のリスクとして特定された領域から病気までの因果性が明らかになったケースは多くない。
今日紹介するハーバード大学からの論文は、因果性の理解を重視して、これまでのゲノム研究を見直すことの重要性を示した目から鱗とも言える論文で5月11日Natureオンライン版に掲載された。タイトルは「Complement genes contribute sex-biased vulnerability in diverse disorders(補体遺伝子は様々な病気に対する感受性の性差に寄与している)」だ。
この研究では、SLEやシェーグレン病のリスクと相関するとされてきたHLA遺伝子領域の因果性に注目して研究を進めている。免疫疾患でHLAがリスク遺伝子として上がってくると、「当然のこと」とわかった気になる。ただ、この研究ではHLA遺伝子領域に補体の第4成分、C4AとC4Bも存在すること、そしてSLEやシェーグレン病ではC4遺伝子との相関もこれまで指摘されてきたことに着目して再検討している(これもHLAとの連鎖不平衡の結果と片付けられていた)。
結果は明確で、C4AおよびC4Bのコピー数と病気のリスクと相関させると、C4のコピー数が多いほど病気のリスクが低下することを確認する。また、これまでHLAとの相関とされてきたDRB 遺伝子座も、結局はC4Bとの連鎖不平衡の結果だと結論している。
すなわち、SLEやシェーグレン病の様な自己抗体が重要な役割を演じている自己免疫病では、C4活性が高いほど病気が抑えられることを示しており、抗原抗体複合体が補体により除去されることを考えるとなるほどと納得する。
この結果に基づき、著者らは補体の量が、これら自己免疫病が女性に多いことを説明できるのではと着想し、遺伝子リスクだけでなく血中のC4量を調べている。すると、自己免疫病の発症が高まる30歳ぐらいで、女性だけでC4の量が低下するが、男性ではこの低下が存在しないことを明らかにした。すなわち、女性はもともと、おそらくホルモンの関係でC4タンパク質の発現が30歳ぐらいまで低下を続ける。このため、C4遺伝子の活性が低くなる遺伝子リスクが合わさると、免疫複合体を除去するシステムがうまく働かず、自己免疫病になる確率が上がると結論している。
これだけでも十分面白いが、同じC4コピー数が統合失調症とは逆の関係、すなわちコピー数が多いほどリスクが高まる関係があることに注目する。C4と統合失調症の相関についてはこのブログでも以前紹介したが、補体がシナプス再構成に関わる結果だと考えられている(https://aasj.jp/news/watch/4790 )。 この研究では、脳脊髄液中のC4活性が男性だけで20代に急速に上昇することを示し、これが男性で統合失調症が多い理由ではないかと結論している。
もちろん実験的に確かめる必要はあるが、物の見方を少し変えることで新しい可能性が見える好例ではないかと思う。
2020年5月14日
プレイリー・ハタネズミは一度ペアを組むと一生添い遂げる動物の代表として研究されてきた。これは大体哺乳動物の5%ぐらいに見られるそうだが、飼育ができて脳活動を調べられるという点ではもっぱらプレーリー・ハタネズミの独壇場だ。一人のパートナーにロックされる過程を脳生理学的に研究した論文は以前も紹介したが(https://aasj.jp/news/watch/6938 )、これが前頭葉の側坐核の活動で支配されていることもわかっている。重要なのはこの現象が人間でも見られることで、自分の連れあいの手を握っていると想像した時一番興奮するのがやはり側坐核だ。
今日紹介するコロンビア大学からの論文はこの側坐核の活動の中でも、ペア認識に強く関わる細胞とそうでない細胞が明確に分かれていることを示した研究で、米国アカデミー紀要オンライン版に掲載された。タイトルは「A neuronal signature for monogamous reunion (連れ合いとの再会時の神経学的特徴)」だ。
この研究ではまだ相手の決まっていない段階、6日間決まった相手と過ごした後、そして20日同じパートナーと過ごした後、ペアの絆の強さを、ペアと無関係の個体が別々に入ったチェンバーに、テストしたい個体を入れてその行動を調べる定番の方法を用いて計測している。
行動学的には、長く一緒にいるほどペアの絆が高まることを確認した後、側坐核の一部の細胞(約40個ぐらい)の活動をCaイメージングで同時に記録できる様にしたプレーリー・ハタネズミをチェンバーに入れ、3時間行動と側坐核神経細胞の興奮をモニターして、ペアの絆と相関する活動を調べている。
結果は予想外で、40個程度という限界はあるが、側坐核全体の興奮で調べても、ペアとそれ以外の個体とに対する行動の差を見ることができないことがわかった。この点は、他の論文と異なっているので、本当かどうかさらに検討が必要だろう。
ただ、この研究では必ずペアに対する行動の差と相関する神経活動があるはずだと、解析を進め、他の個体に近づくときに興奮する細胞の数が、ペアに近づくときだけ高まることを発見する。
このとき興奮する細胞はペアに近づくときだけ反応し、他の個体に近づくときに見られる興奮細胞とは全く異なる。また、細胞は固まっているのではなく、観察領域に広がって存在している。そして、興奮は近づくと決める前に始まる。
結果は以上で、ペアと出会ったときにまず気持ちが高まって、その高まりが近づくほどにさらに増大し、離れると細胞興奮が低下するという行動に関わる細胞が見つかったとまとめていいだろう。
この結果は、それなりに面白いのだが、プレーリー・ハタネズミは、まだまだ面白い行動が知られている。例えば、野生を観察すると、必ず浮気ネズミが現れる様だ。また、これがオキシトシンなどに反応するバソプレシン受容体の初弁と関わることが知られている。脳神経科学の対象が、こうした野生まで広がると、面白い分野になる様に思う。
2020年5月13日
新型コロナのインパクトから解放される切り札として、ワクチン開発に世界中の企業や研究機関がしのぎを削っている。しかし今回ばかりは、競争だけでなく、世界的な協調が必要だと思う。もちろん一度の注射で間違いなく免疫ができるプロトコルができれば万々歳だが、多くの免疫学者は懐疑的だろう。では冷ややかに、「ワクチンに過度の期待を寄せない様に」などと他人事では済ませられないのが今回のコロナだ。この場合、一つのタイプワクチンより、いくつかのワクチンを組み合わせたほうがいい場合がいくらでも考えられる。そのためには、調べる項目を共通化し、データを開示して、必要なら異なる形態のワクチンを組み合わせて、次の流行に備えることが重要になる。
今日紹介するスタンフォード大学、エモリー大学、ミネソタ大学が共同で発表した論文はそんな協調の例ではないかと思う。タイトルは「T cell-inducing vaccine durably prevents mucosal SHIV infection even with lower neutralizing antibody titers (T細胞誘導性のワクチンは抗体価が低い場合もSHIVの粘膜感染を防ぐ)」だ。
インフルエンザにしても、デングにしても、麻疹や黄熱病の様に一度で一生免疫ができるワクチンは完成していない。これは、免疫した抗原に対する記憶が維持できていないからだ。今、コロナでも、感染者で抗体が低下することが問題にされているが、いつまでも抗体が維持されるほうが問題で、いつかは低下する。しかし、抗原に反応できる記憶細胞が体に潜んで、次の反応で迅速に活性化できることが重要になる。
この研究はワクチン開発が全く成功していないエイズのモデルとして、猿のエイズウイルスに対するワクチン開発を目指している。おそらく、この研究に集まった各グループは、異なる様式のワクチンを独自に研究していたのだと思う。ただ、単独では最終的に長期効果のあるワクチンが得られなかったのだろう。そこで、ウイルスのエンベロップが3量体になったタンパク質と強力なアジュバントで抗体を誘導することがわかっているワクチン(以後SOSIPと呼ぶ:この様式も極めてハイテクでナノ粒子まで用いている)に、同じgag遺伝子を組み込んだ3種類の異なるベクター(3種類混合と呼ぶ:VSVウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、そしてアデノウイルスベクター)を全て合わせることで高い免疫誘導が可能か調べている。まさに、協調の賜物と言える論文だ。
さらに驚くのはワクチン投与法で、一年以上にわたって4回投与を行い、その間に3回、3種類混合ワクチンを静脈注射している。
多数の猿を用いて、詳しくデータが取られており、データの詳細は全て割愛する。結果だが、中和抗体誘導という面では、SOSIPで十分で、319倍以上の抗体価があれば、膣からの感染を防ぐことができる。しかし、抗体価が319倍より低下すると、SOSIPワクチンだけでは不十分で、三種混合を静脈注射したグループのほうが感染を防げる。
最後に抗体価が低下した一年半後の抵抗性を調べているが、SOSIPと三種混合を併用したケースは高い感染抑制効果があった。ただこれだけしても長期効果実験では、7割しか感染防御が達成できていないことも指摘しておきたい。
結果は以上だが、いくつかのワクチンを、しかも繰り返し免疫することで、これまで難しかったエイズに対するワクチンもできるかもしれないという結果で、協調の重要性を示している。
ワクチンの場合、達成したいゴールは長期間維持できる記憶細胞とはっきりしている。新型コロナの場合、すぐに来る第二波に対しては、ともかく高い中和抗体を誘導するワクチンで対応するしかないだろう。しかし、その間にも長期間続く記憶細胞を誘導する組み合わせやプロトコルを追求することは重要だ。その意味でも、動物実験はできれば同じプラットフォームで行い、ボランティアでの免疫実験で調べる項目を共通化しておくことで、ぜひ将来の協調を見据えた開発を望む。