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6月1日 脳の老廃物排出機構の再検討(5月29日 Cell オンライン掲載論文)

2026年6月1日
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脳内に発生した老廃物をドレーンする仕組みが存在することが示されたのはずいぶん前の話だ。その後、様々な実験を経て Glymphatics の名前で体系化されるようになった。そして、この経路を通してアミロイドなど神経変性に関わるタンパク質も除去されていると考えられている。そのため、この経路をより活性化することで、アミロイドなどの除去を促進し、認知症の進行を遅らせる様々な取り組みが始まっている。

この大きな流れに待ったをかけたのが今日紹介する米国グラッドストーン研究所からの論文で、脳細胞から発生する内因性のタンパク質は、脳室内に注射したトレーサーとは全く異なる経路を通って排出されることを示した重要な研究で、5月29日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Physiological brain clearance architecture revealed by neuronal protein tracing(脳の生理学的な排出構築が神経細胞由来タンパク質追跡により明らかになった)」だ。

これまでほとんどの脳内排出機構の研究はトレーサーを脳に注射して排出を追いかけるのが普通で、この場合このブログでも紹介したが、最終的に頸部リンパ管へとドレーンされることが示された。この研究では、では脳細胞が細胞外へ排出するタンパク質は同じルートで通るのかと問いかけた。

これを調べるため、脳細胞で安定な蛍光タンパク質 ZsGreen を発現させて、それが排出される過程を追いかけた。同時に脳内に注射した蛍光タンパク質も追跡し、両者が全く異なるルートをたどることを発見する。最も著明なのは、脳に注射したタンパク質はほとんどリンパ管からリンパ節へと流れていくが、内因性のタンパク質は頸部リンパ節でほとんど検出できない。

さらに、ZsGreen は排出過程でグリアやマクロファージにとどまらず、硬膜や頭蓋の様々な細胞に取り込まれることで、取り込んだ細胞を取り込んでいない細胞と比べると、例えばB細胞では ZsGreen を取り込んだ細胞は抗原プロセッシングに関わるMHCを含む様々な遺伝子発現が高まり、加えてPD-L1のように免疫を抑える分子を発現していることから、脳から流れてくるタンパク質を常にサーベイして、免疫反応が起こらないように調節している可能性を示している。

さらに、脳のそれぞれの領域は別々のコンパートメントに分かれて、内因性タンパク質放出の最も近いルートが形成されていることも、異なる領域で ZsGreen を発現させて明らかにしている。即ち、内因性タンパク質は、近くの脳を囲む硬膜から頭蓋へと運ばれ、最終的に鼻に放出される。この間に多くの細胞に取り込まれ、B細胞を中心に脳内の免疫調節機構に関わることも明らかになった。

最後に、炎症やアミロイドβの蓄積によってこのルートがどう変化するかも調べている。炎症が発生すると、ZsGreen は脳血液関門を通って血液まで運ばれることが明らかになった。一方、アミロイドβが蓄積するマウスを調べると、内因性タンパク質の輸送が極端に低下して脳内に蓄積することが明らかになった。アミロイドβも内因性のタンパク質なので、これが輸送ルートを占拠して他のタンパク質の輸送を阻害していることになる。

結果は以上で、Glymphatics が盛り上がってきたときに、このような根本的再検討が行われ、全く異なる領域を示した素晴らしい研究だと思う。

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