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6月16日 アルツハイマー病の修飾因子としての糖鎖修飾(6月9日 Nature Metabolism オンライン掲載論文)

2026年6月16日
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術後1日目で、この論文紹介は前もって書いて予約投稿している。

今日紹介するフロリダ大学からの論文は、アルツハイマー病 (AD) の脳組織のメタボローム解析から膜タンパク質の糖鎖修飾が亢進していることを発見、この現象が AD に及ぼす影響を調べた研究で、6月9日 Nature Metabolism にオンライン掲載された。タイトルは「Hyperglycosylation is a metabolic driver of Alzheimer’s disease(過剰な糖鎖修飾はアルツハイマー病の代謝レベルのドライバーになっている)」だ。

実はこの論文はおもしろいと思ったが紹介するのを少しためらった。と言うのも、論文の最後の方でサプリメントとして広く使われているグルコサミンが AD と合わさると、進行を早める可能性のあるデータが示されたからだ。一般の方の不安をあおる心配もあるので、最後のデータはより慎重に紹介することにして、紹介する。

研究ではまず、組織上でメタボロームが可能な質量分析器を用いて AD を解析、特に神経細胞層である灰白質の糖鎖修飾が亢進していることを発見する。さらに、AD の病期と対応させると、進行とともに糖鎖修飾レベルが上昇する事を明らかにしている。

次に同じことが ADモデルマウスでも見られるのか、5xFAD と呼ばれるアミロイド蓄積を促す5つの変異を組み合わせたマウスを同じように調べると、大脳皮質や海馬で特に糖鎖の量が高まっていることを確認し、これがアミロイド沈着に伴い起こる変化であることを示している。即ち、ADが始まるとともに、糖鎖修飾が亢進することになる。そしてこれが新しい糖鎖合成活性上昇に支えられていることを明らかにしている。

これまでも AD で糖鎖修飾の変化が起こることは報告があるが、この研究では糖鎖修飾亢進が AD の症状にも関与するかどうか、介入実験を行い確かめている。まず、グルコサミン6P から N-アセチルグルコサミンの転換に関わる酵素を RNAi で阻害すると、脳の糖鎖修飾は抑えられ、その結果マウスの記憶障害が改善する。同じように、グリコシレーションを薬剤で抑制すると、脳の糖鎖修飾が低下するのに平行して記憶障害が改善する。

ここからが問題になるが、糖鎖修飾抑制実験の逆で、糖鎖修飾を高める実験として、グルコサミンをマウスに経口投与する実験を行い、ADモデルマウスがグルコサミンを摂取することで脳の糖鎖修飾がより亢進し、記憶障害も少し高まる傾向を観察している。ただ、抑制実験と比べるとその差は大きくない。

もちろん同じ実験を人間で行うわけにはいかない。しかし、我が国を含め世界中でグルコサミンはサプリとして広く摂取されている。そこでフロリダ大学の電子健康情報の中から、MCI を含む認知障害と診断された患者さんで、診断後にグルコサミンサプリを少なくとも一年以上摂取したグループを選び、病気の進行について、グルコサミンを摂取しなかった人たちと比較している。少し驚いたのは、対象になった人たちの8%がグルコサミンをサプリとして摂取していることで、かなりポピュラーなサプリになっている。結果だが、アルツハイマー病関連認知症と診断された人たちでグルコサミンを摂取しているグループは、死亡リスクが25%上昇していた。さらに軽度認知障害 (MCI) と診断された人たちを追跡すると、ADへと進展するリスクがやはり25%上昇していた。

これは大変だと自分で思ったのだろう、正常マウスにグルコサミンを摂取させる実験を行い、アミロイド蓄積が始まっていなければグルコサミンは全く影響がないことを示している。

以上が結果で、アミロイド沈着が始まることが、脳の代謝変化を誘導し、特に糖鎖修飾亢進が起こることで、脳神経回路機能を抑制するという結果で、なるほどと終わる話だが、グルコサミンが絡んで少し重みが増した。グルコサミンの結果についてはこの研究だけで結論するのは早い。しかし、グルコサミンサプリを提供している会社も重く受け止めて、追試などを進めるとともに、AD診断を禁忌事項に挙げた方がいいように思う。

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