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6月26日 完全バイリンガルの言語意味空間を海馬に探る(6月24日 Cell オンライン掲載論文)

2026年6月26日
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6月23日に続いて、脳内設置クラスター電極を用いた言語処理の論文を紹介する。テキサス・ベイラー医科大学からの論文で、6月24日 Cell に掲載された。タイトルは「Shared neural geometries for bilingual semantic representations in human hippocampal neurons(バイリンガルの意味表象の共通の神経的幾何学が人間の海馬に存在する)」だ。

生成AIでの我が国の遅れを前提として勝ち筋を見つけるため、日本語の特殊性を生かした LLM が重要だという話が良く聞かれた。もちろん日本語とは何かを LLM を用いて追求するためには重要かもしれないが、世界は言語にとらわれない Language Agnostic LLM へと進んでおり、単語ではなく、文章の持つ意味・概念をベクトルとした潜在空間を形成する LCM が続々生まれている。

この研究では、生まれたときから英語とスペイン語で育った完全なバイリンガルの4人の海馬にクラスター電極を差し込み、2カ国語の文章を聞いたり話したりするときの神経活動を記録し、同時に記録した音と対応させ、海馬神経が両方の言語をどのように処理しているかを調べている。

海馬と言語野という違いはあるが、実験過程は6月23日の論文と全く同じと言っていい。今回は、同じ文章を2カ国語で聞いたり話したりさせ、英語での反応とスペイン語での反応を調べるという、より大きなデータの処理を必要とする。

個々で正直に告白するが、実験の意図やプロトコルなどは完全に理解するのだが、情報処理については全く言われたことを鵜呑みにして紹介している。ただ、読んでみるとこの研究は最初からバイリンガルの人間の脳には両言語に共通の意味潜在空間があるという仮説に基づいており、論文の構成も仮説に向かってぐいぐい引っ張っていくという感じになっている。

要するに同じ内容の文章をスペイン語と英語で聞いたとき、ほぼ同じように反応する神経細胞アンサンブルが存在すれば、意味が表象されると言えるし、両者に反応する神経がほとんど違っていたら、それぞれの言語表象空間が別に形成されるということになる。

まず、文章の中の同じ意味の単語に同じように反応する神経が存在するか調べ、確かに存在することは確認する。例えば friend と amigo に同じように反応する神経が、リスニングでも発話でも確認できる。即ち言葉にかかわらず意味を同じように処理する仕組みが存在する。

これまでならこの結果で終了だったが、LLM 時代で、単語の意味を与える文章のコンテキストを多言語 BERT に、今回記録された2カ国語の文章をインプットして、ベクター化している。使ったのは700次元ぐらいのトークンを、12層のニューラルネットワークで処理している。このぐらいの大きさだと、各層でのインプットされた2カ国語の文章がどう処理されているか分析が出来るが、この結果最終層に一つ前、11層で2カ国語はよく似た潜在空間での分布を示すことがわかった。即ち、dog と perro はほとんど同じ位置にあり、また他の単語との距離、例えば cat と wolf を比べると wolf の方が dog に近い関係が、スペイン語でも見られることを示している。即ち、11層で意味空間が単語同士の距離の幾何空間を形成していることになる。

そして、それぞれの文章を聞かせたとき反応した神経細胞を相関させると、神経細胞が形成する2カ国語共通の意味空間が形成できたと結論している。重要なポイントは、最初単語レベルで神経細胞に対応できる結果を紹介してしまったが、実際には dog に反応しても perro にほとんど反応しない細胞の方が多い。しかし、ニューロン全体の形成する潜在空間で見ると、dogvs wolf, perro vs lobo と言ったように各単語の関係性は極めてよく保存されており、ほぼ同じ意味空間が神経細胞により形成されていると結論している。

以上の結果から、バイリンガルでは考える時にどちらの言語を使うかではなく、同じ意味空間から生成される意味を異なる言葉にデコードすることになる。ただ、我々の様にバイリンガルではなく、ある程度習熟していても英語を外国語として感じる場合も共通の意味空間が形成されるのだろうか。私の頭の中には日本語だけでも意味空間が形成されているはずで、新しい外国語がどこまでこの意味空間にアクセスできるのかが習熟の鍵なのかもしれない。バイリンガルを考えることで、様々な可能性が広がる。

今後バイリンガルの方の失語症も面白い気がする。例えば意味空間が壊れた場合と、デコード過程の壊れた場合の患者さんの研究も可能になる気がする。いずれにせよ、生成AIの進歩により、言語研究が加速していることは実感する。

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