過去記事一覧
AASJホームページ > 2021年 > 12月 > 24日

12月24日 ダチョウの卵を原料にしたビーズからアフリカホモサピエンスの歴史を探る(12月20日  Nature オンライン掲載論文)

2021年12月24日
SNSシェア

今日4時半から、今年の科学10大ニュースを語りながら、zoom飲み会を予定している。Youtube配信するので是非多くの人にご覧いただきたいが(https://www.youtube.com/watch?v=3NgcswOydWY)、直接話しに加わりたいという人は、このHPの右上にある「お問い合わせ」にあるメールアドレスへリクエストを送っていただくと、折り返しzoom アカウントを送る。若い人の参加を期待している。

今年も10大科学ニュースには、考古学が入っているが、この10年は圧倒的に古代ゲノム研究の成果が選ばれてきた。しかし、年代測定や古代の地球の気候についての正確な測定が可能になることで、遺物を基礎にした、古典的な意味での考古学も大きく進展を見せている。

今日紹介する、もはや考古学のメッカとなりつつある、ドイツ・イエナにあるマックスプランク人類史研究所からの論文は、アフリカで5万年以上前からホモサピエンスが装飾品として利用してきたダチョウの卵の殻から切り出したビーズの変遷をもとに、東アフリカと南アフリカの交流を探った研究で12月20日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Ostrich eggshell beads reveal 50,000-year-old social network in Africa(ダチョウの卵の殻から作られたビーズが5万年に及ぶアフリカの社会ネットワークを明らかにする)」だ。

アフリカ人は、ゲノムだけでなく、言語に至るまで極めて多様な民族が現在まで残っている。この多様性は、ホモサピエンスがアフリカで形成される過程を反映しているのではと、研究が加速しているが、気候を始め様々なゲノムに頼る研究は難しい。

一方各民族の独立性が強く、しかも現代まで未開の生活を続けてきたおかげで、文化については古代のスタイルが維持されている可能性が高い。それを示すのがダチョウの卵を切り出して作るビーズで、この論文で初めて知ったが、なんと5万年以上前から同じスタイルのビーズが作り続けられているらしい。しかも、それぞれの地域で作られているビーズには特徴が有り、さらに生息するダチョウの卵の殻の厚さなどで、地域や気候まで特定できる。

これを用いて、7万年以上前に2つに分かれた、東アフリカと南アフリカの民族の歴史を追いかけたのがこの研究だ。

実際のビーズの写真が掲載されているが、5万年前からかなり精巧なビーズが、しかも同じように作り続けられているのがわかる。しかし、様々な部分のサイズを詳しく測定すると、東アフリカと南アフリカでははっきりとした差が認められる。

面白いことに、このような差は3万年になって初めて現れている。すなわち、それ以前にはほとんど同じスタイルだったことがわかる。その後両地域では、それぞれ特徴を持ったビーズが作り続けられるが、2千年前ぐらいから徐々に共通のスタイルに変化していく。

以上が結果で、このことから、3万年以上前までは両地域で人的交流があったが、3万年からそれが完全に途絶えて、2千年前後に遊牧民が入ってくるまで途絶えたまま続いたことを示している。これを気候変動と重ね合わせると、温度が下がり、植物圏が後退したために、南と東が分断されたのと重なっている。

おそらくこのような分断の結果、アフリカ民族の多様性が形成されていったと考えられるが、ビーズだけからここまで推論できるとは、考古学に惹きつけられる若者が今後も増えると思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
2021年12月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031