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12月5日 怒りは卒中を呼ぶ:小ネタ (12月1日 European Heart Journal 掲載論文)

2021年12月5日
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怒りの感情がこみ上げると、血圧が高まって、下手をすると卒中に陥ると誰もが思っている。しかし、それが本当かどうか結論するには科学的な手続きが必要だが、この課題に真面目に取り組んでくれる医師はそんなに多くない。

今日紹介するカナダ・マクマスター大学からの論文は、卒中に関する大規模研究で、対象者に丹念な聞き取り調査を行い、卒中と感情的興奮や怒り、あるいは強い運動との関係を統計的に調べた研究で12月1日、European Heart Journal に掲載された。論文URL:(https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article-abstract/doi/10.1093/eurheartj/ehab738/6447061?redirectedFrom=fulltext).

1万3千人あまりの心臓および脳卒中の患者さんに丹念な聞き取り調査を行い、発症前一時間以内に経験した、1)強いエクササイズ、あるいは 2)強い感情的動揺や怒り、の卒中確率への影響を、オッズ比を計算している。

結果はウェッブで見ることが出来るので見ながら読んで欲しい(https://academic.oup.com/view-large/figure/316602638/ehab738f4.tif)。

まず怒りや感情的動揺は、卒中をオッズ比で1.3まで引き上げる。特に、脳出血については確率が2倍に上がる。

一方、強いエクササイズは、脳出血のオッズ比を1.5に引き上げるが、ほとんど影響はないと言える。

すなわち、予想通り怒りや動揺は、卒中の危険を高めるという通説は証明された。

12月5日 ワクチン開発に必須のアジュバント研究(12月3日号 Science Immunology 掲載論文)

2021年12月5日
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Covid-19に対する様々なワクチンが開発され、またその効果も明らかになってきているが、背景にある科学を調べてみると、結局はその成功は科学的研究力の差であることがよくわかる。

今回のパンデミックでは、脂肪ナノ粒子に封入したmRNAワクチンが最も輝かしい成功を収めたが、これはmRNAの持つアジュバント活性を、修飾した核酸で至適に調節できたこと、利用された脂肪粒子がリンパ節に速やかに移行し、樹状細胞に取り込まれてそこで抗原が合成されたことが大きな要因ではないかと思う。例えばウイルスベクターでは、このような性質を調節することは無理とは言わないまでも、簡単ではないだろう。

一方で、自然免疫系をコントロールし、強い免疫反応を誘導するためのテクノロジーはかなり進んでいる。これを利用して、スパイクなどのタンパク質抗原を用いたワクチンがノババックスのワクチンだと思う。このワクチンの構成を見て欲しいが(https://www.allfunctionalhealth.com/blog/vaccine-update-and-novavax)、スパイクに変異を導入した安定化させた抗原が、サポニンをベースとするケージ様の粒子Matrix-Mにまとめられている。 これは初めて認可されたサポニンベースのワクチンのようだ。

一方、パンデミックが始まったばかりの時期に中国から発表された組み替えタンパク質ワクチンが利用していたのは英国GSKの開発したTLR4を刺激するMPLAと呼ばれるアジュバントだったと記憶している(これは成功しなかったようだが)。

今日紹介するMITからの論文は、ノババックスと同様のサポニンベースのナノケージとGSKが開発した MPLAを合体させたSMNPが、これまでのアジュバントと比べると強い免疫誘導効果があること、そしてそのメカニズムについて調べた研究で12月3日Science Immunologyに掲載された。タイトルは「A particulate saponin/TLR agonist vaccine adjuvant alters lymph flow and modulates adaptive immunity (粒子状サポニン/TLRアゴニストワクチンアジュバントはリンパ流を変化させ獲得免疫を高める)」だ。

結果を箇条書きにすると、

1)自然免疫刺激能力は、MPLAをサポニン粒子に合体させたSMNPが一番高い。

2)さらに、IgG1 抗体産生能も、サポニン粒子だけ、あるいはGSKのMPLA単独より10倍高い誘導能力がある。

3)濾胞T細胞の強い活性化を誘導する。

4)リンパ節に直接SMNPを注射する実験から、このアジュバント構造がマクロファージ数を減少させることで、タンパク抗原がそのままB細胞にアクセスすることを可能にし、早いB細胞反応が起こる。

5)このようにマクロファージ数が低下した状況でもT細胞刺激に必要な抗原処理細胞は必要十分量存在し、SMNPでは強くIL21が誘導されることと合わさって、より強い濾胞T細胞刺激が可能になっている。

6)SMNPを皮下注射すると、マスト細胞を刺激し、おそらく遊離されるヒスタミンなどでリンパ流が上昇し、その結果SMNP ワクチンのほとんどが、所属リンパ組織に取り込まれ、注射部位には残らない。

以上が結果で、特に6番目の結果は驚く。すなわち、皮下注射でもほとんどのワクチンを所属リンパ節に届けることが出来、リンパ節ではマクロファージの数を減らすことで、T細胞に対するペプチド処理は残したまま、抗原特異的B細胞を高率に直接刺激できるという優れものだ。

コロナに限らず、今後様々なワクチンが必要とされるとき、より免疫を自由にコントロールするという意味では、このような技術の開発は重要だ。我が国も新しいワクチン研究に投資をするようだが、投資側も必要な科学を見極めて研究を選ぶ必要がある。今のAMEDにその能力があるのか、お手並み拝見と言うところだ。

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