2月27日 ニキビも調べてみると奥が深い(2月16日号  Science Translational Medicine 掲載論文)
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2月27日 ニキビも調べてみると奥が深い(2月16日号 Science Translational Medicine 掲載論文)

2022年2月27日
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ニキビは青春の思い出で、そのときは仕方がないものと考えていたが、実際にはれっきとした感染症で、基本はニキビ菌と言っていいのかCutibacterium acnes感染を中心とする細菌叢による感染症で、ニキビ菌に対する私たちの炎症反応が、毛根という場所により修飾された特殊な組織反応を引き起こす。従って、治療の基本は殺菌が中心になるが、最近ではレチノイドを利用して、組織反応を抑える治療も行われるようになっている。

今日紹介するカリフォルニア大学サンフランシスコ校皮膚科からの論文は、バイオプシー下、ニキビ組織をsingle cell RNAseq(scRNAseq)を用いて詳しく解析し、ニキビ組織の成立メカニズムを明らかにするとともに、それに基づいてマウス皮膚ニキビモデルでメカニズムの検証を行った研究で2月16日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Antimicrobial production by perifollicular dermal preadipocytes is essential to the pathophysiology of acne(毛根周囲の前脂肪細胞による抗菌反応がニキビの病態生理成立に必須の条件)」だ。

この研究ではニキビという特殊な病理像を決めているのは線維芽細胞だと決めて、毛根周囲組織細胞からPDGFRα陽性の線維芽細胞を分離。それについてscRNAseq解析を行っている。線維芽細胞と言っても多様で、正常で5種類の違ったポピュレーションが存在する。そして、ニキビが発症すると、F1とF3集団が上昇していることがわかった。

遺伝子発現を手がかりに他の集団と関係づけて、F1、F3がどのような細胞かを特定すると、レプチン受容体を強く発現した未熟線維芽細胞といえるF0集団が、より分化したF2集団を通って、最終的に成熟した線維芽細胞に落ち着く経路に対し、炎症刺激が強く加わることで、様々な炎症性分子を発現するとともに、レプチンを介した前脂肪細胞分化の様相が合わさったのが、F3からF1への経路であることが特定された。即ち、ニキビでは細菌刺激により、炎症とともに前脂肪細胞への強いドライブがかかった特殊な病態が成立していることがわかった。

重要なのは、このニキビの経路ではcathelicidinなどの抗菌物質の発現が強く見られる点で、すなわち自然の抗菌作用がこの経路で発揮されていることがわかる。しかし、脂肪細胞への分化が誘導される結果、分泌された脂肪自体は菌の増殖を助けるだろう。悩ましいニキビは、この除菌と助菌の微妙なバランスにあるからかもしれない。

さすがニキビといえども、ニキビ菌の感染実験は難しいので、ここからはマウスモデルを用いて実験を進めている。そして、マウスでもニキビ菌感染によって前脂肪細胞分化への強いドライブがかかることを確認している。またscRNAseqで、ニキビ菌感染により人間のニキビ組織と同じように脂肪細胞分化と、炎症反応が合わさった細胞プロファイルが優勢になることを確認している。

あとはニキビ菌に対する反応の誘導経路についてだが、線維芽細胞の培養システムで、TLR2の刺激により炎症反応とともに、前脂肪細胞への分化も誘導される可能性を示している。

最後に、ニキビになぜレチノイドが効果を示すのか、マウスにニキビ菌を感染させるニキビモデルで調べ、転写レベルで抗菌物質の発現を高める一方、脂肪細胞への分化を阻害することがわかった。即ち、除菌と助菌の競合状態を、除菌だけの状態へと戻すことが、レチノイドの効果であることを明らかにした。

驚くという研究ではないが、ニキビも研究すると奥が深い。

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