11月26日 脳内マスト細胞はアルコール摂取で増加し、アルコールを絶たれると周りの三叉神経を刺激し頭痛の原因になる(10月30日 Neuron オンライン掲載論文)
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11月26日 脳内マスト細胞はアルコール摂取で増加し、アルコールを絶たれると周りの三叉神経を刺激し頭痛の原因になる(10月30日 Neuron オンライン掲載論文)

2023年11月26日
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昨日は黄色ブドウ球菌のプロテアーゼの一つが直接神経系のPAR1受容体を切断し、刺激を誘導することで痒みが誘導されることを示した論文を紹介した。今日紹介するテキサス大学からの論文は、マスト細胞がストレスによる副腎皮質刺激ホルモン放出因子の直接作用で脳内にメディエーターを湧出し、その結果、数日頭痛が続く過程を明らかにした研究で、10月30日 Neuron にオンライン掲載された。タイトルは「Mast-cell-specific receptor mediates alcohol-withdrawal-associated headache in male mice(マスト細胞特異的な受容体がオスマウスのアルコール離脱時の頭痛を誘導する)」だ。

以前から頭痛にマスト細胞が関与す可能性は示されていたようだ。しかし、このような話を聞くと、一体マスト細胞がどう刺激されるのか不思議に感じられる人もいるだろう。というのもアレルギーの研究者にとって、マスト細胞の刺激はもともと細胞表面上の IgE が抗原で架橋されることで起こると思っているからだ。ただ、最近になってマスト細胞特異的に発現している Gタンパク質協約型受容体 MrgprB2 もマスト細胞の活性化に関わること、さらにこの場合ヒスタミンやセロトニンの豊富な小胞ではなく、トリプターゼと呼ばれるプロテアーゼの豊富な小胞が刺激により放出されることがわかっている。

この研究では MrgprB2 が脳内でのマスト細胞の活性化に直接関わるのではと考え、研究するためのシステムを探し、最終的にアルコール依存性を誘導したマウスにアルコール断ちを強いた時に起こる頭痛などが MrgprB2 刺激によるのではと着想した。

マウスに頭痛があるか聞くわけにはいかないので、三叉神経の興奮や、眼球の周りの痛みへの感受性、さらには運動の低下などで調べている。また、アルコール依存症は水と10%エタノールを自由に選べるようにして、アルコール依存度を高めている。

こうしてアルコール依存度が高まったところで、アルコールボトルを取り除くと5日間ぐらい、痛みに感受性が高まり、自発行動が低下、また三叉神経の自然興奮が高まるのを検出できるが、MrgprB2欠損マウスでは、アルコール離脱症状が全く見られない。すなわち、アルコール離脱時の頭痛は MrgprB2 の刺激によると考えられ、あとは MrgprB2 刺激が起こるプロセスを解析し、アルコール離脱のストレスで誘導される副腎皮質ホルモン刺激因子が直接 MrgprB2 に作用することを示している。これまでの研究でも MrgprB2 を刺激する分子は様々な神経ペプチドであることがわかっており、アルコール刺激で脳内で増加したマスト細胞に副腎皮質刺激ホルモン遊室因子が作用したと考えられる。

このような刺激形式ではヒスタミンではなくトリプターゼが湧出されることがわかっているので、おそらく昨日紹介した論文と同じように PAR を介して刺激が起こっているのではと思うが、この点については全く検討されていない。

代わりに、この刺激により TNF-α が分泌され、この抗体が症状を和らげることを示している。以上が主な結論で、MrgprB2 がマスト細胞活性化に関わる現場を特定したのは大きい。また、TNF-α をはじめ様々な治療標的も示唆されており、トランスレーションも進む可能性がある。

カテゴリ:論文ウォッチ