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12月4日 LXR活性化薬はAβ蓄積を抑えるだけでなくTau異常症も抑える(11月22日 Neuron オンライン掲載論文)

2023年12月4日
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アルツハイマー病(AD)の原因をめぐっては、Aβ仮説、Tau異常症仮説、あるいは炎症説などさまざまな考えが提示されてきたが、実際にはさまざまな要因が同時に関与している複雑な病気だと思う。レカネマブは一見 Aβ 仮説が大事に見えるが、早期にしか効かないという事実は、他の要因が絡み合っていることを示している。

その中で治療標的になるのではと多くの研究者が注目してきたのが ApoE の関与で、論文ウォッチでも何回か研究を紹介してきた。ApoE にはさまざまな対立遺伝子が特定されているが、ほとんどの人はApoE2、 E3、E4のタイプのどれかに入る。そして、人口の13%に存在する ApoE4 は、古くから AD リスクを高めることがわかっていた。

ApoE は言わずと知れた VHDL の構成質としてコレステロールの体内輸送をになっているが、かなり前から ApoE4 が Aβ の蓄積や、クリアランスを影響することが報告されていた。ただ、ApoE4 を持つと動脈硬化のリスクにもなることがわかっており、さまざまなレベルでの脂肪代謝の変化が AD を促進すると考えられてきた。そこで、脂肪代謝システムを調節する LXR受容体因子を活性化して AD を抑えられないかの研究が続いており、沈殿型 Aβ の生成を抑えることが報告されている。

今日紹介するワシントン大学からの論文は、Aβ 関与なしに Tau 異常症が発症するマウスモデルに ApoE4 を掛け合わせて、ApoE4 によるグリア細胞での脂肪代謝異常により急速に神経編成が進むことを明らかにし、この進行を LXR活性化因子が一定程度抑えることができることを示した研究で、11月22日 Neuron にオンライン掲載された。タイトルは「Amelioration of Tau and ApoE4-linked glial lipid accumulation and neurodegeneration with an LXR agonist(Tau と ApoE4 が関係するグリアでの脂肪蓄積と神経変性を LXR活性化剤で軽減することができる)」だ。

この研究では Tau異常症と ApoEタイプを組み合わせたマウスモデルで脂肪解析を行い、Tau異常症と ApoE4が組み合わさると、ミクログリアやアストロサイトでコレステロール代謝の異常と、脂肪の蓄積が起こることをまず明らかにしている。そこで、この脂肪代謝異常を LXR活性化剤で抑えることが可能か調べ、一定程度ではあるが神経変性を抑えることができることを明らかにしている。すなわち、これまで指摘されてきた Aβ や、脳血管関門の変化だけでなく、Tau異常症があるとグリア細胞内で ApoE4 の脂肪代謝異常が大きく変化することが間接的に神経変性を促すこと、またこれを LXR で一定程度抑えることを明らかにした。

少し多過ぎるのではないかと思えるほどの実験データが示されているが、まとめると以下の様になる。

  • Tau異常症と ApoE4 が組み合わさると、グリア細胞内での脂肪代謝異常が起こり、コレステロールなど脂肪の蓄積が起こる。
  • この蓄積が細胞ストレスを生じ、炎症を高め、神経変性を誘導する。
  • グリア細胞の脂肪代謝異常は。LXR活性化剤を経口摂取することで、ABCA1分子の発現上昇を通じ一定程度解消される。
  • その結果海馬の神経変性が抑えられ、行動異常が改善する。

結果は以上で、Tau異常症という神経変性の直接要因に介入できたことは重要だ。ただ、これは ApoE4 を持つ患者さんのケースで、それ以外の AD でも LXR活性化剤の効果があるのかは今後の課題になる。いずれにせよ、AD のメカニズムの多様性を改めて知ることができ、AD治療もまずゲノム検査から進めることの重要性がよくわかった。

カテゴリ:論文ウォッチ
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