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12月29日 初期発生に伴う複製開始点の変化(12月20日 Nature オンライン掲載論文)

2023年12月29日
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生きている限り私たちの細胞はどこかで増殖して新しい細胞を供給する必要がある。この時DNA複製が行われるが、細胞の特徴に応じて決められる数万カ所の複製開始点から複製が行われる。この複製開始点はDNA配列だけで決まるのではなく、クロマチンの構造や、ゲノムの3次元構造、さらに転写の状態など様々な要因で決まるため、特定の細胞の複製開始点を決めるためには、常に開始点からの複製を調べる機能的アッセイが必須になる。

このためか、複製開始点を総合的に調べる研究にお目にかかる機会は少ないが、今日紹介するミュンヘン・ヘルムフォルツ研究所からの論文は、受精から胚盤胞が形成されるまでに複製開始点がどのように変化するかを調べた研究で、何でもトライすることの重要性を教えてくれる研究だ。タイトルは「Emergence of replication timing during early mammalian development(発生時における複製タイミング)」だ。

この研究では single cell level のDNA配列決定で、複製開始点では同じ配列が増加することを利用して複製開始点を決め、また複製された配列の長さから複製が開始したタイミングが早いか遅いかも決めている。

通常分化した細胞では、複製開始点やタイミングはほぼ決まっているが、発生初期にはかなり多様性がある。さらに、発生に伴って、早い複製開始点と遅い複製開始点は変化し、20%の開始点で複製タイミングが変わる。

この原因を探ることで、複製開始点を決める要因が明らかになる。最初、母親、父親由来の染色体で差があるかを調べているが、明確に開始点の差があるわけではない。そして、発生過程でこの変化を調べていくと、発生が進むとともに、開始点やその開始時期が決まっていくことが明らかになる。

この発生に伴う開始点活性決定の要因を探ると、8細胞期からヒストンの H3K36 のメチル化が関連することを明らかにする。おそらくこれは新しい発見で、恒常的遺伝子発現と開始点の関係が成立していくことを示している。

そのほか、転写との関係でも、胎児側の転写が始まるタイミングを捉えて、RNAポリメラーゼ自体が複製開始点決定や開始時機に影響することを示しており面白い。

さらに、LADと呼ばれる核内の転写を調節する構造と、複製開始点の開始タイミングを丹念に調べて、発生に伴い染色体の3次元構造が決まるのに伴い、開始点の活性も決められていくことを示している。

他にも様々な結果が示されているが、基本は転写のプログラムに合わせて、複製開始点が決められていく過程がよくわかる研究だと思う。いずれにせよ、開始点活性はダイナミックに決まっており、今後幹細胞やガン、そして老化を考える時、開始点についての理解が極めて重要であることがよくわかる。

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