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2月24日 ヘビの進化 (2月23日号 Science 掲載論文他2編)

2024年2月24日
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Science系の雑誌にヘビについての論文が3編も同じ週に掲載されていたので紹介することにする。ただ、論文が多いので紹介は簡単に済ませる。

最初はニューヨークのStony Brook大学からの論文で、ヘビの進化スピードをトカゲと比べた研究。2月23日号 Science に掲載された。タイトルは「The macroevolutionary singularity of snakes(ヘビのマクロ進化の特異点)」だ。

ヘビは頭の形、長さ、脊椎の数、四肢の欠損といった形態だけでなく、蛇毒や感覚分子などでみると、同族のトカゲと比べて進化速度が早く感じられる。実際、トカゲでも四肢を欠損するケースがあるが、そこからヘビのような多様化が起こることはない。これを調べるため、ヘビで見られる形態を中心にした新しい変化の出現を一つの指標に統一し、ゲノム進化のマップにオーバーラップさせたのがこの研究だ。

結果は、ヘビの多様化はトカゲの何倍も早い。ただ、新しい形質への特異点が独立して起こり、これが重ね合わさって多様化が進んでいる。すなわち、ヘビへの進化のキーはヘビへの進化で起こったこのシフトに負うところが大きい。そして、このシフトを促したのは、おそらくその肉食性と捕食行動を支える形態変化で、これをきっかけにそれぞれの環境に合わせた進化を進行させてきたと結論している。

以上の仕事は自然選択要因から進化を見た研究だが、次のコロンビア大学からの論文は、ヘビでは我々哺乳動物とは異なる減数分裂時の遺伝子組み換えサイトの形成方法が存在することを示した研究で、同じ号の Science に掲載されている。タイトルは「Patterns of recombination in snakes reveal a tug-of-war between PRDM9 and promoter-like features(ヘビの組み換えパターンから、組み換えホットスポットについてのPRDM9とプロモーター様部位の競争が見えてくる)」だ。

PRDM9分子はヒストンのメチル化に関わる分子で、マウスや人では減数分裂時の組み換えが起きやすい場所を決めている。ただ、ノックアウトマウスの解析からこれ以外にも組み換えホットスポットを形成する仕組みの存在が知られており、場所としてはCGリッチなプロモーター様構造がそのサイトになっおり、PRDM9分子が欠損すると、そちらにシフトすることが知られていた。

この研究ではヘビのPRDM9をクローニングし、同時にヘビの組み換えホットスポットパターンを特定している。その結果、マウスや人と異なり、PRDM9結合部位と、プロモーター様部位が両方組み換えホットスポットとして利用されていることを明らかにしている。

以上の結果は、哺乳類と異なり2種類の組み換えホットスポット形成がヘビでは生きていることを示している。すなわち、余分なホットスポットをヘビは使えると言うことで、ひょっとしたらこれがヘビの大きな形態変化に継ながっているのかも知れない。

そして最後のカリフォルニア・スクリップス研究所からの論文は、多くのヘビ毒を中和するモノクローナル抗体を開発したという研究で、2月21日 Science Translational Medicine に掲載された。タイトルは「Synthetic development of a broadly neutralizing antibody against snake venom long-chain α-neurotoxins(調査α神経毒型ヘビ毒を広範に中和する抗体の合成的開発)」だ。

ヘビ毒にはいくつかのサブタイプが存在するが、最も重要で広く分布しているのが 3-フィンガートキシン(3FTx)で、アセチルコリン受容体に結合して呼吸を止める。トキシンの構造は多様だが、標的は同一なので、この部位に対する抗体が出来ると、多くのヘビに対応できる。

このために、ランダムに突然変異を誘導したヒトの Fabライブラリーをスクリーニングし、最終的に95Mat5と名付けた抗体の分離に成功している。そして、試験管内での中和実験とともに、マウスに投与することでほとんどの 3FTx型のヘビ毒を中和できることを明らかにしている。

以上、ヘビ論文3題でした。

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